【怪談】不気味な客
これは、コンビニ店員をしていたNさんから聞いた話。
Nさんはその日、夜勤でした。
深夜2時過ぎ頃、お客さんがいないタイミングでNさんはレジ金の確認作業をしていました。
すると、自動ドアが開く音が聞こえました。
「いらっしゃいませー」そう声をかけ入口に目をやると、誰もいません。
あれ?落ちているゴミにでも反応したのかな?Nさんはそう思い、作業を再開させました。
数分後、またウィーンと自動ドアが開く音が聞こえました。
Nさんは先ほどと同じく「いらっしゃいませー」と声をかけ、入口を見ます。しかし、またしても誰もいません。
やっぱり、ドア付近にゴミでも落ちてるのかな?と思い、Nさんは入り口の方を見に行きましたが特に何もありませんでした。
おかしいな、こんなに誤作動したかなあ。
そう思って店内へ戻ろうとした時、Nさんは思わず声を出しそうになりました。
雑誌を置いてあるコーナーに、お客さんが1人いたのです。
Nさんの働いているコンビニは、入口を入ってすぐ右手にレジ、左側に雑誌のコーナーがあり、レジから入口と雑誌のコーナーを見渡すことが出来る造りとなっています。
なので、レジにいたらお客さんが入って来たことが分かるはずですし、今のようにレジから入り口に向かう時には嫌でも雑誌のコーナーは目に入ります。
いつの間に入ってきたのだろう・・・。いや、それともずっと気が付かなかっただけなのか・・・。
Nさんはドキドキしながら「いらっしゃいませ」と声をかけレジに戻りました。
そのお客さんをよく見てみると、どうも様子が変なのです。
髪は整えられておらず、長くてボサボサで洋服もなんだか流行遅れの格好です。
そして一番奇妙なのが、立ち読みしている雑誌の紙面に顔があまりに近いのです。両手で雑誌を広げて、ページが上を向くように持っているのですが、紙面と顔がついてしまうのではないかというほど、首を曲げて顔を紙面に近づけています。
商品に顔をつけられてしまっては困るので、Nさんは注意をしようとそのお客さんの元へ行きました。
「あのー・・・」と声をかけたものの、Nさんはすぐに言葉を止めました。
そのお客さんが読んでいたのはお店に置いてある雑誌ではなく、古めかしい何かのパンフレットのように見えました。
Nさんは気味が悪くなってそのままレジの中へ引き返しました。
一体あのお客さんはなんなんだ・・・。
レジ金の作業が途中でしたがとても集中出来ず、その奇妙なお客さんの方をチラチラ気にしてしまいます。
早く勤務終わらないかな・・・と時計を確認しますが、退勤時間まではまだ数時間あります。ため息をつきながら視線を店内に戻した時、Nさんは心臓が止まりかけたと言います。
なんと、そのお客さんがレジカウンターの目の前にいたそうです。
首の角度的には顔をこちら側へ向けているようですが、開いた古いパンフレットで顔を隠しており、表情や顔の作りは見えません。
「お、お会計ですか?」震える声でNさんはそう尋ねました。
数秒、間を開けてそのお客さんは「〇〇区はいかがですか?」と掠れた声でKさんに問いました。
「え・・・?」Nさんが答えられずにいると、今度は「〇〇市はいかがですか?」と別の地名を聞いてきました。
そこでNさんはあることに気付きました。
その2つの地域は、最近Nさんが友達と心霊スポット巡りをした場所なのです。
Nさんはゾッとして、早く、早く帰ってくれと思いながら何も言葉を発せずにいました。
構わずお客さんは「〇〇町はいかがですか?」と言いました。
そこはNさんが行ったことのない場所です。
やっとの思いでNさんは首を横に振りました。
するとそのお客さんは同じく掠れた声で「そうですか・・・」と言いました。
Nさんは、あまりの恐怖に一度お客さんから視線を外し、呼吸を整えてまた視線を正面に戻しました。
「え?」
もうそこには、誰もいなかったのです。
レジから出て見てみると、レジ前に先ほどのお客さんが持っていたパンフレットが落ちていました。恐る恐る拾ってパラパラと見てみると、それは葬儀場のパンフレットでした。
退勤後、この前心霊スポットへ一緒に行った友達にこの話をしようと携帯を取り出すと、一件のメッセージが来てました。
まさに今連絡しようとしていた友達からで、そこには「今度は〇〇町行ってみようぜ!」と書いてありました。
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