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ドイツの大学のコンピュータサイエンス学部の選考プロセスと合否について(前半)

こんにちは。前回の記事では、『ドイツの大学のコンピュータサイエンス学部の選び方』についていくつかの軸をお伝えしましたが、今回は私が実際に出願した各校の選考プロセスと私自身の合否結果などについてまとめてみようと思います。

簡易的な私のバックグラウンド

自己紹介は酢豚の中にしれっと紛れ込んでいるパイナップルくらい苦手なのですが、以下の2つの理由から簡単に記載することにしました。1つは出願者の属性によって大学側に提出する書類や受験のプロセスが異なるからです。以下、それぞれの大学に提出した書類等を記載しますが、それはあくまでも私のケースです。同じような経歴の方はおそらく同様の書類を提出すれば良いでしょうが(ただし出願時にはご自身で改めてご確認ください)、高校を卒業したばかりの方や日本の大学を中退してドイツの大学への編入を考えている方には必ずしも当てはまらないのでご注意ください。2つ目は私の合否結果と私の属性、みなさん個々人の属性を照らし合わせた時に、肌感覚でなんとなくの合格ラインを掴めると思ったからです。今回落ちた大学の審査は主に学業成績をもとに行われます。私個人のサンプルを一つだけ提示したところで大した情報にならないとは思いますが、ゼロよりいいと思うので載せておきます。

日本生まれ日本育ち

日本の普通科高校卒業

日本の4年制大学卒業(非CS学部・留学経験なし・GPA3.1(ドイツ換算→2.3))

会社員5年

2021年10月渡独


出願した大学について(4/8校)

今回は、記事が長くなってしまうので出願した大学のうち前半の4校についてまとめます。ドイツ留学について検討し始めたばかりの人にとってはところどころ馴染みのない用語が出てくるかもしれませんが、それらはInformatikに限らず、ドイツの大学に出願する際に使われる一般的な用語です。本記事では解説を省きますが、それらの用語について詳しくまとめている記事はネット上にたくさんあるので是非そちらをご参照ください。また、記載している提出書類は基本的に全て「出願」の為の書類です。どこの大学も出願と入学のプロセスは別れている為、入学時にはまた別途書類を提出する必要がありますが、アーヘン工科大学のような例外を除いて大半は出願時に提出した書類の認証コピーや健康保険の証明書を提出することになります。また、私の場合は全ての大学に共通して、センター試験の結果、高校の成績は提示不要でした。

それでは順番にいきます。


1.Technische Universität Dresden(ドレスデン工科大学)

入学制限:NC frei
出願方法:uni-assist経由
DoSV:なし / VPD:なし
提出書類(uni-assistにアップロード):高校卒業証明書、大学成績証明書・卒業証明書、履歴書、ドイツ語能力(C1)証明書、パスポートコピー
合否結果:合格

ドレスデン工科大学の出願開始時期は他の大学よりも2ヶ月ほど早く、4月1日から受け付けています。書類の提出は全てUni-Assist経由で行います。必要書類一覧に「場合によってはHochschulaufnahmeprüfungの証明書も必要」と書いてありましたが私の場合は不要でした。大学のホームページは特段見やすいという訳ではありませんが、最低限必要な情報はきちんとまとめられていたので、特に苦労なく手続きを進められました。


2.Universität des Saarlandes(ザールランド大学)

入学制限:NC frei
DoSV:なし / VPD:あり
出願方法:大学の出願ポータル
提出書類(VPD審査のためにuni-assistに郵送):高校卒業証明書(認証コピー)、大学成績証明書・卒業証明書(認証コピー)
合否結果:取り止め

この大学にはVPDを提出する必要があるため、大学の出願ポータルから申し込みをする前に事前にuni-assistに上記書類を提出してVPDを発行してもらいます。VPDを取得後ようやく自分で大学のオンラインポータルから正式に出願できるようになります。私はVPDを取得した段階で出願を取りやめてしまったので、後続のポータルでの出願プロセスについてはわかりません。


3.Technische Universität Darmstadt(ダルムシュタット工科大学)

入学制限:NC frei
DoSV:なし / VPD:なし
出願方法:大学独自のポータル
提出書類(大学に直接郵送):高校卒業証明書(認証コピー)、大学成績証明書・卒業証明書(認証コピー)、ドイツ語能力(C1)証明書(認証コピー)
提出書類(大学のポータルからアップロード):上記書類一式、パスポートコピー
合否結果:合格

ダルムシュタット工科大学へはuni-assistを経由せず大学独自のポータルから直接出願します。ただ、ここの出願ポータルは少し癖があり苦労しました。まず、入力しなくてはいけない情報量ですが、体感では他の大学の2,3倍あり、入力一覧画面にカテゴリごとに約20個のリンクが埋め込まれています。入力する際には一つ一つリンクをクリックして画面遷移し、情報を入力して保存し、そしてまた元のページに戻ってという作業を繰り返していく必要があります。これだけでも大変そうな印象を受けると思いますが、さらに残念なことに時間帯に関わらず、サーバーの処理がかなり遅いのです。あまりにも遅いので一度レスポンスの時間を計測してみたことがあるのですが、画面遷移をするだけで40秒もかかっていました。なぜこんなにも処理が遅いのかは疑問です。表向きはNC freiとなっていますが、やっている途中から「もしかしたらこれは忍耐力を試されていて、耐えることが出来た者だけが入学許可を得られるという設定なのかもしれない」とさながら○ンター×○ンターの裏試験を受けている気分にさえなるので、それを楽しめる方なら苦にはならないかもしれません。また、書いてある言葉の定義や入力の仕方がよくわからない箇所がいくつかあったので、それについても何回か大学の担当者に確認するやりとりが発生しました。

