【recri体験レポ】"包まれた凱旋門"の展覧会に行ってきた
recriとはエンタメのサブスクを謳っているサービスです。個人の趣向に合わせて毎月ランダムでエンタメのチケットを送ってくれます。今回は、21_21 DESIGN SIGHT主催の「クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"」という展覧会に行ってきました。
クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門"とは
この展覧会は、「L’Arc de Triomphe, Wrapped」という布で覆われた凱旋門を誰もが自由に眺め、触れることのできる期間限定のアートを、制作背景と実現に向けた長い道のりに焦点をあて、二人の人生において貫かれたものを紐解くというものです。
二人というのは、歴史的な建造物を布で覆い隠す、大がかりなアートプロジェクトで知られるクリストとジャンヌ=クロードのことです。パリで出会って、夫婦になり、アートの共同制作者になりました。二人は「梱包するアーティスト」とも呼ばれ、都市の代表的な建造物を布で梱包する作品で有名です。
しかし、凱旋門を布で覆うプロジェクトが、二人にとって最後の作品となりました。1961年から着想をはじめ、2009年にジャンヌ=クロードが亡くなった後も、夫クリストが進めてきたが、2020年にクリストも他界。それでも、多くの賛同者によって、プロジェクトは継続され、2021年9月、60年かけた前代未聞の作品が、ついに披露されました。
スポンサーに資金を頼らず、数十億円にものぼる製作費を自ら集めるのが彼らのスタイル。国、自治体、企業との交渉や許認可も、自分たちで長い歳月をかけて行ってきました。
多くの記録画像や映像を使って、「包まれた凱旋門」の構想から実現までを、この展覧会で体験することが出来ます。
展示方法についての感想
まずは、展覧会そのものの、表現方法について記載していきます。内容以前に、展示方法に感動しました。
この展覧会では文字での説明はほとんどなく、映像と写真だけの展示となっていました。さらに、最初の方に見る映像には解説は一切なく、プロジェクトの構想段階、国や自治体との交渉風景、布/ロープの製作工程、現地での工事の様子、完成後の凱旋門の様子を順番に見ることになります。その後は、制作に関わっていた様々な人の話を聞き、凱旋門を布で覆うプロジェクトのことを深く知ることが出来るという構成になっていました。
会場に入ると、いきなり解説の無い映像を見ることになりますが、見進めるにつれて、徐々にこのプロジェクトの全体像が見えてきて、ある程度理解出来たころには、もっと深く知りたいと思うようになっており、その矢先に、制作に関わっていた様々な人の話を聞くことが出来る映像が準備されていました。
正直、凱旋門を布で覆うプロジェクトのことに知見が全然無かったので、会場に行ってから自分自身の腑に落とせるところまで理解するのに、相当時間がかかるんだろうなと思ってましたが、順路を辿るだけで大丈夫でした。
ユーザーの体験プロセスをしっかりデザインされているディレクターさんに脱帽です。
"包まれた凱旋門"についての感想
まず、公共の物(しかも世界遺産レベルの)に布を覆うというプロジェクトを、個人で国や自治体と交渉を進めていたという事実に大変感動しました。凱旋門を布で覆う際に、決して傷つけてはならない場所には、鉄骨で守るようになっていました。その工事の様子は映像で記録されていたのですが、もちろん、鉄骨を組み立てる際にも細心の注意が必要です。どのように設計すれば、組み立て時やその後もしっかり守ることが出来るのか、CGのソフトを使って、計算されている様子も映像で見ることが出来ます。内容は理解できませんが、鉄骨の設計図も展覧されていました。
布で覆うことの意義は、「隠されることによって興味を引き立てること」、とのことでした。雑誌でも、普通に掲載されているよりも、袋とじになっているときの方が興味が出て、購買意欲に繋がる。この事象と共通している真理だと思いました。
凱旋門は確かに歴史的に貴重な建造物ではありますが、その立地場所はパリの交差点の中心にあり、現地の人からすると、ドライブ中にある風景の一部となっている人もいたかと思います。そんな凱旋門を布で覆うことで、これまで興味が無かった人の気を惹かせ、改めて凱旋門のことを知ってもらうきっかけになる。布が覆われた完成作品にも多くの人が集まっていましたが、工事中にもたくさんの人が見学していた映像を見ると、マーケティングとして、相当な効果が出ていると思いました。
そんな作品も展示されている期間は、たったの2週間だけ。恒久的なものは次第に飽きられてしまうが、一時的だからこそ、価値が出る。どんなに長い準備期間があっても、そして準備に苦労しても、短い期間の展示は、クリスト氏のこだわりとのことでした。展覧の映像で、凱旋門を覆うほどの巨大な布やロープを作る、そしてそれを現地に運ぶ大変さを垣間見ているからこそ、このクリスト氏のこだわりに、深く心にクるものがありました。
このこだわりは、「”今”、この瞬間を精一杯、生きる。」それこそが、最大の幸せだということを学ばせてくれる大きな教訓になりました。
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