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『夢を探して』 [1] 夢を探しに

10年前、忘れられない風景を見た。
霧雨の早朝、峠の山道を下りながら、持っていたバッグを落とした。落ちたバッグを拾おうとして、ふと、何気なく振り返った時、
直ぐ近くの畑の中に、ぽつんと建った小さな小屋の屋根の上から、向こうの山まで続くように架けられた「虹の橋」が見えた。
「何て美しい風景だったろう。」今でも、はっきりと心の中に残っている。まるで、「妖精の国へ続く橋」のように思えた。
あの橋を渡って、あの山の向こうの国まで行けたら、どんなに素敵だろう。
私の中に、ひとつの物語が浮かんだ。
その物語の場所を、探したいと考えるようになった。
それは、夢なのに、作り事なのに、何処かにあるような気がする。そう信じずにはいられなかった。
人は、「いい年をして、そんな夢みたいな事を言って……」と、
たぶん嘲笑うだろう。非難するだろう。変人扱いされるかも知れない。でも、心の中の物語は、私を呼んでいるような気がする。その物語の場所は、何処かにあるはずだ……それは、見たいと願わない限り、見ることの出来ない世界なのかも知れない。

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