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レザーシューズで考えるクローム鞣し革、タンニン鞣し革の違いと使いわけ(レザー②)
前回の続きです。
◉「レザーシューズで確認するクローム鞣し革、タンニン鞣し革の特徴と使い分け」
です。
復習がてらタンニン革、クローム革の特性をもう一度。
タンニン鞣し革)
・ハリ、コシがあり丈夫、摩擦に強い頑丈さがある
・可逆性がある(力を加えて変形させるとその形を保つので、工芸的な加工にむいてる、キズや跡は残りやすい)
・使っていると徐々になじんでくる
・経年変化がある。タンニンの茶褐色への変化が革らしい雰囲気を楽しめる
・用途にもよるが、クロームと比較すると加工に時間と手間がかかるか
クローム鞣し革)
・柔らかで伸縮性がある
・弾性があるのでキズや変形に強く、熱にも強い。
・発色がよい、色、柄を鮮やかに表現できる。
・生産性が高い。短時間で大量に生産できる
・金属物質を含む。環境や処分の仕方で有害物質を発生させる可能性がある。
というような特性に応じてクロームにはクロームのタンニンにはタンニンの皮革、それぞれの用途、向き不向きがあります。
ということをふまえまして、前回わかりやすいと紹介したのがメンズのドレスシューズです。
○アッパーはクロームなめしの革
○ソールはタンニンなめしの革
と、目的に応じてワンアイテムの中でクローム鞣し革とタンニン鞣し革が使い分けされている珍しいアイテムです。
(決まり事ではありません。スタンダードなものであればこの組合せになってる事が多いです)
・生産工程に“釣り込み“という革を木型に合わせて伸ばして叩いて馴染ませる作業があったり、履いた足を包み込んだり、適度な弾力、柔軟性、伸縮性が必要なアッパーにはクローム鞣しの皮。
・地面と直接接し歩行の摩擦に耐え、体重もささえ、クッションの役割も果たすソールには丈夫で硬いタンニン鞣しの皮が使われています。
『メンズのドレスシューズのアッパーは柔らかいクローム鞣し革、ソールは丈夫で堅いタンニン鞣し革』とおぼえておけばクロームとタンニンの特性もわかりやすく、忘れないと思います。
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※ここで補足説明)
注:ソールの革は皮革製品の中でも相当の強度が求められるジャンルです。
確かに足の裏にくっつけて毎日歩くことを考えるとメチャクチャ強い素材でないとダメそうです。
布帛やニットでいい訳ないですし、かといって鉄とか、石とか、ただ堅くて丈夫な素材では重いし、膝にきます。
歩行による摩擦に耐える強靭さと体重を支え足をまもる柔軟性とクッション性を併せ持たなくてはなりません。
通常のタンニン鞣しではまだ強度が足りないのでソール用のレザーはもともと厚くて強い成牛の皮をさらに丈夫にすべく、ピット槽(おっきい風呂みたいな感じ)による漬け込みで鞣すケースがほぼほぼです。
前回のこっちの画像のタイプです。(ドラムでグルグルでない方。ドラムでやると時間は相当短縮されますがソールに必要な程の強度が出ないようです)
タンニン成分の濃度の薄い液体の槽から濃い液体の槽へ数日かけて順に移し換えることで、浸透圧を利用してゆっくり長時間かけて革の繊維にタンニン成分を浸透させていきます。
最終的には濃い液体の槽にさらに数週間漬け込むことで強度と厚みをましていきます。
漬け込み期間は目的に応じて25日から90日くらい幅があるようで、通常、期間の長い方が堅い丈夫な革になります。
が、靴のアウトソール用の革は別格で鞣しだけで1年くらいかかるそうです。色んなグレードや種類のものがあるようですが、最高級のは鞣しの後の工程含め1年半近くかけて仕上げるようです。ジョンロブとかが使ってるやつです。
シューズのソールに使えるような厚くて強い革は鞣し段階からその目的に応じた段取りと手間と時間が必要になります。
そういう意味では靴のソールの鞣しはタンニン鞣し革の中でもちょっと特別です。
通常の革製品はここまでの強度はもとめられません。
タンニン鞣しの特徴を最大限にいかしたものくらいに考えてください。
例えば警官の制服のベルトなども同じようにピット槽で数か月かけて鞣されるらしいです。
「ピット槽タンニン鞣し」は業務用レベルの革の鞣し加工にあたるようです。
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※本題に戻ります)
実を言うと本来、
「アッパーはクロム鞣し、ソールはタンニン鞣し」
というのはレザーシューズ全般で言えることで、ホントはウィメンズのシューズでも同様です。
チャーチなどのメンズがちっちゃくなったようなモデルのモノはもちろんですが、パンプスやサンダルなどでもアッパーもソールもレザー使いのものなら基本の考え方は同じです。
(ピッピです、デザインは色々ですが、つくりはいつも王道な気がします)
(裏もレザーです。きれいに塗装されて薄いですが、たぶんタンニンなめし革。アッパーはクロムで間違いないと思われます。)
(チャーチサンダル、シルバーのアッパー。メタリック顔料?)
(裏です。これはタンニン鞣し革で間違いなさそう。一部合成ゴム使い。濃い色の部分)
とりあえず、「靴のアッパー向きの革がクローム鞣し、ソール向きの革がタンニン鞣し」と憶えるとわかりやすいはずです。
そこからいつも通り少し補足が必要になります。が、また補足は次回にします。
ちなみに身近なところでのタンニン革は
・ホワイトハウスコックスのブライドルレザー、ホースレザー
・フェリージのバッグに使われているスムースの革
・コードヴァンシューズ、コードヴァンベルト
などがそうです。なんでわかるかというと
上記の革はいずれも手間と時間のかかるピット槽でのタンニン鞣しで、だからこそそれをセールスポイントとしてブランド自ら謳ってるからです。
(コードヴァンは繊維が密すぎ、繊維の並びかたも特殊なのでクロームではうまくいかないらしいです)
フェリージのバッグなどはハンドルの革の裁断面の処理の仕方などでわからなくもないのですが、普通に革製品をみてノーヒントでタンニンとクロームの正確な見分けは実はちょっと厳しいです。
こうやってせっかくそれぞれの特徴を把握しても見分けつかないんじゃあんまり意味ない気がしてしまいます。
そこが『鞣し』を理解するのを難しくしてる理由かもしれません。
(忘れちゃったらメンズのドレス靴のアッパーは柔らかめのクローム、ソールは硬めのタンニンで思いだす!)
ま、やがて徐々に役に立つ時もきっときますので諦めて憶えてください。
ちなみに最後に再度確認ですが、大半の革製品はクローム鞣しです。
<まとめ>
・レザーの理解のためとりあえずクローム鞣しとタンニン鞣しはおぼえときましょう
・メンズドレスシューズではアッパーがクローム鞣し革(柔らか、弾力、伸縮性、発色あざやか)で、ソールがタンニン鞣し革(堅い、強度、耐摩耗性)のケースがスタンダード。
・靴のソールは地面に直接接して摩擦に耐えなければいけないのでかなりの強度、耐久性、と体重を支えるクッション性、柔軟性が必要。
・そのためレザーソール用の革は「ピット槽での漬け込みのタンニン鞣し(しかも長め)」という特別時間と手間のかかる方法になる
・そんな特徴がありながらもクローム鞣しとタンニン鞣しの革の見分けは製品見ただけでは難しい