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教育学部を卒業した後
先週の日曜日に、母校である大学の教育学部の同窓会が主催する合同新年会に出席した。この会には、5年ほど前に一度参加したことがあるが、それ以来である。
今回、上は80代から下は現役の学生まで、幅広い年代から約120名ほどが集まっていたが、少し驚いたのは、20代・30代の参加者の中に「教員以外の職種」の方が何人もいたことである。これは5年前にはなかったことだと思う。
もちろん、教育学部を卒業したからといって、全員が教員になるというわけではない。教員以外の進路を選ぶ卒業生は、以前から一定数いたのだ。けれども、教員と学校管理職、そしてそのOBが幅を効かせる同窓会には、肩身が狭くて参加しづらかったのかもしれない。
・・・母校の教育学部の場合、昨年3月に卒業した学生の「教員就職率」は44.5%だったという。
「教員採用率」は、卒業者数に対して教員就職者数(正規教員だけでなく、臨時採用や非常勤講師等を含む人数)が占める割合のこと。
こうした実態を踏まえて、同窓会の役員は「教員以外の職種」の方にも同窓会への積極的な参加を呼びかけているようだ。それもあってか、今回は「教育関連のビジネスで起業をした経営者」や「子どもたちを支援するNPOの職員」など、幅広い分野で活躍する同窓生が参加をしていたのだ。
教育学部で学んだことは、教育以外の分野であっても役立つことは間違いない。今後、もっと幅広い分野から卒業生が参加するようになると、同窓会を「ハブ」にして新しいことが生まれる可能性もあるだろう。
その一方で、44.5%という「教員就職率」は、全国の国立教員養成大学・学部の中で最下位だったということだ。文部科学省からも、その向上を強く求められており、関係者は頭を悩ませているらしい。
現在の国立大学の場合、大学全体での入学定員を増やすことには国からの厳しい制限がある。しかし、学部や学科間での定員調整については認められやすい。総合大学であれば、「教員就職率」が向上しないと、
「教育学部の定員を削って、理工学部にデータサイエンス関連の学科を新設しましょう」
といった話になりやすいということは想像がつく。
・・・卒業生の進路が多様であることは、けっして悪いことではない。また、学校教育以外の分野に「教育学部」のシンパがいることが、役に立つこともあるだろう。
しかし、その存在自体が危うくなってしまっては元も子もない。悩ましいところである。
ある関係者が漏らしたこんな一言が印象に残っている。
「意識の高い学生ほど、教員以外の道に進んでしまうんですよね」