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「怪談師」になった教え子(中)
(前回のつづき)
・・・「怪談師」になった伊山君は、3人兄弟の次男である。3歳上の長男は、小学生のときから子役としてテレビドラマやCMなどで活躍しており、地元ではかなりの有名人だった。
しかし、当の伊山君は芸能活動とは無縁で、
・親の影響なのか、1970~80年代の映画やヒット曲にやたらと詳しい
・妙に理屈っぽいところがある
・人を笑わせることが好き
・大人のことをよく観察している
・私が学級文庫のなかに入れていた『空想科学読本』(著者、柳田理科雄)が愛読書
・・・であるなど、野球少年やサッカー少年が主流派のクラスのなかでは、かなりの「異色の存在」だったように思う。
特に印象深いのは、彼が休み時間などに、トイレットペーパーの芯を素材にして作っていた人形のことである。
下の写真に写っているのは、今回、彼が特別に作ってくれた「新作」だが、小学生時代にはこういう独特の味わいがある人形を何十体も作り、教室内のロッカーの上などに並べていたものだ。
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当時、クラスの女子の「一部」には、彼が生み出す人形のコアなファンがいたと記憶している。
小学生のころから「お笑い」に興味をもっていた伊山君は、高校卒業後に吉本興業が運営する「お笑い芸人養成所」のNSC東京校に入学する。同期には、オズワルド、コットン、蛙亭などがいたそうだ。
その後、2012年にお笑いコンビ「風来坊」としてデビューするが、やがて活動の軸足を怪談のほうに移していく。
本人曰く、
「漫才に対して苦手意識があった」
ということだ。
お笑い芸人の養成所という
「学校で一番面白い奴らが集まるところ」
で過ごすなかで、自信をなくしていったのかもしれない。
しかし、もともと幽霊や怪現象に強い興味をもっていたということも、方向転換をした一因なのだろう。
また、本人は
「お笑いで15分の尺をもたせるのは難しいが、怪談だとそうでもない」
とも語っている。
短い持ち時間のなかで何度も人を笑わせようとすることよりも、じっくりと語りかける怪談のほうが本人には向いていたのに違いない。
1年前には、自らが書き起こした怪談をまとめて出版もしているというから立派なものである。
今回、約20年ぶりの再会にあたって、その著作をプレゼントしてもらった。なんと、自筆による帯までついている。
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「参った!! こりゃあ面白い!!」
などと絶賛されているが、よく見るとこれは著者本人のコメントである。
また、裏側はこうなっていた。
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「伊山さんの本で一番好きです。」立田順一さん
・・・コメントをした覚えもないし、そもそも貰ったばかりで内容を読んでもいない。明らかな捏造である。
しかし、今のところ彼の著書はこの1冊だけなので、
「一番好き」
という言葉に偽りはないのかもしれない。(つづく)