『夢を探して』 [8] 妖精の城
城は、ほとんど権力の象徴だという。
中には、ルードヴィッヒのように、夢物語を現実にしたくて、夢現実だけのために創られたものもある。それらは、他の城と比べて何か違う美しさを感じる。冷たい感じの権力だけを見せつけるための城ではなく、誰もがひとつは心に持ちたいと願ってやまない夢の城である。若き王は、狂気だと言われたが、本当のことは、城を写す湖と森の自然だけが知っている。
何だか、解るような気がする。夢を見て、惹かれるように再びそこへ行かずにはいられなかった、その思いは何処から湧いてくるのだろう。遠くで見ていると美しい、しかし近づいてはいけない。近づきすぎると見えなくなってしまう美しさがある。近づきすぎると隠れてしまう美しさがあるのは確かだ。
誰も住んでいないように見えるけれど、目には見えないだけかも知れない。
妖精の城なのかも知れない。