見出し画像

年神さまがやってきた

『ひまだな』
こたつに足をつっこんで天井をみあげた
『ひまならわしとあそぼう』

え?   こたつにつっこんだ足をすりすりする
だれ?  こたつにつっこんだ足をこちょこちょする

ねこのみーちゃんがぼくの頭の上を
よこぎる
ぼくはぎょっとしたけど
こわいものみたさでこたつの中に頭をつっこんだ

ちっちゃい  
それはそれはちっちゃいおじさんが
ぼくの足をこちょこちょしてる


『だれ?』
『わしは年神さまじゃ』
ぼくはすっぽりこたつの中に入りこんだ
『年神さまってなに?』
『 お正月にやってくる神さまのことじゃ』
『今日はお正月じゃないよ   お正月までまだ3日もあるよ』
『なに?  正月じゃないじゃと  こまったの』
『お家に帰ったら?』
『いやいや  それはできんのじゃ  一旦  やってきたら  鏡開きまでは  この家のお飾りのもちの中ですごさないとな  それがわしの仕事だからの』

『ところで鏡餅はどこじゃ』
『鏡餅?  なにそれ?』
『鏡餅を知らんのか  なんと  鏡餅を飾らぬ家に来てしまったのか  わしとしたことが』
『待ってて  お母さんに聞いてくる』
ぼくは台所にいるお母さんの所に行って聞いてみた
『 ぼくの家には鏡餅飾らないの?』
『みんな  お餅をあまり食べないから
飾った後の事考えるとね  飾らないわね』

お母さんが言った通り年神さまに話したら
年神さまはこまったの~  こまったの~
そう言いながら またぼくの足をくすぐりだした
てことは  それほど  こまってないみたい
でも   聞いてみた
『これからどうするの?』
『とりあえず  鏡餅をゲットせねばの』
『どうしても鏡餅は必要なんだね』
『ちょっとまってて』

ぼくはぼくの部屋にある貯金箱をあけた
貯金箱に入っているお金をポケットにつっこんで
こたつにもどって頭をつっこんだ

『今から鏡餅を探しに行ってくるよ』
『そうか それはありがたい』
『わしも一緒に行くとしよう』
そう言ってぼくの肩に乗っかった
『みんなに見られても大丈夫なの?
まぬけな年神って言われない?』
『大丈夫じゃ  おぬしにしか見えておらん
てか  本当はだれにも見えないなずなんじゃがの』

ぼくは年神さまを肩に乗せてだかしやさんに向かった
『おばちゃん  鏡餅ある?』
『ここにはないよ 角の田中屋さんに行っといで 』

田中屋さんに着いた
お店の中には白い丸いお餅がいっぱい並んでる
お店のおじいさんがぼくに気づいて声をかけてくれた
『鏡餅下さい』
おじいさんがどれにするかゆび指した先には
白い丸い大きなお餅が二つ重なってならんでた
5000円    3000円
ぼくのボッケに入っているお金じゃ買えない
『うまそうじゃの』
年神さまはそう言ったけど
『ぼくのおこづかいじゃ買えないだ   ごめんね』
ぼくはそう言い返した
すると  年神さまは
『小さいほうはどうじゃ  買えないかの?』
『小さいお餅でもいいの?』
『かまわん  小さいお餅を二つ買ってくれ』
『分かった』
ぼくは店のおじいさんに小さい丸いお餅を二つお願いした
受けとったお餅はやわらかかった

『鏡餅ってどうやってかざるの?』
帰り道  ぼくは年神さまにお餅の飾り方を聞いた
色々必要だけど家には無いしおこづかいもないから買えない
ぼくは作ることにした
年神さまが絵を書いてくれた
まずお餅を乗せる台
  三方=さんぽうは段ボール箱で作る
次は習字箱から半紙を出す
昆布とみかんは台所から取ってくる
ゆずり葉はないから色画用紙で作る

『出来た』
白い丸いお餅はまだやわらかかった
『おー  いいの』
年神さまはお餅の上に乗ったと思ったら
姿を消した

1月11日
鏡餅の日がやってきた
学校から帰えってぼくは年神さまに教えてもらった通りにお餅を割ろうとしたけど割れなかった
かちかちで割れなかった
夜になって仕事から帰ってきたお父さんに割ってもらった
白い丸いお餅は小さくくだけた
『よう寝た  さて 帰るとするか  ありがとうの』
姿は見えなかったけど年神さまの声は聞こえた
『来年は大きな鏡餅飾るから  絶対ぼくの家に来てね』
ぼくはお父さんとお母さんに気付かれないように
年神さまに手をふった

お母さんがカビを取って揚げてくれた
美味しいかき餅の出来上がり

『来年は大きな鏡餅をかざろう』
『そうね    それもいいわね』
『絶対 絶対  約束だよ』

おしまい

#創作絵本ストーリー
#お正月
#鏡餅
#年神様
#小学生
#核家族
#賃貸
#絵がついたら嬉しい









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?