本が印象的な映画 | BOOKS | 12Months Movie
その月に合わせたモチーフが印象的な映画を、映画好きのイラストレーター3人が12ヶ月間に渡ってご紹介する12Months Movie!
秋を迎えつつある今月は、本が印象的な作品をご紹介します。
アメリカン・アニマルズ(2018)
監督 / バート・レイトン
丸ゐまん丸 : 4人の大学生が2004年に実際に起こしたビンテージ本強奪窃盗事件を映画化。ケンタッキー州で大学生活を送るウォーレンと、画家志望のスペンサー。2人は大学図書館に保管されている時価1200万ドルを超えるジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集「アメリカの鳥類」を盗み出す計画を思いつく。友人でFBIを目指す秀才エリック、実業家として成功を収めていたチャズに声をかけ、「レザボア・ドッグス」「オーシャンズ11」などの犯罪映画を参考に作戦を練る。作戦決行日、特殊メイクで老人の姿に変装した4人は図書館へと足を踏み入れるが……。
オレンジバックの中、渋くこちら側に歩いてくる4人のビジュアルポスター。それぞれ鳥の頭がコラージュされている……。なんだこのカッコ良さは!これはクールなケイパームービー(強奪もの)が観れる!!と、胸踊ったのは今でも覚えている。この映画、アートディレクションが突出してカッコいい。しかしながら、そんな見た目も全て、彼らのずさんさ、情けなさの落差を強調する前振りだった。
彼らが狙うB0サイズくらいの巨大な本「アメリカの鳥類」の重厚さは圧巻。飛び立てないどころか、落下していく彼ら自身を象徴していたのかもしれない。そして、あ、この映画、普通じゃない……そっちの話か!と、なってから登場する「ある人物たち」の独白によって、寓話ではなく、自分とも地続きの話になって脳に刷り込まれる、今までにない映画体験を味わえた。自ら取材して作りあげたバート・レイトンの作品はこれからもチェックしていきたいです。
Eika : まるちゃんに説明してもらうまで、4人にコードネームがつけられていることを忘れていました笑 まさに作戦決行のシーンは超〜イヤな汗をかきました。人間ってまったくやりたくもないことを、不思議な理由をつけてしてしまうんだなとしみじみ思うね。
yuki : かつてこれほどまでに先が読めるのにヒヤヒヤ・ドギマギさせられた映画があっただろうか…。ビクッとはなるけどホラー映画にそこまで怯えない私が、めちゃくちゃ手に汗握りました。笑 ドキュメンタリーとしても映像かっこよくてニクいよね。笑
ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜(2011)
監督 / テイト・テイラー
yuki : ミシシッピー州ジャクソン。ライターを夢見るスキーター(エマ・ストーン)は、大学を卒業して故郷に戻ってすぐに、新聞社で小さいけれど執筆の仕事も決まって順風満帆!と思いきや、久しぶりに会った友人たちはみんな結婚や出産をしていて、スキーターは行き遅れ女扱い。しかし、家事も育児も『ヘルプ 』と呼ばれる黒人メイドの女性にまかせっきりで、横柄な態度を取っている彼女たちに、スキーターは違和感を感じ始める。
中でも友人のヒリー(ブライス・ダラス・ハワード )は、黒人と同じトイレを使うと病気がうつるという迷信を信じ込んでいて、『白人の家に黒人専用のトイレを作ることを義務にしてみせる!』と意気込んでいた。実家の黒人メイドのコンスタンティン(シシリー・タイソン)に実の親以上の愛情を注いで育ててもらったスキーターは、この不平等で誤った現状を世の中に伝える必要があると感じ、 黒人メイドたちの『心の声』を聞いて、 1冊の本を作るためにインタビューを始めるが…
1960年代、今よりもっと人種差別が横行していたアメリカ南部を舞台に、人権なく働く黒人メイドたちの物語…なんですが、全体的にはコミカルで、笑いあり・怒りあり・涙ありな映画です!白人に逆らうと仕事ばかりでなく命も危ない地域で働く、オクタヴィア・スペンサー演じるミニー・ジャクソンと、ヴィオラ・デイヴィス演じるエイビリーン・クラークの黒人メイドコンビが、どんな時も根っこにある明るさと心の強さがにじみ出ていて映画全体を暗くさせないし、何よりミニーのパワフルすぎる仕返しは爆笑必至!!笑 ブライス・ダラス・ハワード演じる嫌〜なヒステリー女のヒリーがめちゃくちゃムカつくんだけど、過剰な演技についつい笑ってしまいます。物語の主軸はスキーターですが、色々な登場人物が交差していくので連作短編集を読み終えたような楽しさも感じました!
