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人体の不思議┃土偶のおはなし

華やかな春、気持ちも体も軽やかに!と言いたいところですが、案外と体調を崩しやすい時期でもありますね。

花粉症、寒暖差による体の冷えや自立神経の不調と、最近ではその原因も色々と分かってきて治療法や薬の選択肢も増えてきました。

さて縄文時代の人々は、と言えば…自然の中で逞しく生活していたと想像しますが、実際は私たちと同じように様々な不調を感じていたようです。

そんな当時の様子は、遺跡から出土した人骨から見ることができます。全国で見つかった縄文人の人骨は6000体以上、そこから縄文人の命や病気などが分かってきています。

縄文人はいくつまで生きた?

遺骨の平均的な死亡した年齢から推測して、平均寿命は男女共にだいたい30歳ぐらいだと考えられています。
なんて短命だったの!と思いますが、主に子どもの死亡率が高かったことが影響しているようで、60歳ほどの縄文人の骨も見つかっていることから、中には長生きした人もいるようです。
因みに100年程前の大正時代でも、10歳までに約25%が死亡していたそうです。

病気にかかっていた縄文人

虫歯、骨折、リュウマチ、ポリオ、関節症、頭蓋骨にがん…今と同じように色々な病気があったことが分かっています。
骨折の痕、がんによる癒着の痕、ポリオによって背中が曲がった痕なども、骨に表れています。

縄文時代後期(今から4,000~3,000年前)の北海道洞爺湖町の入江貝塚では、ポリオにかかったとされる人骨が発見され、その後の調査によって新たな事実も見えてきたようです。

昭和42年頃に出土したポリオにかかったとされる遺骨は、頭の大きさに比べて手足の骨が極端に細く、寝たきりの状態で20歳頃まで成長したと考えられてきました。
頭が細いことから女性とみられていましたが、国立科学博物館の研究者による近年のDNA分析で男性と判明し、男性に多い筋ジストロフィーの可能性も指摘されています。

サンケイ新聞より一部抜粋

また東京大学博物館で過去に発表された事例では、一つの竪穴住居内で折り重なるようにして発見された5人の人骨を調べたところ、食中毒や感染症による突然死だった可能性も考えられています。

この様に縄文人も今と変わりなく様々な病気に悩まされていたようです。
また多くの子どもが亡くなることは、不可解で恐ろしいことであったのではないでしょうか。
当時の有効な手立ては…薬草を用いたり、呪術的な医療行為を受ける以外にはなかったと思われます。

そうは言っても私たちとさほど変わらない縄文人たちの生活の工夫や想像力を考えると、人体の仕組みを知りたい、解明したい!と思ったかもしれません。
そしてあたかもその思いを表したかのような土偶たちがいます。


食べて排出する…一番分かりやすいシステムである消化器官。
土偶の胴体の上から下まで貫通した穴が作られています。

橿原考古学研究所附属博物館



このぐるりとしたのは腸でしょうか。
動物を捌いたりする中で、こういった仕組みが人間にもあると思ったのかもしれませんね。

北杜市考古資料館・山梨県大久保(白須)遺跡



臍の穴が胴の上まで繋がっているようです。
何かと何かが繋がっている…ということを表したのかもしれません。
膝にある穴は何でしょうか。

是川縄文館・風張1遺跡



妊娠・出産から、女性のからだの仕組みに不思議を感じていたことでしょう。

東京大学博物館


前述の北海道のポリオ(筋ジストロフィー)にかかったとされる寝たきりの人が〝20歳まで生きた〟ということは、長期間に渡る介護を受けた結果であると考えられています。
動けない、働けなくても、世話をされながら生きられるということは、縄文人が命を大切にし、助け合いの精神を持っていたと考えられています。


祈りの道具である土偶に、外からは見えないこのような消化器官まで丁寧に作ったのはどうしてなのでしょうか。病気の治癒の祈りのためであったのでしょうか。


*参考資料
縄文時代史 勅使川原彰 新泉社
縄文時代の不思議と謎 山田康弘 実業之日本社



最後までお読みいただき有難うございました☆彡

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