ジャケットの袖、アキミセ・本切羽・筒袖仕上げ (洋服の修理をうける際気をつけること❺)
既成服を販売してその修理を受ける際の注意事項です。
1〜4の項目を順に説明していきます。
2、もとのデザイン、形状が再現できるか
についての続きです。
前回は再現できない代表例の加工デニムについて説明しました。
加工デニムは一旦製品を完成させてから特殊な加工をガンガンやるので
普通に裾上げすると「見た目や雰囲気のために施したスソの加工」の効果がリセットされてしまいます。
当たり前かもしれませんが
洋服の修理は「つくり上(構造上)可能であってもデザイン、形状が再現できなければ(見た目が変わってしまったら)意味がない」と判断されるケースが多いです。
お客様にとっても、もとのデザイン・仕様通りに上がってくるのが当たり前で、基本それを前提として修理を承ってます。(仕様変更希望などなければ)
要注意事例として加工デニムはわかりやすかったですが、ちょっと特殊なジャンルすぎたので、今回は別の事例です。
◉「スーツのジャケットの袖丈をつめ(だし)たい場合」
比較的、日常的に発生する修理ですが既製服のスーツだと普通に袖口は完成してるケースが多いです。
ボタンもついて、ボタンホールの切羽(ステッチ)もついてます。「アキミセ仕様」で完成させてあります。(黒い生地ネームタグはとっちゃうので関係ないです)
袖丈詰める(だす)場合、すでに完成してるこの形状が修理後に再現されて仕上がってくることが前提ということです。
まず、つくり上できるか?
そして、この袖の形状を再現できるでしょうか?
そこまで再現できるか?ということになります。
完成させてあることもあり、ちょっと見た目で判断するのは難しそうですが、
答えは、“つくり上はもちろん可能で、再現もできます“。
なんでかというとやっぱり“できるようにつくってある“からです。
前々回のメンズドレスパンツのウエストと同様で、
“サイズ調整できるように、再現できるようにできて“ます。
メンズドレススーツのジャケット・パンツ類(特に丈や幅)に関しては
「サイズ調整するかも」が前提になってるので後でいじれるようなつくり(構造)にしてあることがほとんどです。
前回の加工デニムは丈調整する可能性など無視で加工を入れて完成品にしてありました。(でもデニムはそういう特殊なジャンルです)
ジャケットの袖は“ドレスパンツのウエストサイズ調整“程はやりやすくはないようですが、ツメ(ダシ)後、つくり直して再現できるようにできてます。
せっかくなので、参考までに私物の着なくなったものをバラしてみます。
(比較のため右袖バラして、左袖そのままにしてます。)
ジャッケット袖(左袖です)、「アキミセ、セッパなし」です。(すいませんボタンホールのステッチないタイプです。)
開きの部分はベントと同じような構造ですが、わざと閉じてあります。
これは「アキミセ」でなく「本切羽」で仕上げてある袖(額縁仕上げ)。
ボタンホールがホントに空いてて開閉可能になってます。(女子ジャケットなので腕まくり用でしょうか)
このジャケットの袖口です。
「アキミセ」は簡単にいうと「本切羽」風に見えますがこのボタンがホントにはあかないようにしてある(ボタンホールがあいてません)タイプです。
なんでかというとボタンの開け閉めが機能上ほぼ必要ない場所だからです。
(その辺のルーツ的な話は別で調べてみてください)
袖口「アキミセ仕上げ」の仕様は装飾的なものということです。
(このジャケットは飾りの切羽もついてませんが)
折り返すとこんな感じ。(アキの部分も無視して裏地がぐるっと一周ついてます)
ちなみにこれは「筒袖」。
筒状の袖の裾を内側に折り返しただけの仕上げ。アキ部分ありません。
折り返すと袖裏付きでこんな感じです。ぐるっと一周この形状です。
普通にシングルステッチ入れてます、かなりカジュアルな仕上げです。
こういうドレスダウンしたジャケットの袖口です。(画像ではドレスダウンな雰囲気、わからないですね、、)
「筒袖」すくい縫いのパターン。
内側、完全にパンツのシングル仕上げと同じです。(ルイスミシンですくい縫いしてます)
ジャケット類の袖口のパターンも色々ありますが、主な仕上げは
『筒袖』、『アキミセ』、『本切羽』あと女子服の『スリット』くらいでしょうか。
※本題に戻ります。
先ほどの私物ジャケットの「アキミセ」バラします。
まずボタンとって、裏地はずします。(ちなみに右袖です。)
アキの部分です。「アキミセ」はこのアキが閉じてあって「筒袖」のように袖裏がぐるっと一周、回ってるケースが多いです。
メチャクチャ途中ですが長くなってきたので一旦、終了して次回に続きます。