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手紙が印象的な映画 | MARCH | 12Months Movie

2020年4月にスタートした12Months Movieもついに12ヶ月目!ラストは出会いと別れの3月にふさわしく「手紙」の映画をご紹介します。


ジョン・F・ドノヴァンの死と生 (2019)

監督 / グザヴィエ・ドラン

丸ゐまん丸 : 2006年ニューヨーク。人気俳優ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が29歳の若さでこの世を去る。自殺か事故か、あるいは事件か。死の真相はロンドンの11才の子役ルパート・ターナー(ジェイコブ・トレンブレイ)が握っていた。
10年の時が流れ、若手人気俳優に成長したルパートはジョンと交わしていた100通以上の手紙を1冊の本として出版。さらにジャーナリストのオードリー(タンディ・ニュートン)の取材を受け、すべてを明らかにすると宣言するのだが……。


ストーリーは至ってシンプル。なのに観る人間によって捉え方が異なる、掘るほど混乱してくるタイプで、言語化が大変むずかしい作品だけれど、1年通した12MMの最後に、この作品を再解釈してイラストを描きたいと思った。


大人になったルパートが回想する形のミステリードラマであり、ジョンとルパート、それぞれが直面する社会的マイノリティ、メディアの暴力、母親との確執が描かれ、孤独な二人を「手紙」が繋いでいく。

監督のグザヴィエ・ドラン自身がレオナルド・ディカプリオにファンレターを送った経験が元になっている今作は、リアリティと寓話が圧倒的バランスで共存していると思う。これは実際に演じた俳優陣も感じていたらしく、キット・ハリントンはあまりに共通点が多いジョンに取り込まれないよう、敢えて深く考えず、距離をとって演じたそう。

・リアリティ
ジョン、ルパートが俳優、ルパートの母・サム(ナタリー・ポートマン)も元俳優という設定。現実世界でも人気俳優である3人が、記者に追いかけられたり、孤独に思い詰めるなるシーンは、現実の彼らの姿を見ているかのような錯覚に陥る。

・寓話
あくまでルパートの視点と、(おそらく)手紙で伝えられたジョンの視点「のみ」で構成されており、実はすべてが虚構であってもおかしくはない。ジョンも本当のことを書いているのかもわからない。事実なのは「手紙がある」だけ。


実は観客に一番近い立場なのは、ルパートに取材する記者・オードリーなのだと思う。「いけすかないセレブの与太話をなぜ私が……」と最初は高をくくっている彼女も、ルパートの話に徐々に引き込まれ、最後には彼の笑顔を幸あれと見送っていく立場になる。彼の話が事実か否かは、重要ではない。


これほど人間を繊細に描いた作品に、人生であと何本巡り逢えるだろう。わずか25〜6歳でこの作品を作ったドランはとんでもない人だと思う。胸にずっしりと残るものが得られる作品なので、ぜひ観て欲しいです。

yuki : 予告で想像していた印象と少し違ったというのが、正直な感想なのですが、誰にも言えないモヤモヤを、第三者になら伝えられる感覚ならわかるなぁ。言うよりも書く方が、心が整理されていく感じ。まるさんのふわふわとしたイラストが映画のイメージにあってるねぇ。
Eika : 公開時がちょうどパンデミックの始まり頃で、見逃していた作品…。あらすじを見てみたら、ドラン自身が幼いころにレオナルド・ディカプリオに手紙を送っていたころの事からアイディアが始まったと書いてあってさらに興味がわきました。みんなも憧れの人に手紙って出したことある?手紙ってミステリアスな演出にもぴったりだよね


PK ピーケイ(2014)

監督 / ラージクマール・ヒラーニ

yuki : ベルギーに留学中のインド人・ジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、パキスタン人のサルファラーズ(スシャント・シン・ラージプート)と出会って恋に落ちる。2人は束の間の楽しいひと時を過ごしていたが、ジャグーはサルファラーズのことを家族に話すと、国と宗教の違いから猛反対されて、父が熱心に信仰している導師に、「彼は裏切るだろう」と預言されてしまう。ジャグーは、預言が嘘だと証明するため、「明日結婚しよう」とサルファラーズと半ば強引に約束するが、当日、サルファラーズは訪れず、代わりに少年から手紙を渡されるのだった…。
ジャグーはインドへ戻ってテレビ記者の仕事に励む中、ネタになりそうな変な男・PK(アーミル・カーン)と出会って…

インド映画といえばアーミル・カーン!多様な宗教や文化背景があるインドで、タブーとされるような題材をコメディにしてしまうなんて、主演からプロデューサーをこなす本物のエンターテイナーにしかできないことだなぁと、どの作品を観ても感じます。