他の大学(uni-assist経由でVPDを自ら取得しなければならない大学は除く)は全て、出願手続き時にはオンラインで書類原本をアップロードして、入学手続きの際に各書類の認証コピーを郵送する流れになっていましたが、この大学だけは、出願の段階で各書類の認証コピーを直接大学に郵送する必要があります。また、私は参加していませんが、入学前の説明会案内やMathematikとInformatikのプレコースのお知らせも頻繁に来ていたので新入生のサポートはしっかりしている印象を受けました。


4.Technische Universität Berlin(ベルリン工科大学)

入学制限:NC
DoSV:基本的になし(定員に空きがでた場合のみ発動)/VPD:なし
提出書類(uni-assistにアップロード):高校卒業証明書、大学成績証明書・卒業証明書、ドイツ語能力証明書(C1)、パスポートコピー
合否結果:不合格

8月中旬になっても結果が来なかったので途中から落ちたなと薄々思っていましたが、案の定不合格でした。この大学の場合、定員400人のうちEU域外の国籍保持者に割り当てられる定数は32で、さらにそのうち半数はベルリン工科大学のStudienkollegの卒業生に割り当てられます。なのでEU域外の高校、大学を卒業してそのまま出願する人にとっては結構狭き門だと思います。実際、今回は定員32に対して323の応募があったようなので、Studienkolleg生の枠を差し引く前でも倍率は10倍を超えることになります。そのことは合格者の最低成績にも現れていて、EU国籍保持者の入学ボーダーラインの成績が1.9であるのに対してその他外国人枠の入学ボーダーラインは1.3でした。ちなみに私のドイツ換算成績2.3はそのうち257位で、全くもって箸にも棒にもソーセージにも引っかかりませんでした。

大学のWebサイトは今回出願した9校の中では一番見やすくてスッキリしていた印象です。ただ、学部の出願サイト上には「いかなる場合も不備は認めない」や「出願に関する全ての責任はあなたにある」という注意書きが至るところにあり、出願時の誓約書の内容も他の大学よりガチガチに書かれていました。

また、ベルリン工科大学の自然科学系の学部に出願した学生は、8月1日から9月30まで開講される「Early Bird」というオンラインコースに抽選で参加することができます。応募の締め切りが7月後半までなので合否結果が出る前に申し込む必要があるのですが、受講している最中に万が一私のように不合格通知を受け取ったとしても最後まで受講を継続することができます。「Early Bird」について簡単に説明すると、本来、入学後最初のセメスターで履修することになる「解析学と線形代数」の授業+期末試験をSemesterferien中に実施してしまおうというコースです。他の大学でも入学前のプレコースを提供しているところはありますが、この大学のすごいところは高校数学の復習や大学数学の準備ではなく、入学前にいきなり大学のモジュールを履修することができる点です。もちろん合格すれば入学後に単位認定されますし、他の大学に行くことになった場合でも然るべき事務処理をすれば入学先の大学でも単位認定することができるようです。また、このコース内であれば仮に期末試験に落ちても「落第」と見做されないため、気軽に試験を受けることができます。ただし、授業は本来の倍以上のスピードで進み、3日に2回のペースで個別課題とグループ課題があるようなハードな内容なので、コース紹介のページにはきちんと以下の事が要求事項として記載されています。

„Engagement, Ausdauer und die Bereitschaft, sich gut zwei Monate lang intensiv (täglich ca. 8 Stunden und ohne Urlaub) mit Mathematik zu beschäftigen. “
訳すと『積極参加、忍耐力、そして毎日8時間休暇なしで2ヶ月間数学に取り組むこと』との事です。思わずドイツ連邦軍のサマーキャンプに間違えて応募してしまったかと思うほど刺激的です。

出典:bundeswehr.de

私は他の大学のプレコースに参加する都合上9月上旬でやめてしまいましたが、このコース自体には参加してよかったと思っています。まず、講義はビデオ配信の形式で行われ、早いうちから教授の喋るスピードに慣れることができます。ドイツ語試験のHörenと比べて大学教授の話すスピードはかなり早いのですが、何回でも繰り返し再生することができるので聞き取りの良い練習になります。また、ドイツ語で数学の用語を覚えることができるという点もかなり大きな利点です。いくらドイツ語の試験をクリアしても最初は全然数学用語がわからないと思うのですが、このコースを進めていく中で自然にそれらを身につけることができます。私の場合は、後述するミュンヘン工科大学の筆記試験の時にここで学んだ知識がかなり役に立ちました。さらに、入学前から交友関係を作れることも大きな利点で、課題グループは大体4人で構成されて、週1,2回はオンラインでミーティングをして話し合ったりするので自然と距離も近くなります。


今回はここまでです。

残りのフンボルト大学ベルリン、ベルリン自由大学、アーヘン工科大学、ミュンヘン工科大学については次回の後半編でまとめようと思います。

それではまた!

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