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無口ないじめられっ子がニコニコ動画で歌い手になるまで

#想像していなかった未来

ステキなタグをありがとう!

どうも、忌山(いみやま)です。

ちょいと僕の昔話をしようと思います。


僕は小さいころ、物静かな子でした。

主張しないし、わがままも言わない。

歳のわりに、無口な子供。


「おとなしいね」

母に連れられて行く先々で
知らないおばさんたちから何度言われたかわかりません。

母の知り合いらしいその方々は

みんな僕のこと、
どこか労(いたわ)るような、

そんな目で見ていたような気がします。


小学生になり。

僕は男子の中だったら、名前の順だとクラスで一番うしろ。

で、そのクラス、
女子の人数のほうが多かったもんですから、

無口な僕は小学校に上がった1日目から
”寡黙(かもく)なハーレム”を築き上げました。


キャピキャピ女子軍団の中心で
ネコの置物みたいにちょこんと座る、忌山。

「きのうママに買ってもらったシール見て~」
「え~いいなぁ~」

「……………」

髪の毛くりくりで、クラスで背がいちばん小さくて、『おとなしい僕』。

別段まわりと
話す話題もないので、
ただ、座ってる。

そんな人畜無害(じんちくむがい)な僕、やがて女子のいじめの標的になります。


ある時、授業が始まって筆箱を開けると

鉛筆がぜんぶなくなっていました。

またある時、新品ツヤツヤだったはずの消しゴムは
無惨に細切れになっていました。

僕にだけプリントが回ってこない時もありました。

あとこれは今でも意味不明で笑うのですが、
ミートソースまみれの”定規”が
ランドセルに突っ込まれていました。


(学校ってこわい)

(ずっと幼稚園がよかった)

(バスのおむかえこないかな)

7歳の時点ですでに、
集団への苦手意識が強かったように思います。


僕の異変に、
担任の先生がすぐに気づいてくれて、

クラスをあげて
大事(おおごと)にしてくれて、すぐにいじめはなくなりましたが。

この頃からさらに、

『おとなしい僕』に拍車がかかったように思います。


中学生になる頃には

僕は完全に”女性恐怖症”でした。

しかし現実って残酷で、
小学校に入学したときと同じ『大量の知らない女子たち』との交流を余儀なくされます。

「話聞いてる?」相手の目が見れません。

「ぁ…ぅ…」マトモに挨拶できません。

後ろの席に、数枚のプリントすら回せません。

(またあんなことがあったら…)

