ドーナツ
夏が終わりを告げました
秋風がときこさんのドーナツ屋さんにもやって来ました
『今年はどんな秋味のドーナツを作ろうかしら』
ときこさんはドーナツが大好き
寝ても覚めてもドーナツの事を考えています
『栗にさつまいもにかぼちゃ後はどんなお洋服を着せようかしら』
ときこは朝からとても楽しそうです
絞り出されて揚げられたドーナツ達も
ときこさんがどんな味にしてくれるか
どんなお洋服を着せてくれるか楽しみです
ときこさんはあれこれ考えながら別の部屋に行ってしまいました
一つのドーナツが裸のままトレーから飛び出しました
『なにしてるのさ ときこさんが も少ししたら
素敵なお洋服を着せてくれるのに』
『そうよ なにしようっていうの』
飛び出したドーナツは言いました
『やってみたいに事があるんだ』
『やってみたいこと?』
そう言って
水がはられているボールの中に飛び込みました
ぷか ぷか ぷか ぷかと
水に浮かんだドーナツは言いました
『 気持ちいい』
その声につられて
ボールに飛び込むドーナツがいました
最初に飛び込んだドーナツは浮き輪になってみたかったのです
ある日テレビに映る海水浴場を見てから
浮き輪になれるかもと野望を抱いていたのです
しかし
しばらく楽しい声がしていたボールの中から
悲鳴が上がりました
『体が溶けだしたよ』
『沈むよ』
慌ててボールがら這い出たドーナツ達
別の部屋から戻ったときこさん
ぐったりしているドーナツを見つけて
びっくり
でも直ぐに辛そうなドーナツの
形を整えて粉をつけて揚げ直しました
穴が空いていないまん丸のドーナツです
『これもありね とりあえずかぼちゃのクリームで飾りつてしてみましょう』
そうして出来た新しい形のドーナツを
ときこさんはばくり
『美味しい』
『これはお店に出せるわ みんなにも新しい形のドーナツ 喜こんでもらえそう』
こうしてときこさんのドーナツ屋さんには
穴が開いていないまん丸なドーナツもトレーに並ぶ事になりました
カラーン
お客様がやって来ました
『いらっしゃいませ』
『ママ 見て まん丸ドーナツがあるよ
可愛い これが良い』
まん丸ドーナツ 第一号のお客様は女の子です
ときこさんも女の子が喜ぶ顔につられて
ニコニコ顔
今日もドーナツは飛ぶように売れました
おしまい
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