あめふらしのこおに

ぼくはあめふらしのこおに
どんどこどーん
どんどんどん
たいこたたいてあめふらし

『きょうはこのへんであめをふらそうかな』
ぼくがちかずくとみんなおおあわて

こうえんからかえるこどもたち
おせんたくものをとりこむおかあさん
いめごやのペンキぬりをやめるおとうさん

『さーそろそろあめをふらせようかな』
あめふらしのこおにがたいこをたたきます

どんどこどーん
どんどんどん
あめ  あめ  ふれふれ
どんどこどーん

ぼつ  ぽつ   ぼつ
やさしいあめがふりだしました
『きょうはこんなきぶんだな』
あめふらしのこおにはいちどだけたいこをたたいててをとめました

『きょうもきこえてくるんだね
                          やだ  やだ  やだなー  あめふりは』

あめふらしのこおにはやだのこえをあつめるふくろをひろげてくものすきまからたらしました
しばらくしてふくろをひきあげようと
したをのぞくと

あおいかさがくるくるまわっています
たのしそうにあめのなか
おんなのこがかさをまわしています

『あのこはあめがきらいじゃないのかな』
あめのなかをたのしくあるくおんなのこ
あめふらしのこおにはうれしくなりました

どんどこどーん
どんどんどん
あめあめふれふれ
どんどこどーん

うれしくてたいこをたたくてにちからがはいります
あめがつよくふりだしました

『なっちゃん 』
おんなのこをよぶおかあさんのこえ
おんなのこはかさをすぼめておうちにはいりました

やだのこえをあつめたふくろのなかで
『わたし あめ だいすき』のこえがします
なっちゃんのこえです
あめふらしのこおにはなんどもそのこえをききました

『ぼくのこと すきでいてくれるこがいるなんて』
あめふらしのこおにはあたたかいきもちになりました
はじめてのきもちでした

あめふらしのこおにはふくろのくちをぎゅっとしばって
『みんなにもきかせてあげよう』

あめふらしのこおにはいそいでおうちに
かえりました

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