でも、私はヒリーは差別してるというよりは病気がうつると本当に信じて行動しているんじゃないかと思っていて、例えば今、コロナで迷信が流れたとして、自分は同じように感染者を差別してしまわないだろうかとか、何かを信じて行動することで人を傷つけていないか、ということを考えてしまいました。もちろんヒリーの行為が許されるわけではないけど、この物語の中で一番の怖いのは、まわりに流されて自分で判断できてないキャラクターたち。日本だから差別は関係ない、ではなく、正しいことを自分で考えられる人間でありたいなと改めて考えさせてくれる映画でした。
丸ゐまん丸 : 公民権運動さなかの1960年代前半の南部、想起したのは「グリーンブック」(2018)でした。病気が感染る、だなんて迷信を信じ込んでいる人達や、黒人専用トイレを描いていることも共通している(フライドチキンも)。ラストカット、エイビリーンが右上(未来)に登るように歩いていく姿に号泣。素晴らしい。一方、ある人物が『The Help』を読んで絶叫するシーンに腹抱えて笑ったりと、大ヒットもうなずける幅広さ。観るきっかけをくれたユキちゃんに感謝です!人種問題が改めて問われている今こそ、そしてこれからも観られ続けてほしい作品です。
Eika:エマ・ストーンは勇敢な役がすごく似合うね。関わった全員に命の危険があるプロジェクトだっただろうに、ものすごくハラハラしながら観ました。子どもというのは未来そのものなんだなとも思いました…ところで私の大好きなピッチ・パーフェクトシリーズのアナ・キャンプも出ていてオッとなったよ〜!
ハーフ・オブ・イット : 面白いのはこれから(2020)
監督 / アリス・ウー
Eika : 舞台はスクアミッシュという架空のアメリカの田舎町。リーア・ルイスが演じる中国系の女子高生エリーはその頭脳を生かし、アルバイト代わりにクラスメイトたちのレポート代行業でお小遣いを稼いでいた。繁盛はしていたけれど彼女には友人らしい存在はおらず、同じくアメリカでの暮らしに馴染めずままにいる父親と二人で静かに暮らしていた。
そんな彼女に、ダニエル・ディーマー演じる同級生のポールから新しい依頼が舞い込んできた。なんとラブレターの代筆だった。彼が思いを寄せるのは学年でも注目の的のアレクシス・レミール演じるアスター。実はエリーも彼女のことが気になっていたのだが、しぶしぶこの依頼を引き受けることでいろんなことが面白くなっていく。
今年の5月にネットフリックスで配信されたばかりの今作。女子二人のインテリっぷりと、ポールの底抜けに明るい振る舞いの化学反応が面白くてかわいい 。田舎の閉塞感にうんざりしながらいろんなことを諦めていたエリーとアスターが、好きな本(カズオイシグロの『日の名残り』)が一緒というところから始まり、ラブレターをきっかけに今までの時間を埋めるようにお互いの気持ちを打ち明け合う様子(しかし一人は相手を全くの別人と思っている)がとてもフレッシュに描かれる。
エリーとアスターはまさに"ブックスマート"な二人なのだけど、特にエリーが、こんな田舎にいて何が楽しいのと決めつけていた代表のような人間であるポールの気持ちや人柄を、初めての友情を通して学ぶ展開に胸が熱くなる。
そしてポールもまた、純粋であるがために今まで考えたことなかった人間の複雑さにも触れ、悩みながら成長する。そんな彼にはエリーとアスターが好きな本を、「難しいけど読み始めたよ」と打ち明けることのできる天性の軽やかさがある。彼は本当に泣けてくるほど優しい… みんながみんな、自分とは違う誰かのことを知ってまた新しい世界へと踏み出していく、みずみずしい青春グラフィティ。(壁画シーンもうっとりするほどイイ)
yuki : 今年のヒューマンドラマ映画で上位に好きな映画!えいかちゃんに相関図描いてもらえて嬉しい^^ 今まで観たことあるような題材にも関わらず、現代らしさをうまく取り入れていてすごく好きな脚本だった。面白いのはこれから!邦題つけた方に拍手!
丸ゐまん丸 : 僕の好きなラジオでも大絶賛で何度も話題に出てくる傑作!というのは分かってるんです……ネトフリから一時離脱中の身としては考えを改めざるおえないくらい観たくなるイラスト!レンタルやんないかな……
本の映画、いかがでしたでしょうか?よかったらコメント欄でオススメの本映画も教えてください!
そして4月から始まった12Months Movieも早くも折り返し!10月はコスチュームが印象的な映画をご紹介します!
12日の更新をお楽しみに〜!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?