𝕏（旧Twitter）上のSpaceで開催されている音声番組「あのコン」

2024年1月26日 16:28

バンダイナムコのアーケードゲームのプロデュース、企画を行なってきたプロデューサーの小山氏（戦場の絆、太鼓の達人、釣りスピリッツ、アイドルマスター、VR ZONE　愛称：コヤ所長）と、長年の相棒の田宮氏（愛称：タミヤ室長）が不定期で開催されている音声番組が「あのゲームのコンセプトって何だろう？」（愛称：あのコン）です。オープンな場で開催されているため、どなたでも参加できます。

Piyomaruは「あのコン」の聴取者の1人で、話の内容を自作のアイデアプロセッサ「Kamenoko」でその場でまとめてX（Twitter）のタイムラインに投稿しています。

ゲームなどのコンテンツが顧客にどのように受け止められるか？

普段考えないコトを考えてみる番組『あのゲームのコンセプトって何だろう？』
前回は「オーガニック〇〇」と見聞きした時アナタが感じる商品への期待や印象をみんなで言語化してみました。
さて今日は何が飛び出すかな？20時にXのスペースでみなさまのご参加をお待ちしております#あのコン https://t.co/V1A23lQsEJ
— コヤ所長 (@mayanmoyan) January 29, 2024

「あのコン」は、架空の「ベネフィット研究所」の所長であるコヤ所長と、タミヤ室長のコンビによって行われるオンライン漫談と申しましょうか、公開ブレーンストーミングみたいなものです。

X（旧Twitter）のタイムライン「#あのコン」にリスナーがいろいろ感想や意見などを書き込み、お二人がそれを拾いながらお話をされています。

コヤ所長、タミヤ室長がおっしゃるには、ゲームなどのコンテンツを企画する際に、受け取る側の人々がどのように感じるか、どのような期待を抱いてコンテンツに接するか？　そして、その結果としてどのような感情を得るのか、という観点（＝ベネフィット）から企画を行うのだそうです。

「こんなことができるから、こんなゲームを作ってみよう！」

ということではなく、

「みんなが、こんなことをしたいと思っているだろう。そこに、こんなことを実現するものを出してみたら、こんな気持ちを抱くに違いない」

と、受け取る側がどう感じるかということ（ベネフィット）を最も重視して企画を立てるのだそうです。

この考え方を行うことで、開発途中で本来の目標を失って迷走するような、いわゆる「デスマーチ」状態に入ってしまうことを避けられるのだとか。

とくに、大勢のメンバーの力を結集して作品を作るゲーム制作において、このやりかたは効果的だとコヤ所長、タミヤ室長のお二人は力説しています。もちろん、お2人が携わっていない作品においてはそういう作り方をしていないものもあるようです。

「JR SKI SKI マリマリマリー　コラボアニメ」について（「あのコン」より）

ゲームにかぎらず、さまざまなヒットしたコンテンツの分析を

そして、場所もClubhouseからTwitter→XのSpacesへと移しながら、3年ほどこの音声コンテンツが続けられ、ゲームにかぎらずさまざまなコンテンツの分析が行われてきました。

最近では、ヒット中のテレビアニメ「勇気爆発　バーンブレイバーン」について、

https://twitter.com/search?q=%23あのコン%20ブレイバーン&src=typed_query

𝕏（旧Twitter）上でリスナーがハッシュタグ「#あのコン」を付けて発言した内容を拾いつつ、さまざまな分析（シンプルにまとめた、受け取る側の気持ちの分析）が行われました。

ユーザー（視聴者）が、バーンプレイバーンを見る前に「期待」する気持ち（期待ベネフィット）としては、

Cygamesと大張監督が本気爆発で送り出す
ロボットアニメに今期の覇権アニメに
なるのではないかとわくわくできます

勇気爆発バーンブレイバーン　期待ベネフィット（「あのコン」より）

というものであろうと。

そして、実際にバーンプレイバーンを視聴した後に抱く気持ち（成就ベネフィット）としては、

勇者ロボらしいかっこいい演出への気持ちよさを感じつつも
予想のつかないストーリー展開や
ちょくちょく飛び出す製作陣の悪ふざけに
次は何が飛び出すんだ
いいぞもっとやれ、とわくわくできます

勇気爆発バーンブレイバーン　成就ベネフィット（「あのコン」より）

というものに「変わる」ということを表現されています。ヒットする作品としては、期待どおりの内容で期待以上の満足度が得られることが最も素直な道筋でありつつも、バーンブレイバーンにおいては「えっ、そういう内容なの？」と驚かされる一発逆転の構造になっています（第1話）。

ただ、そうはいっても「上質で楽しめるコンテンツ」として期待でき、「期待を裏切る展開だが、楽しめるという意味においては期待を裏切らない」ものとして矛盾はないものと分析されています。

バーンブレイバーンはいろいろと仕掛けも多かったので、足掛け3回にわたって取り上げられました。

参考にして自分の血肉にできるかは自分次第

そのような大変刺激になり、参考になるお話をしていただいているのですが、いざ自分の製品の話に応用しようとすると、これがなかなか大変です。

「こういうニーズを持っているはずで、この製品（本）を読めばこんな気持ちになるはず」

という組み立てを行うわけですが、この「はず」の部分を「はず」のままにしておくと、手痛いしっぺ返しを受けることになります。この「ニーズ」「ベネフィット」を起点とした製品企画は、途中でかならず「見ず知らずの人たちを相手にしたモニタリング調査」を行なって、その仮説（はず）が正しいかどうかの確認が行なわれています。

そうしたモニタリング調査を行うだけの予算があることが前提であるため、もっと小規模のプロジェクトでは、身の回りの人たちに意見を聞いたり、感想を聞いてみるといった作り方になってしまうことでしょう。

何回も聞いていれば、「ああ、今回もこういうのが作りたいんだな」と相手もうすうす気づいてしまうでしょうし、奥さんに聞いてみると笑い話にされてしまうこともあります。奥さん強敵すぎます。

なるべく「仮説」は少ないほうがよく、「仮説」の上に「仮説」を積み重ねると失敗する、といった教訓を得ています。なかなか難しいものです。

「あのコン過去ログビューワー」も配布中

なお、過去の「あのコン」のまとめについては、iPhone/iPad用アプリ「あのコン過去ログビューワー」をFileMaker Go用に作って配布しています。App Storeから「Claris FileMaker Go」をインストール（無料）したうえで、この「あのコン過去ログビューワー」をダウンロードして、データベース書類としてオープンすると、まとめの図を閲覧・キーワード検索できます。