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みんなの宝物

縄文時代の遺物を求めて各地を廻っていると、
「これはいったい何だろう⁈」と首を傾げたり驚いたりと、太古の昔の不思議にたくさん出会います。

これもその一つ、粘土で出来た「足」です。
だれの足?…と、思い浮べるのはバラバラになってしまった土偶。
が、これは土偶の足ではなく縄文土器の一部でなのです。

口縁部こうえんぶに足型の付いた土器』

福島県柳津町「石生前遺跡」出土
やないず縄文館(以下同様)

これらは今から約5000年前の縄文時代中期に福島県で作られた、土器の口縁部に付いていた「足」。

形といい、指の表現といい、それぞれが「足」そのものであるように感じられる造形です。

これは両足?

こちらは土器本体の一部分が残っています。
足は土器の口縁部に沿って横向きに付いていたようです。

土器本体にも繊細な文様が施されています

同じ遺跡からは顔のついた「人面付じんめんつき土器」が出土しています。
この「顔」が付いている土器と同じように、「足」が付いた大型の土器がいくつもあったと推測できるようです。

右のパネルの写真は、「足」と「手」が向い合せに口縁部に付いた縄文土器。同じ福島県から出土しています。

土器に足や顔を付ける
いったい何のために、このようなものが作られたのでしょうか。

これらの土器は、煮炊きをするためではなく、祭祀などで祈り道具として使われたと考えられるものです。

「子どもの誕生や成長」「豊饒」などを祈るための道具の一つとして、このような装飾のついた土器が作られたと推測されています。

そしてこのような「顔」の装飾のついた土器は、
「土器を母親の胎内と見立てた」と考えられています。

それには、あたかも「出産」を表現したかのような土器の存在があります。

この山梨県から出土した土器には2つの顔があります。
上部の顔が母親で、土器の中央部にあるのが子どもと見られ、生命の誕生や安産の祈りが込められていると考えられています。

「顔面把手付深鉢」山梨県津金御所前遺跡出土
北杜市考古資料館

このように土器に付けられた「顔」は母親、「足」あるいは「手」は生まれてくる子どもを表しているのかもしれません。

「足」の付いた土器が作られた数千年前から、子どもの誕生は未来への希望であり、何よりも尊いものとされてきました。

そして彼らが祈りを捧げ、生まれた命を大切に育んできたことが、今の私たちに繋がっているのです。

©2024 のんてり
<写真&文章は著作権によって守られています>

最後までお読みくださり有難うございました。


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