土器作り、あなたは得意or不得意・好きor嫌い
博物館に並ぶ何千年も前に作られた縄文土器。ため息がでるほど繊細な細工や、創造性あふれる土器が数多く見られます。が、…。
それは偶然から始まった?
最初に作られた縄文土器は、器としての役割そのものが重視されるように、何の文様もなく素地そのままでした。
ある時、縄文人はその器面を飾ることを知ることになります。
まだ乾かない土器の表面に偶然に縄が押し付けられ、縄の跡がついたのです。これが土器に文様が付いた瞬間だった、と言われています。
それを機に、土器に文様を付ける創造的な作業が加わります。
大空の光輝く月や降り注ぐ星々、遠くの神なる山、目の前を流れる川や青々した草木…脳裏に焼き付いた数々を表したい、誰かに伝えたいと思ったのかもしれません。
道具と技術と想像力と
その思いが、幾種類に編まれた縄、木のヘラ、竹管(竹を半分に裂いた棒)、貝殻、動物の骨や鳥の羽などを道具にすることに繋がります。
さらに、刺す、押し付ける・引く、転がす等々…の技法を凝らすことで、文様のバリエーションが増えていきました。
やがて紐状の粘土を貼りつけて、立体感のある装飾で土器を飾る技が生まれます。
まるで水煙が湧き上がるようなイメージの「水煙文土器」も、縄文人のイマジネーションと道具と技術の進化によって作り上げられました。
高い技術を持った芸術家・縄文人が確かにそこに存在していました。
ところがなかには、あれ?と思うもがあるのです。
誰もが名人?
ここに同じ時期、同じ遺跡で作られた2つの土器があります。それぞれの器面にはリング状の装飾が付けられています。
粘土紐で小さな輪を作って、土器の表面に貼りつけたものです。
左右を見比べると一目瞭然!
左の土器には、大雑把に作られた大きな輪がぎこちなく貼りついています。
一方右の土器には、小さく作られた輪がびっしりと。その数なんと286個!
縄文人の誰もが芸術家で、土器づくりに情熱を傾けていたわけではないようです。
得意不得意、好き嫌い…縄文人も私たちと同じように、一人ひとり違っていたのです。
縄文人も普通の人間だもの
いつも空を眺め夢見る縄文人、体を動かすのが大好きな縄文人、力自慢の縄文人、釣名人の縄文人、料理が得意な縄文人、動物の皮に針でチクチクと縫物に夢中な縄文人、おしゃべり好きな縄文人、竪穴住居でゴロゴロしている縄文人. …などなど、今と同じように、縄文人の数だけ好きがあり、嫌いがあり、得意や苦手があったはずです。
あなたや私似の縄文人も、きっとどこかにいたことでしょう。
因みに私はぶきっちょでせっかち、家でまったりしているのが好き。粘土を手にしたら、不格好な輪しか作れそうもありません…。
リングのついた2つの土器は下記で見られます。
特別展「変化する縄文土器」(釈迦堂遺跡博物館)
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