今日会いに行きたい!気になる土偶#020笛吹市春日居郷土館
この夏は随分前から暑い日が続いているせいか、日にちの感覚が鈍くなっていましたが、気づけば7月も残り僅かです。
昨晩、「このままでは暑中見舞いのお便りを出しそびれてしまう!」と急に焦り出した私は、一気に3通の暑中見舞い状を書きました。
文字を書くのがあまり得意ではないので、普段はメールやラインを有難く使っていますが、「昔お世話になった高齢の方にはお葉書を」との思いから書き始めますが、散々下書きをしたにも関わらず、書き損じを2枚も出してしまうという惨憺たる状況。
気持ちも体もぐったり、という、夏の恒例行事となっています。
そんな私と同じように、ガチガチに固まった肩を自分で揉んでいるかのような土偶がいます。
かたこり土偶
縄文時代中期前半のポーズ土偶と言われる、その名のとおりにポーズをとっている土偶の一種です。
顔は欠けてしまっていますが、胸から下が膨らんでいるようであることから、妊婦さんが自らの肩を揉んでいる様子を表現していると考えられています。
上から見ると首の真ん中に穴が開いていますが、この土偶は芯棒接合式と言われる方法で作られ、穴はその跡であると考えられます。
芯棒接合式とは、頭、胴、手足などをパーツ毎に作って、木や竹の棒でそれらを接合して人形にした後、火で焼いて土偶を完成させます。
高温で焼くこととで、木や竹の芯棒は燃えてなくなってしまいますが、芯棒が通っていた跡はこのような穴として残ったと考えられます。
当然、芯棒のなくなった土偶は、パーツ毎に欠けたり、バラバラになりやすくなります。折角作ったのにそれでは意味がないのでは?と思いますが、このことは「土偶は故意に壊された」という近年注目されている故意破壊説に当てはまるのです。
故意破壊説が唱えられる根拠としては、幾つかの仮説がありますが、「病気やケガなどの回復を願い、土偶の患部を破壊する」身代わり説や、「神の殺害が食物の発生に欠かせぬ行為で、神の死体から作物が生まれる」という世界各地に見られる食物起源神話説が有力とされているようです。
つまり、この土偶の頭が欠けているのは、あえて故意に壊されたという考え方があるのです。
各地から出土される小さな土偶の多くは、壊れていたり、どこか欠けているものが殆どです。そう考えると、「土偶は破壊されるために作られた」とする故意破壊説と関係があるようにも思われます。
しかし一方では、「使用していて壊れたために捨てられた」という、土器と同じように破損したために破棄されたという考え方もあります。
その根拠には、土偶の破損の割合が土器や他の遺物と変わりないことや、縄文時代後期には、破損した部分をアスファルトで修復された土偶も見つかっていることが挙げられています。
制作方法や土偶の存在意味を含めて、いろいろな角度から様々な考え方があるようですが、それらが解明されるには、まだまだ時間がかかりそうです。
土偶が故意に壊されたかどうかは別にして、この土偶は顔が無いものの、その顔の表情までが浮かびあがるような、〝人間〟そのものを描いたようにも思えてきます。
〝肩こりをするのは2本脚で立つようになった人間だけ〟と言われているように、5,000年前の縄文人も私達と同じく、肩こりや腰痛などの体の不調を抱えていたようです。
「肩がこるわね~」なんて言いながら、時節の挨拶を交わしたり…そんな光景が見えてくるようですね。
故意破壊説に関して以下を参照
*縄文土偶ガイドブック(三上徹也著書 新泉社)
*山梨県立考古博物館 展示物
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