クローム鞣し・タンニン鞣しと靴のアッパー・ソール、ついでのライダース(レザー③)
補足です。
前回、靴のレザーソールについてだったので調子に乗って特殊なピット槽でのタンニン鞣しについて難しい説明をしてしまいました。
一般的なドラムでのクローム鞣し、タンニン鞣しを無視してしまい、さすがにあり得ないのでごく簡単に説明しておきます。
タンニン鞣し)
«ピット製法»
前回書いたピット槽(デカめの風呂桶みたい)に漬け込む昔からのやり方です。
長い期間漬け込む(3週〜半年以上)ことが必要でかなり効率悪い方法です。
が、強度と弾力のある質の高いタンニン鞣し革ができるので現在もこの製法で作られた革の評価は高いです。
この設備を持ってるタンナーさんは今となっては国内には数社しかないと言われていて希少性もとても高いです。価格はどうしても高くなります。
«ドラム製法»
コインランドリーのドラム式洗濯機のメチャクチャでかいやつみたいなものに革とタンニン剤を溶かした液体を一緒に入れてグルグル回してタンニン成分を浸透させます。タンニン鞣しもこの方法が普通になってます。
だいたい24時間くらいで鞣し自体は完了するので圧倒的に時間ははやいです。
クローム鞣し)
«ドラム製法»
タンニン鞣しと“使うドラム・設備・やり方“は同様です。
クロムの鞣し剤を皮と一緒にいれてグルグルまわします。
クロームにはピット製法はありません。
こちらもだいたい24時間くらいで鞣しは完了するようです。
鞣し後の革はクローム剤の色の影響で薄いブルーに仕上がります。
見た目上、肌色〜薄茶くらいの色の私たちが革らしいと思っているモノは
製法はピットでもドラムでもどちらでもいいのですがタンニン鞣し革です。(クロームで鞣すと前述の通り薄いブルーの仕上がりになります)
エンダースキーマです。
オールヌメ革のオマージュシリーズ。
つまりタンニン革のみでつくられてます。(ポンプフューリーの実物はみたことなかったのですが、タンニン革4、5種類の使い分けなんですね。)
急にエンダースキーマを見ていただいたのは、「レザーシューズはアッパーはクローム革、ソールはタンニン革がスタンダード」という説明のイレギュラーにあたるわかりやすい例だからです。
実際のところ靴のアッパーに関しては素材の自由度は高く、結構融通はきくようです。
ヌメ革はクロームの革より加工が面倒だと思われますが、アッパーにできない程の面倒さではありません。
ソールに関してはヌメ革といっても底材用をつかわないと強度がたりませんのでおそらくアッパーとは違う底材用のヌメ革(ピット槽で鞣す厚くて強度の高い革)を使ってるはずです。
ちなみに「通常のレザースニーカーはアッパーはクローム鞣し革、ソールは合成ゴム、ウレタン、EVA、」などです。ので、エンダースキーマが見た目以上に特殊なコンセプトでしかもレザーシューズとしてしっかりとした仕様だとわかると思います。
「クロームだ、タンニンだ、アッパーだ、ソールだ」とうるさいですが、素材とかつくり方とかの知識を知れば、「そのモノがどういうモノか?少しわかるようになる」といういい例だと思います。
(ついでに)
完全に“ついで“です。エンダースキーマライダースです。靴を調べてたらライダース出てきたのでついでにどうぞ。
説明読むとパーツごとにホース(馬)、ディア(鹿)、カウ(成牛メス)のタンニン鞣しヌメ革の使い分けのようです。(面白いです)
ルイスレザーのオーダーのサイトを見たところ現在レギュラーのライダースはクロームのカウハイド、ホースハイド使い、タウンデイリーユース用はタンニンのシープスキンを使ってるようです。
なので、このオールヌメのライダースは見た目以上にかなり特殊な企画です。
ライダースはもともとバイク乗り用ですから風雨を防ぐ、転倒時体を守るという役割があり、当然汚れもしますのでブラックの厚い革を採用するのが定番です。
昔、『フルベジタブルタンニン鞣しのホースハイドの顔料ぞめが本物のライダースで、テーブルに置いたら人がきてる形で自立するぐらいガチガチじゃないとダメだ』とか言われた記憶があります。
(わかってなかったので“なんのことやら?“当時ピンときませんでした)
が、今となってはセレクトショップで扱うライダースはほぼタウンユース用で軽くて柔らかなシープスキンがほとんどです。
特に女子用はファッションアウターの定番になってますのでシープ(羊)、カーフ(仔牛)、ラム(仔羊)あたり(薄くて柔らかで軽い)が多いです。
ふんわりニットの上に羽織ったりしちゃうのでとてもバイクには乗れない感じです。
ちなみにラム(仔羊)の原皮はかなり小さいのでライダースつくるのに用尺(要尺)6〜8匹かかるそうです。(贅沢なアイテムです)
参考までにビューティフルピープルです。復習にどうぞ(ディティールは本格的)
季節感全くない内容になりましたが、どうせすぐに秋も始まるので憶えておいてください。
<まとめ>
・タンニン鞣し、クローム鞣しともに今のスタンダードはドラム方式
・靴のアッパーの素材は結構自由度高いが、ソールは地面と接するので強度の問題がありそうもいかない
・レザー製品はシンプルなので憶えた知識は割と直で商品の理解に役立つ。(接客応対時役に立つかは場合による)
・ヌメ革というのはタンニン鞣し革で必要以上の加工(主に染色、アイロン、型押し)を入れてない状態のもの(多少定義のブレはありますがだいたいこの感じで呼ばれてるはずです)
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