グレられなかったよ①
わりと自由に生きてきた方だ。
僕が中二の頃、母は突然家を出た。
栃木でレゲエラップをしながら食っていくと言い放ち、消えた。
唐突に訪れた3人家族の幕引きにより、父との二人暮らしが始まるわけだが
父は半導体製造装置の営業をしており
当時は出張が多く、土日しか家に帰らない事もよくあった。
とはいえ幸いにも、毎週1万円は置いて出て行ってくれるので当然食べるにも友達付き合いにも何一つ不自由はなかった。
高校の頃になると、友達が家に遊びに来る事も多くなりその度にピザのデリバリーを頼んだり、ニコニコ生配信をしたり、好きなロックバンドを真似たりと、到底実家では行えない所業を、まあやりたい放題だった。
ただ、タバコを吸ったり酒を飲んだり、ピアスを開けたりタトゥーを入れるなどといういわゆるワルになれなかったのは、誰でも入れる規律にはやかましい私立高校に通っていたという事と、父が不快になる行動を取ってはいけないという思いが大きかった。
ある日、
僕の家の事情をよく知っている友達が
「こいつも、今日一緒にいいかな?」と
コウキを連れてきた。
瞬間、僕はわずかな不安とそれを打ち消すに値する好奇が入り混じったような感覚になったのを覚えている。
別の友達からコウキは他県の名門中学に通っていたが教師に反発し、なんと職員室に火を放ち退学になったと聞いていたからだ。
今でもそうだが僕は自分自身がアウトローになりきれない為、そんな大それた事をしでかせるヤツの思考には単純に興味があったし、ワクワクさせられてしまう節があった。
僕はコウキを歓迎した。
続く
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