黎明期の「学校評価」
先日、教職大学院の授業で「横浜市の学校評価」について話をする機会があった。
内容は、私が勤務していた横浜市の「学校評価のシステム」について説明をするとともに、教員、校長、教育委員会の指導主事という立場で、それぞれ「学校評価に対してどのように向き合ってきたのか」について話をするというものだ。
その説明用のスライドを作成するため、学校評価に関する過去の資料を探していると、なつかしいデータが見つかった。
横浜市教育委員会が平成18年(2006年)に発行した『よこはま学校評価ニュース・第1号』のデータである。
学校教育法の改正により、法的に学校評価の位置付けが明確になったのが平成19年(2007年)6月のことだから、まさに学校評価の黎明期に発行されたものだ。
このニュースには、「学校評価支援システム(SQS)に関する記事も載っている。
・・・私が指導主事になったのは平成20年(2008年)のことだが、そのときに配属された部署は情報教育課だった。
そして、この「学校評価支援システム(SQS)」は、情報教育課における私の担当業務の一つでもあった。
黎明期の学校評価は、「保護者アンケート」を集約して分析することがその中心だった。当時はまだ、こうしたアンケートは手書きが主流だったため、
・学校側が提示した各項目に対する3〜5段階評価
・自由記述による意見
の全員分を集約するためには、膨大な時間と労力を必要としたものだ。
そこへ登場したのが、慶應義塾大学が開発したこの「学校評価支援システム(SQS)」である。このシステムは、マークシートで回答された用紙をスキャナーで読み取り、集約するというものだ。
これによって、段階評価の数値を集約するスピードは劇的に速くなった。また、自由記述についてはテキスト化まではできないものの、文章を画像として保存することができたので、内部の資料として共有するにはそれで十分だった。
当時としては画期的なシステムだったのである。
今ならば、Googleフォームなどに保護者が入力した内容を、締め切った段階で一瞬のうちにグラフ化やテキスト化をすることができるのだから、隔世の感がある。
・・・だが、こうしたデジタル技術の発達を手放しで喜んでばかりもいられないようだ。
現在、学校評価を担当している教員に話を聞くと、
「学校評価にGoogleフォームなどを用いるようになって、手書きのころに比べると回収率が落ちた」
という声が多い。
アンケートが手書きだった時代は、用紙を入れた封筒を各クラスの担任が回収することが多かった。そのため、締め切りまでに提出されない場合には、児童生徒を通じて督促がこまめに行われていたのである。
それが、QRコードなどを読み取って保護者が直接回答をするかたちになったため、教師側からは回答・未回答の状況がわかりづらくなったのだ。
ある学校では、
「締め切りまでに回答したのが4割程度。その後に督促のメールを配信して、やっと6割に達した」
という状態だという。
なかなか「デジタル万能」というわけにはいかないようだが、かといって手書きの時代に戻るというのも御免被りたいものだ。