PKは宇宙船から地球に降り立ち、アクシデントで自分の星に帰れなくなってしまった宇宙人なのですが、最初は人間の言葉もわからないので、"常識"なんて知ったこっちゃなくて。私たちが普段、おかしいとは気付きつつも、疑問をぶつけたりしないことにド直球で立ち向かっていきます。その異端な行動が、アーミル・カーンの演技によってめちゃくちゃ面白いんですが、ハッとすることがとても多い映画なので、普段インド映画を観ない方にもぜひ観て欲しい1本です。

この映画における『手紙』は、いくつか印象的なシーンがあるので、ぜひ映画を観ていただきたいのですが、「神様が見つからない!」と配っているビラも、『届け先のない手紙』だと私は感じました。メールは届け先がないとエラーが返ってきて誰にも届きませんが、『手紙』は実体があるのでどこかの誰かの手には届く。今、手紙を書く機会ってなかなかないですが、メールとは違う特別なものだと改めて思いました。

Eika : チャームが爆発!アーミル・カーン。劇中、一度もまばたきをしなかったそうだよ。でも本当に地球を初めて見るかのような様相がすばらしい!劇場で上映したころに観たので忘れていたけど、そういえば物語の始まりは手紙からだったね。その冒頭から地球を知らない宇宙人が「探しもの」をするところから辿りつく先までのあらすじが秀逸だと思う。
丸ゐまん丸 : yukiちゃんの射程範囲の広さは花京院(ジョジョ)並だな〜!ラストはインド映画!『きっと、うまくいく』『シークレット・スーパースター』のアーミル・カーンなら面白いに決まってる……のに見逃していた自分を恥じます。地元でレンタル取り扱いがなく、範囲内で配信レンタルもなかったので、いずれ必ず観たいと思わせるイラストです!


ブルックリン (2015)

監督 / ジョン・クローリー

Eika : 1950年代。アイルランドの田舎町で暮らすシアーシャ・ローナン演じるエイリシュ。閉鎖的な環境で暮らす彼女をなんとかしたいという思いで、姉のローズはエイリシュのために彼女をニューヨークで働かせる機会を用意する。家族との別れを悲しみながらも、エイリシュは期待を胸いっぱいに単身アメリカへ渡る。そこでまず彼女を待っていたのは、周りと馴染めない寮生活(クセの強い女子たち、笑い方に注目!)や、うまくできない仕事、そしてじわじわと彼女の中に広がる孤独感だった。エイリシュはホームシックに陥りながらも、この新しい土地で自分の居場所を自らの手で作り上げていく。

時代も事情も何もかもが違うけれど、この映画を観ながら思い出したのは、私自身もニューヨークに留学した当時のこと。私が出発する日に母が渡してくれた手紙を、何度も読み返してはその度にワンワン泣いていたので、色んな場所でエイリシュがローズから届く手紙を目に涙をいっぱいためながら繰り返す読むシーンには非常にシンパシーを感じました。エイリシュのアメリカへ移る覚悟と私のような留学では大分ワケが違うのだけれど、やはりあの街には、どれだけさみしくて踏ん張ろうという気持ちにさせられる。それは誰にとっても変わらないもなのだなと改めて思いました。
姉と交換する手紙だけではなく、人々の気持ちの通い合いと同時にすれ違いにも手紙が非常に上手く使われます。手紙しか連絡手段が無いこの時代ならではの演出、とってもイイ。それにしても強く、しなやかに成長していく主人公には20代を迎えたばかりのシアーシャ・ローナンのキャスティングがぴったり。ラストの彼女のモノローグが忘れられない。人生の端々で思い出したいくらい、だいすき。

丸ゐまん丸 : ファーストカットでエイリシュが扉から出てくる美しいシーンで「彼女が挑戦し続ける映画なのだろうな」と思い、なぜか号泣してしまいました(弱すぎる)。今やメールやLINEですぐに連絡は取れるけど、手紙しか連絡手段がない時代でのやりとりに心を鷲掴みにされ、揺さぶられます。観賞後はめちゃくちゃ疲れました。家族に会いたくなる名作。
yuki : 私はずっと幼なじみだらけの地元に住んでいたので、故郷を離れる寂しさにうまく共感できなかったけど、衣装がとても可愛くて、アメリカに移ってからの心境の変化がファッションに出ているのが良かったなぁ。今回見返せなかったので、一人暮らしを歴が長くなった今、改めて観たい。


いかがでしたでしょうか?

1年間続けてきた12Months Movieも今月で一区切りです。
世の中の状況が目まぐるしく変わる中、互いのイラストや、みなさんの反応に鼓舞されてきました。読んで、応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました!

次は何をしようか、あるいはしないのか…。毎度ワイワイと映画話をしている私たちにもまだ分かりません。

ひとまずは、個々に絵を描いていきます。よろしければ、引き続き見守っていただけましたらさいわいです。
それでは、また!

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