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【妄想ライオンズ67  ルーキーのリベンジストーリー】

ルーキーの29番は、初戦の9回2死から、劇的な同点ホームランを献上し、開幕戦の勝利を、エースの完璧な投球をふいにした。 みんなが彼をかばった。決して力負けしたわけではない。ただ、あの1球だけが甘かった。ルーキーには酷な当番だった。

それでも、翌日のファンサービスでは、サインを求めるファンに向き合い続けた。悔しさや、申し訳なさを胸に抱きながらも、500人を超えるファンと接し続けた。 その一人一人の全てが、彼にエールを送る。その1つ1つが彼にパワーを与える。大学野球にはなかった、ファンの力を感じる。

リベンジの機会を伺う彼に、望外の訃報が届く。ばあちゃん子だった彼にとり、大事な大事な祖母が亡くなったという。 折しもチームは開幕から連敗を喫していた。自分の責任を感じて、夜も眠れなかった。 あれは、ばあちゃんが来ていたのか。最後に、力を与えに来てくれたのか。それとも・・・ ばあちゃんに、この姿を見せたい。躍動する自分の姿を見せたい。天に召された今こそ、きっと、この姿を見ることができはずだ。

チームは先発に転向した平良が完璧な投球を見せ、打線も苦しみながらも、8回の裏に3点をとりオリックスを突き放す。 ようやく見えた開幕初勝利。ようやく見えた、松井監督の1勝目のかかるマウンドに、29番が上がる。

リベンジの機会はやってきた。 しかし、彼の心は震えていた。また打たれるのではないか。ばあちゃんの亡くなったこともチームには伏せていた。星の巡りも悪い。

そんな彼にキャッチャーが歩み寄る。1学年上、同じ東都大学リーグで凌ぎを削ってきた。 「お前、どこの大学出てるんだ、亜細亜だろう!こんなもんじゃないだろ、厳しさは!」 どぎつい、低い一声に、我を取り戻す。 野球だ。

これは、野球だ。こんなところで3点差を追い付かれるような練習はしてきていない。もっともっと苦しい思いをしてきた。 1試合、1本打たれて、めそめそしてないか。ばあちゃんが、そんな自分の姿を期待しているか。

腕を振ろう。古賀さんのミット目掛けて腕を振ろう。

ツーアウトまでこぎつける。ランナーは二人いる。しかし、逃げなかった。ストレートはまだ捉えられていない。渾身のストレートを高めに投げ込み、詰まらせる。

球場が揺れる。文字通りに揺れる。 新生ライオンズの初勝利は、かくも劇的なルーキーのリベンジ劇に始まった。

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