環境が変わることに、人一倍、敏感でした。

たった数年ぽっちで
環境変化を強要される
”進学”というモノにも嫌悪感。


もちろん女子の友達は1人もできないまま、

気の合う男子と
窓際でデュフデュフしながら過ごし…

あっという間に中学生最後の日を迎え。


卒業式のあと、
卒業証書が入った筒を「ジャマだね」って持て余しながら、

人生ではじめての
”カラオケ”なる場所に連れて行かれました。

どうやらここでは、”歌”なるモノが楽しめるらしい。

…や、合唱コンクールとかはもちろん何回もあったけど、

練習時間だけボソボソ歌って、
本番では声なんてちっとも出したことなかったから…


突如。

僕の耳を劈(つんざ)く轟音。

黄ばんだ壁紙にこびりついたキツいタバコのニオイ。

この世の終わりを彷彿とさせる、
ミラーボールの乱反射。

今まで一度も見たことがなかった、平成の代名詞・パラパラダンス。

何年も使い古されて傷だらけのマイクを振り回しながら
キラリと汗を光らせる同級生が、

同い年なのに、なぜか”おとな”に見えたんです。


学校での彼は『おとなしい子』でした。

厚っこいレンズがはまった
ほそい銀縁のメガネをかけて

教室のすみっこで、
体育座りでラノベを読んでるような子。

「どけよ………どけって!!!」

そうじの時間に
ほうきを振り回すヤンキー同級生を余裕でガン無視、

一心不乱に小説のページをめくる”あの”彼って

ほんとは『おとなしい子』じゃなかったんだ…


「あ…こういうの聴くんだ…!」

「うん、好きだよ(^^)」

なんか、オタクはオタクだと思ってた自分がいた。

界隈みたいな、
派閥みたいな、
ジャンルみたいな、
カテゴリーみたいな、

そういうのにくくって考えるのが普通だと思ってたんです。

きっと、僕はずっと自分のことも”そう”思ってた…


骨の髄まで
僕に似てると思ってた陰キャな彼は、

このちいさな”ハコ”の中では、僕には『ヒーロー』に見えました。

「歌、いいかも」


アポロ/ポルノグラフィティ

僕の”歌”の始まり。

かつて『8cm CD』っていう、
手のひらサイズの古い規格がありました。

二つ折りの厚紙とプラスチックのパーツを
のりで貼っつけただけのジャケット、すんごいチープ。

そんなヨレヨレのアポロを、
中古ショップで100円でジャケ買いして、

ドにドが付くほどドハマリしちゃって。


親に無理言って買ってもらった
たしか…当時数万円したラジカセに

傷つかないように慎重ーーーにCDをセットして………

「カチッ」

再生ボタン押した瞬間の

「きたきたきたきたーーーーー!!!!!」

ロケットの発射音のようなイントロが
『おとなしい僕』の血液を沸騰させます。

「音楽って”これ”なんだ!」

『銀縁メガネのヒーロー』みたいに
踊って歌ってみたくなりました。

「音楽なら”これ”でいいんだ…!」

かつての『おとなしい僕』は
今まさに、自分で自分の”ヒーロー”になろうとしていました。


もらったお小遣いはぜんぶカラオケに突っ込みました。

友達を誘って
毎週のように通い詰め、

予定が合わない時は”一人カラオケ”なるものにも挑戦。


とうとう

平日の学校終わりに
自転車ダッシュでカラオケに飛び込むようになると、

どうしても、資金が足りなくなってきます。

(ラジカセの前で歌うのもな…)

おばあちゃん家のレーザーディスクは
演歌しか入ってないし。

……………

陰キャで、いじめられっ子で、『おとなしい僕』は

せっかく大好きになれた歌を、
せっかく大好きになれた自分を、

早々に失いかけていました。


時は流れ、専門学校。

アルバイトをしていなかった僕は
相変わらず、限られた資金の中で

細々と歌をうたい続けていました。

(居残り練習マジきちぃ~)

まいにち疲れ果て、カラオケも減り…

ただただ、ひたすら、家と学校の往復。

またあのころみたいな
”憂鬱”が目を覚ましてしまいました。


テストじゃいい点取れない。

実技はそこそこ、でも1番じゃない、なんならたまに落とす。

バイトする時間も体力もやる気も残ってない。

就職まであと1年ない。

…美容師、どの店行っても忙しいって言ってたな…

(ずっとカラオケにいたいな)

(専門学校じゃなくて
カラオケ代のために就職すればよかったか?)

(こどもにもどりたいな)

19歳ながら
将来や、収入、大人になることの宿命を感じてしまった。

(歳を取ったら、なにか1つしか、目指しちゃいけないのかもしれない)

僕はいったい、何を選んだらよかったんだろうか。


男のオレが女声で撲殺天使ドクロちゃんを歌ってみた 赤飯

僕の”人生の転換期”。

当時は知らなかった”両声類”という名前がついた
『超生物』と、インターネットで出会ったのです。

「こ、こ、こんな…こんな人間が……この世に………!?」

おもわずオシッコちびりそうになりながら

ブン投げかけたイヤホンを
ふたたびそっと耳に当てます。

かわいい女声、
かとおもったらデスボイス、
かと思ったらイケボまで出てきて…


「歌い手…か…」

どうやら、世間から
”歌い手”と名付けられた彼らは、

カラオケや自宅で自分の歌を収録して

動画サイトにアップロードして

大好きな仲間たちと
大好きな歌を楽しんでいるらしい。

(………いいな)

すでに美容室に就職が決まった僕。

残された最後の時間は、3ヵ月。

(パソコンあるよな…)

起動するのに5分くらいかかる
死にかけでホコリまみれのノートパソコン。

申し訳ていどに
上からかけられた布を

やや雑に

床に投げ置いて。

この物語は2割くらいフィクションです。
読んでくれてあんがとね!

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