自然と人が織りなすアートの祭典/ 北アルプス国際芸術祭2024
冬本番一歩手前の長野県の北西部の大町市。
大自然の中で開催された「北アルプス国際芸術祭」へ、先の3連休に会期ぎりぎりで滑りこみました。
長野県大町市は富山・岐阜県に接する北アルプスに抱かれた山、湖のある田園地帯です。
古くからの神社や塩の道、黒部ダムなど人々の生活と歴史がそのままに残り、私たちが思い浮かべる「里山」そのものの風景が広がっています。
3年に1度開催する芸術祭は、国内外のアーティストによる38作品の現代アートの祭典です。
コンセプトは、『水・木・土・空 ~土地は気配であり、透明度であり、重さなのだ~』
市街地から山、湖までの全域で展開され、まちの様々な資源とアートが結びつきます。
前日の大雨から一夜明け、3,000m級の北アルプスが見渡せます。凛として澄みわたる空気、自然。あまりにも清々しく、美しい。
では、いくつかの心に響いた作品をご一緒に。
『えねるぎの庭』小内光
湧き水が流れる林の中に、詩人の言葉がつづられています。
雨上がりの空気・土の感触を踏みしめながら小径を進むと、自然と言葉が体全体に浸透していくような感覚を覚えます。
『土の泉』淺井裕介
大町エネルギー博物館の外壁に描かれた全長20m、高さ6mの巨大な壁画。この地域から集めた13種類の土を使用し、生き物や植物が描かれています。
土にこんなに豊かな色彩があることに驚きます。
『ささやきは嵐の目のなかに』
ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット
湖畔の神社の脇にある森に、約2万個の眼鏡のレンズが吊られています。湖からの風と降り注ぐ太陽の光が織りなす瞬間瞬間の輝きに、飽きることなく佇みます。
『水をあそぶ「光の劇場」』木村崇人
湖畔の古い空き家を舞台に、「あそぶこと」を通じて水と人のつながりを探るアート・プロジェクト。流木や使われなくなったスワンボートを傍らに、人と語りあいながら湖を眺める時間はとても贅沢です。
『やまのえまつり』コタケマン
広場いっぱいに広げたまっ白の大きな布に、土と水でできた絵具を投げつけたり、はだしで歩きまわったりしながら、皆で大きな絵を描くまつりのプロジェクト。
その記録が体育館いっぱいに掲げられています。まさに圧巻!
『種の民話』蠣崎誓
食からみえてくる人々の暮らしを、小さな種や葉で表現した作品。地域の食にまつわるエピソードや民話、自然との関わりがテーマになっています。
ここでいただいた「塩むすび+みそ」のシンプルなランチが、とっても贅沢に感じられました。
『Tangible Landscape』目[mé]
山頂からのぞむ北アルプスの山並みと町の風景を見るため作品。ピクチャーウィンドウから望む圧倒的な景色と、室内の雲のような真白の局面のコントラストが妙にマッチしています。
『Folding』ルデル・モー
今は役目を終えたトンネルは、100年以上前からこの町と隣町を結んでいました。地元の竹と土で出来たレリーフに光と影が融合して、かつての人々の往来を語っているように感じられます。
『時に宿る』山本基
この町は古くから信州と海を結ぶ「塩の道」が走り、千国街道の宿場町として栄えていました。塩蔵で展開される塩でできた作品は、塩と私たちとの切っても切れない関係を表しているようです。
『Library of Wooden Hearts』マリア・フェルナンダ・カルドーゾ
廃校になった高校の図書室を舞台に、杉の若木の芯4000ピースからなる彫刻が配置されています。
赤と白の木片が織りなす美しい模様が、木の生命力や一つ一つの個性を現わしています。
『すべては美しく繋がり蘇る』淺井裕介
全長150mのアーケードに続く大町名店街に現れた地上絵。地域の子どもたちと作家の共同作品。かつての賑わいを彷彿させるノスタリジック満載の散歩道。
芸術祭での気づき
土で描いたり、食物や草木を並べたり、木を組み合わせてたりと、自然の素材だけで様々な造形が生まれ、その美しさや面白さに気づかされました。
私が追い求めている縄文時代にも、もしかしたらこんな方法でアート作品がいっぱい作られていたかもしれない、と思えてきました。
そうでなければ、あの創造性溢れる縄文土器が生まれてはこなかったように感じます。
そして各地の多種多様な縄文土器は、多様な気候・風土から生まれた文化や風習によっても変化をもたらしたのかもしれません。
日常の生活で、また旅に出て、その時々に五感に感じることは唯一無二。
1万年前以上前からそれらを形にした人たちがいることで、私たちの生活が彩りあるものになっているのかもしれません。
自然とアートの祭典は、思いがけず古のアートにまで思いが及んでいきました。
参考図書
北アルプス国際芸術祭 公式ガイドブック
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最後までお読みくださり有難うございました。