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建物とモノづくりと縄文と! 会津若松のもう一つの歴史を楽しむ街歩き
電車での一人旅、
自分の好きや好奇心のままに歩きます。
今回訪れたのは福島県の会津若松市。
会津若松は言わずと知れた幕末の戊辰戦争の舞台。これまでに家族や友人と幾度か訪れ、その都度目にしていたのは「鶴ヶ城」と「赤べこ」。
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一人歩きは、立ち止まったり、ちょっと方向を替えたりと自由自在。
見えるものがいつもの何倍にも感じられます。
幕末のドラマチックな歴史から離れ、
会津ならではの生活や食、モノづくりを知る。
そんな半径約3㎞の街歩きを楽しんできました。
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一日フリーパスを使いもなすのも良さそう!
蔵のある街
まず歩き始めて気がつくのは、あちらこちらに蔵があること。
リノベーションしたカフェやショップだけでなく、普通の住宅の一部としての姿がそのまま残されています。古い蔵は倉庫や車庫として、そのまま使われることが多いようです。
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温度湿度が一定の蔵は、酒づくりや漆器、木綿、桐細工、籠編みなどが盛んなこの地域には欠かせない建物でした。人々の生業がこの街の景色を作りあげてきたのですね。
①『福西本店』
その外観を眺めるだけでなく、ここで栄えた商家の豪奢な蔵と生活の様子が見学できるのが『福西本店』です。
江戸中期約300年前から続く大商人の福西家は、その歴史の中で増築や改築を重ねた商家建築を今も保っています。
蔵を中心に部屋がつながり、最盛期には家族や従業員を含め50人以上が暮らしていたと言います。
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大正初期に建てられた黒い外壁が目を引く店蔵は、災いを祓うと言われる「黒漆喰造り」の蔵。
この黒漆喰は通常の白い漆喰に墨などのを入れ黒く仕上げる工法で、技術や費用が何倍もかかり、その黒光りした美しさに加え富の象徴でもありました。
大通りに面したこの建物の他にも、仏壇を置いている「仏間蔵」もこの黒漆喰造り。
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右:技巧を凝らした「釘隠し」
京都などから職人が長期滞在して作り上げた書院造の大広間や茶室、日本庭園はどれもこれも当主の趣味嗜好、センスの良さを感じます。いくつもの部屋を廻りながら、豪商の生活に思いを馳せる時間を過ごします。
『福西本店』https://www.fukunishi-honten.jp/
蔵造りカフェ
蔵をリノベーションしたカフェがいくつもあり、どこへ行こうか迷った末に、上記の『福西本店』の隣にあるカフェへ伺いました。
②『會津壱番館』
1階がカフェ、2階が野口英世の資料館「野口英世青春館」になっています。
野口英世が医師を志し書生として3年間を過ごした「會陽医院」は、明治17年に建てられた蔵造りの洋館で、当時そのままの姿を残し喫茶店と資料館になっています。
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大きな梁やアンティーク家具に囲まれた、ゆったりと落ち着いついた空間です。野口英世のキャラクターが描かれたカップ&ソーサーは、木の温もりと案外と相性が良いようです。
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ものづくりの源流を辿る
会津は豪雪で知られる山深い地域です。
ここで脈々と伝わってきたのが会津漆や会津木綿、籠編み、桐細工などのモノづくり。そのモノづくりの歴史を博物館で知ります。
③『福島県立博物館』
その源流を辿っていくと、約3000年前の縄文時代へと辿りつきます。
川の流域の遺跡からはこんなユニークな「人面付き土版」が出土しています。
「土版」とは、土でできた焼き物で祈りの道具とされたもの。このグルグルのほっぺたと三角形の口は、そこにいただれかがモデルでしょうか。
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縄文時代の終わり頃には、赤漆塗の土器や木製の器、草木で編んだ籠や装飾品が既に作られていました。
どれもが今でも通じる完成度の高さ、当時の技術や美的センスに驚かされます。
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時代は進み、現代へと。
縄文時代から受け継がれてきたモノづくりの一つが籠細工。籠のバリエーションの多さと美しい網目は、単なる道具ではない〝生活美〟そのもの。
草木の素材や編み方、形から、丁寧な生活や几帳面な仕事の様子が伺えます。
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これらのモノづくりの魅力は、博物館では珍しいコンセプト型のカフェでも発信されています。
④雪国ものづくり食堂『つきない』 博物館内
明るい陽ざしの温もりのある店内は、会津塗の装飾をはじめ、会津の手仕事で溢れています。
会津本郷焼のカップ&ソーサーでいただくのは、この地域ではポピュラーな「はちみつ紅茶」。小さなミルクピッチャーに入ったハチミツを注いだ紅茶は、ほんのりさっぱりとした味わい。
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会津塗りの工程がわかるように、各工程の椀が展示されています。アームチェアの座面は会津木綿。伝統を踏まえながらも、今の私たちの生活にも合うデザインが生み出されています。
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郷土料理を味わう
雪深く海から遠い会津若松は、昔から船や馬で運び込まれた乾物が貴重な食料であり、それらを使った郷土料理が数々育まれました。
⑤『渋川問屋』
海産物問屋として明治、大正、昭和と繁栄していた『渋川問屋』は、その商いを終えた後に宿を併設した会津郷土料理店となりました。
明治、大正期の趣きある建物は、多くの従業員や商人で賑わっていた面影が感じられます。
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大正時代の囲炉裏や帳場がある部屋で、初めていただく会津郷土料理。
右は「こづゆ」。冠婚葬祭やお正月に振舞われる代表的な郷土料理で、出汁は貝柱、沢山の野菜と共に豆麩が入ります。専用の会津塗の浅い椀は独特の形です。
左は棒タラ煮。他に身欠きにしんを使ったメニューなど、最近はあまり食することのなくなった乾物中心の懐かしい味。
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街中の洋館
もう一つの歴史を感じるのが、大正から昭和にかけての洋風建築。
リノベーションされ新たな活用されているものあり、一方で半分朽ちかけているものもあり、時代の移り変りともの寂しさを感じます。
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右:1階はお菓子屋さん
街歩きを終えて
この他にも、会津塗に会津木綿、籠、陶器、絵ろうそくのお店を覗いたり、脇道を進んだら偶然に木工の工房に出くわしたり、と街中をゆっくり気ままに一日歩きました。
平坦でコンパクト、危うい場所もなく、観光客も少なく、女性一人でも安心して楽しめる、まさに「ひとり歩きにピッタリな街」でした。
幕末の激動の歴史から、モノづくりの生活の歴史へとイメージが加わった会津若松。
ゆっくり、寄り道をしながら街を歩けば、違うものが見えてくる…そんなことにも気づかせてくれました。
*各所来訪の際はH.P等で開館日等をご確認ください。
最後までお読みくださり有難うございました☆彡