今日会いに行きたい!気になる土偶#103:奇異な表情と三本指/東京国立博物館
来る10月9日は、語呂合わせで「どぐうの日」。
この記念日に改めて「土偶とはいったい何か?」と問いかけた時、その答えを惑わす一つがこの土偶の存在です。
『黒駒土偶』
いったい何者ですか?
猫のようにも思えるその形相。
胸に当てる手には3本指。
高25.2㎝の大型の土偶は、右腕と下半身を失っていますが、それでもビクともしない堂々たる雰囲気を漂わせています。
大正6年に発見され、出土した地名から「黒駒土偶」と呼ばれるようになり、当時から奇異な表情と3本指の土偶として知られていました。
細く吊り上がった目と、カモメのように弧を描く眉、半開きの口は、約5000年前の山梨県に多く見られる土偶の特徴です。
それに加えて、顔にある入れ墨や腕に施されている刺突文(何かを刺したような丸い文様)が、より一層謎めいた雰囲気を醸し出しているようです。
また、他の多くの土偶が持つ「女性らしい胸」がないことも大きな特徴です。
横から見ると、耳のよう見えていたのは、中が空洞になっている三角形であることが分かります。
これは一般的な土偶の頭と同じように「髪型」を表したものなのでしょうか。
後頭部には大きな丸い空洞があり、「髪型」というより兜か何かのようにも見えてきます。
そして胴体の上に鎮座しているかのような、首から頭部。
仮面を被っているのでは?とも言われています。
また意外なほどに平たい背中にも違和感を感じます。
黒駒土偶が出土した場所は、富士山の北に位置する山中にあります。現在はここから富士山を望むことはできませんが、ひょっとすると当時はここから富士山が見えたのでしょうか。そうであるならば、「聖なる山」として縄文人の信仰を集めたことでしょう。
このあまりにも奇異な様相に、何かとてつもない大きな存在を感じるのは、そういったことが関係しているのかもしれません。
三本の指は「鳥」を表しているとも言われています。
動物のようでもあり、人間のようでもある。見れば見るほど謎が深まる…そんな土偶ではないでしょうか。
*参考資料
山梨県埋蔵文化財センター 遺跡トピックスNo.0234 御坂中丸遺跡
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