「オンライン・ウェビナー」が教員の「学び」を変える?
人材開発や組織開発の専門家である中原淳教授(立教大学)が、昨日(2024年3月21日付)のブログで「20代〜30代のビジネスパーソンが陥りやすい『学びの死の谷(デスバレー)』」について書いていた。
中原教授はブログの中で、この「学びのデスバレー(死の谷)」のことを次のように解説している。
こうした「学びのデスバレー(死の谷)」に陥っているのは、ビジネスパーソンだけではない。まさに、現在の教員の姿でもあるだろう。
たとえば、読書を例にとっても、
「この1年間に読んだのは、教科書会社がつくった『指導書』だけ」
「校内で『読書月間』を担当した教員が、自分では1冊も本を読まなかった」
といった笑えない話は、枚挙にいとまがない。
しかし、こうした「学びのデスバレー(死の谷)」の状況にも変化が生じているらしい。中原教授によると「コロナ禍がもたらしたオンライン・ウェビナー」の影響が大きいのだという。
たしかに、オンライン・ウェビナー(インターネット上のセミナー)であれば、通勤の途中などにラジオを聴くような感覚で学ぶことが可能だ。また、最近のウェビナーのなかには録音や録画したものをオンデマンドで配信するケースも多いので、これならば自分の都合がいいときに視聴することができる。
こうしたオンライン・ウェビナーの普及は、教員の学びにも変化をもたらしている。最近は教員向けに開催されることも増えており、これまで「学ぶ時間がない」、あるいは「セミナーなどに参加してみたいが、会場が遠い」といった悩みを抱えていた者にとってはありがたい変化だろう。
だが、すべての教員にこうした学び方が浸透しているのかといえば、答えはノーだと思う。
「どのウェビナーに参加しても、いつもメンバーはだいたい同じ」
といった話も聞く。
こうした学び方を「活用する人」と「活用しない人」に二極化しているように思えるのだ。
たしかに、オンライン・ウェビナーの普及によって学ぶことに対する「時間的」「空間的」な問題は取り除かれたかもしれない。だが、「精神的」な障壁はまだ残っていると感じる。
教員の長時間労働は一向に解消されていない。毎日の仕事に疲れ果て、学ぼうという気力が残っていないという教員も少なくないだろう。また、児童生徒指導や保護者対応などで「感情の切り売り」をしていれば、プライベートな時間ぐらいは仕事に関することから遠ざかりたいという気持ちも理解できる。
「教育のプロなんだから」「子どもたちが学ぶ内容は、どんどん高度になっているんだから」という理由で、教員が学び続ける必要があるのはそのとおりだ。しかし、心にゆとりがない状況でそれを求めるのは、あまりにも酷だろう。
教員が「学びのデスバレー(死の谷)」から脱出するためには、やはり「長時間労働の是正」が不可欠なのだ。
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