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着丈・スリット・パンツウエスト、バランスがとれるか(洋服の修理をうける際に気をつけること❾)

○洋服の直し、修理を受ける際は修理内容と修理箇所について

1、つくり上(構造上)可能か
2、もとのデザイン、形状が再現できるか
3、見た目が綺麗にできるか
4、バランスは許容範囲か


を考慮しなければいけません。

1〜4の項目を順に説明しています。
前回で「3、見た目が綺麗にできるか」までやりました。

今回は

4、バランスは許容範囲内か

丈や幅調整の修理をしたはいいが、服としてのバランスが大丈夫か?ということです。

わかりやすいようまずは極論ですが、例えばジャケットの着丈を仮に10cmとか詰めなくてはいけないとしたら、それはもうジャケットとしてバランスが破綻する可能性が高いのは想像できると思います。シンプルにそういうことです。

少しリアルに仮に5cm詰めでも同様です。

例① ◉ジャケット着丈5cm詰めの場合

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10cm(赤線分)も詰めたら全体としてバランスとれませんが、5cm(青線分)でもかなり影響します。

スソとボタンの距離(黒線)どんどん短くなります。パッチポケットははずして移動するとして、いったいどこまで上げるのか?位置関係どうすんのか?
後ろのベントの長さも短くなります。

1、つくり上(構造上)可能か   ○
2、もとのデザイン、形状が再現できるか ○(フロントの空き具合の変化、ベントの長さなどで厳密には✖️だが形状的には再現可能)
3、見た目が綺麗にできるか  ○(おそらく問題ない)
4、バランスは許容範囲か  ✖️(ウエストの絞り位置、フロント釦から裾の距離、ベントの長さ、ポケット位置移動など全て微妙)

これがロングコートだったり、マキシのワンピースだったら10cmぐらいどうってことない場合もありますが(コートのベントは短くなりますけど)、ジャケットでは5cmでも相当大きく影響します。

(実は“ジャケットの着丈つめ“やる場合、通常は1.5cm詰めくらいまでを安全な詰め寸法の目安にしてます)

洋服はバスト・ウエスト・ヒップの位置、釦、ポケット、その他デザインなどあるので大きい寸法調整はバランスを崩す要因に直結します。
(ブランドのスタイルなどの拘りを重視しだしたら何もいじれなくなりますが)

たまにどうしても体型的に修理が必要な方いると思いますが、「バランス大丈夫か?」を頭においておくようにしてください。


日常的に遭遇するのはもっと細かなバランスの事例だと思います。

例② ◉裾スリットのパンツ5cm丈詰めの場合 

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女子はよくあると思います。

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パンツは割り縫いですがスリット部の内側の生地を少し広くとっていて見返しのような役割(スリットを綺麗にみせるための補強?)をさせてるようです。
端も折り返して綺麗に始末してあります。
こんなにしっかりつくられちゃうと丈詰めやったらスリットも短くするしかありません。

1、つくり上(構造上)可能か   ○
2、もとのデザイン、形状が再現できるか  ○(スリットの長さ短くなるので厳密には✖️)
3、見た目が綺麗にできるか  ○(おそらく問題ない)
4、バランスは許容範囲か  ✖️(5cm上げたらスリット短くなってバランス悪いかもです)

このパンツの場合、スリット短くなると、
エレガントさというかドレスっぽさ
・丈長でも裾の収まりよくしたり、稼働域を広げたりしてる機能性
が失われます。

(割り縫いの延長でスリットつくってあるタイプなので再度シーム外して、詰めた分無理矢理スリットを伸ばせなくはないです。料金少し高くなります。詰めた分の生地を足して補強したり、、)

例③◉ スラックスパンツウエスト、ヒップ4cm詰めの場合

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あんまりありませんが、サイズの小さなパンツのウエスト、ヒップ詰めの寸法が大きいとベルトループやポケットが寄ってバランス悪く見えることがあります。

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仮にやるとこういうことです。ベルトループは移動できてもポケットは移動できません。(あんまりないですがわかり良い事例です)

1、つくり上(構造上)可能か   ○
2、もとのデザイン、形状が再現できるか  ○
3、見た目が綺麗にできるか  ○
4、バランスは許容範囲か  ✖️(ベルトループ位置、ポケット位置が微妙)

『バランスは大丈夫か』がだいたいどういうことかわかっていただけたかと思います。(書いてるそのままです。)

さて、これでやっと、上記4項目すべて説明しました。

修理受ける時はこんな感じで確認できると修理の際のリスクを事前に色々察知できるようになります。

1、このつくりでこの修理できんの?
2、この修理やったとして、ここ元の感じに再現できんの?
3、再現したとして綺麗にできんの?
4、綺麗にできたとしてバランス大丈夫?

でも、当然の疑問があります。

前に書いた通り『事前に“できる・できない“の判断ができるわけじゃないなら、結局なんの役に立つのか?事前にリスクを察知するだけで何が変わるのか?』です。

おそらくもっとも大きなメリットは、

「事前にお客様と相談ができるようになります。」(意外とリアルなメリット)

・レッドカードのデニムの丈あげなら、裾がダメになってしまうので特殊修理の提案ができます。
・綿のジャケットの袖詰めなら跡残りの可能性があることをお伝えできます。
(もちろん、その後どうするかの相談にはなりますが)
・コートの丈詰めなら、大きく詰めた時のバランスについてお客様と相談することができます。

修理内容の結果は同じかもしれませんが、おそらく過程が圧倒的にスムーズに進みます。

さらに次回に続きます。

<まとめ>

・洋服の修理をする際に例え「つくり上(構造上)大丈夫で、デザインの再現ができて、綺麗に仕上げもできて」であっても洋服

・アイテムとしてのバランスがとれてないこともあるので注意

・修理を受ける際は4項目をこんな感じで自問自答するとわかりやすい

1、このつくりでこの修理できんの?
2、この修理やったとして、ここ元の感じに再現できんの?
3、再現したとして綺麗にできんの?
4、綺麗にできたとしてバランス大丈夫?


・事前に修理リスクを察知できる一番のメリットは「事前にお客様と相談ができるようなる」こと

注意:この内容はあくまで既製品の洋服を販売するにあたって実際に発生する修理内容を前提にしています。その範疇を大きく超えるような内容は想定していません。(リサイズ、デザイン変更、改造レベルの修理など)

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