【妄想ライオンズ 121】あの日のリベンジー青山美夏人ー
去年の3月31日。背番号29は、開幕戦の9回のマウンドにいた。
エースが8回を1失点で抑え、2−1の9回には、ライオンズの抑えのエースの背番号14ではなく、この年の新人の背番号29が上がった。
しかし、無情にも、後一人というところで、この年オリックスに移籍した、森友哉に劇的な同点ホームランを打たれた。
エースの勝利を消し、自分のセーブを消し、そしてこの後、チームの勝利も消えてしまった。
あれから1年と3ヶ月。
リリーフから先発へと回った今年。前回の登板から、スピードガンの表示以上に球威のあるボールが、しっかりとコントロールされ、打者に食い込んでいく。
今日は、27個のアウトのうち、実に14個がフライアウトだった。
外野までいい感じで持って行かれた打球も、球威で勝り、凡フライにしていった。
その好投に、打線が報いる。6回に、ノーヒットだった宮城に6本のヒットを浴びせて5点を取り、8回にはダメ押しのホームランも出た。
6−0だ。球数も100球を超えたところ。
9回は、初勝利、初完投、初完封を目指してマウンドに上がるも、たった2球でツーアウトまで持ってくる。
最後の打者は、1年3ヶ月前、プロの洗礼を浴びせられた背番号10番。
球場のファンの多くが、そして、画面の前のファンの多くが、去年の春のことを思い出す。
乗り越えるんだ。今こそ、プロの投手としての、本当のリベンジを喰らわせるんだ。
固唾を飲む僕らをよそに、背番号29は、打ち気にはやる森友哉にゆるいカーブを投げていく。タイミングを外された森の打球は、高々とライトに上がる。
物語のような返り討ち。そして、手にした初勝利に初完封。大きく表情は崩さないけれど、いつもの仏頂面が、少しはにかむ。
ライオンズに、もう1つ、先発の、太い柱が加わった。
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