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【エッセイ】わたしと彼女と遠心分離機

何十年も、昔のことだ。

大学の同級生に卒業してから、随分と経ってから会った。

彼女は、お父様が大手の会社勤めをしているような人だった。
要するに、お嬢さまだった。

お嬢さまだから、わたしと根本的に教養みたいなのが違っていた。

「綾子、クラシックバレエを見るなら、ジゼルが良いよ。ジゼルなら面白いから。」

と彼女は言った。

わたしは、
「なるほど。こういうときに、教養の差がでるんだな。」
とひどく感激し、そしてちょっとショックだった。

わたしは、その頃、クラシックバレエを見るのに興味があったけど、なぜ「ジゼル」なら面白いのかわからなかった。

今でもわからない。

その後、クラシックバレエは新国立劇場で、2回ぐらい見たりしたけど、「ジゼル」は見てないから今でも本当にその意味はわからない。

とにかく、彼女のお嬢さまらしい、お育ちの良いところがわたしは好きだった。

わたしたち女の子たちのグループは、わたし以外は皆、賢く、彼氏もいなくのんびり、のほほんとして、でもそれなりに勉強して、一生懸命生きていた。

その彼女と、大学を卒業してから、何年も経ってから、2人で会ったけど、なんだか雰囲気が変わっていた。

随分、言い方が悪いけど、荒れてる感じがした。

「綾子、男なんか信じちゃいけないよ。女だって、自分で稼いで、自分の力で生きていかないとだめだよ。」

わたしは、なんとなく、「うん。」と答えた。

彼女の言う通りなのかもしれない。

でも、今だったら、こう言うかもしれない。

「あなたは、自分が信じられないような男の人とつきあっているの?
 そんな男の人とつきあっているの?」

そして、こうも言うかもしれない。

「もっと、自分を大事にしなよ。」

わたしは、基本、昔から、好きな男の人に振り回されるような女の人は嫌いなんだ。

男の人を遠心分離機で、ブンブン振り回して、その男の人が遠くで細かく砕け散るようなそういう自分中心の恋愛をしている女の人が好きなんだ。

「男なんか遠心分離機で、ブンブン振り回せ!」

わたしは彼女と別れてから、電車の中で、「遠心分離機」とか「ブンブン」とかぶつぶつつぶやきながら、つり革につかまりながら、立っていた。

彼女とは、結局、それ以来会っていないけど、今頃はきっと笑って本来の自分を取り戻しているに違いない。

そう願って、これからわたしは、焼きそばを食べる。

夜中に食べる焼きそばは、背徳の味がして好きなんだ(^-^)

      

      


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