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【翻訳】 Swann Arlaudインタビュー抜粋:「真のコミットメントは街頭で起こる」
こちらの記事は、『L'Établi』(2023) の公開に際して行われたPolitis誌での2023年4月5日のインタビュー記事より、仏俳優のSwann Arlaud氏が自身の政治的・社会的コミットメントについての姿勢を語った箇所の翻訳記事になります。
極右化し続ける昨今の社会において、左派のコミットメントとはどうあるべきなのかについて重要な示唆が含まれています。
なお、筆者のフランス語知識は学部での第二外国語+αの程度であるため、もしも誤訳やミスリードな表現等ありましたら、ぜひとも指摘していただけると嬉しいです。
[以下本文]
Swann Arlaud: 年金改革に関して意見を述べるコラムを載せる際、自分の発言の正当性について考えます。本当に私が発言すべき立場なのかどうか、確信を持てないからです。しかし同時に、その正当性に関わらず他よりも注目を集めやすい声が存在することも確かです。そして抑圧された少数派がメディアでの発言の場を持つことができないのであれば、外側にいる誰かがその声を代弁すべきではないでしょうか?
退職制度改革に関して、私は「Libération」紙でその即時撤回を求める公開書簡に署名した300人のアーティストの一人です。しかし、多くの人々から「特権的なアーティストになにががわかるというのか。余計な口を挟むな」と批判されました。真のコミットメントは他の場所で行われるべきであることは否定しません。それは街頭 (ストリート) で起こるのです。
Q: 他方で、映画業界のこうした問題に対する無関心な態度が批判されることもあるのでは?
Swann Arlaud: はい、最初は我々の無関心な態度が批判され、あとで何か発言をすれば「特権的で現実離れ」だと批判されます。とはいえ、映画業界は個々人の集まりです。改革に対する統一的な見解を持つべき団体ではありません。ですから、私は〔映画業界が持つ〕影響力については懐疑的です。それでも何も発言しないよりかは、発言するべきなのでしょう。
Q: デモには参加していますか?
Swann Arlaud: はい。1月19日以降、すべてのデモに参加しています。ただし、私は市民として参加しており、アーティストとしてではありません。
Q: 記事の中で、現政権が民主主義を否定している点を強調していましたね
Swann Arlaud: 30年間でこれほど多くの人々が街頭に出たことはありません。その上で政府は「如何なる場合においても憲法49.3条(議会の承認なしに法律を制定できる条項)を行使することはない」と繰り返しておきながら、実際にはそれを行使しました!〔抗議活動による〕暴力は驚くべきものですが、すべてはそこから始まっており、政府が耐え難いほどに〔民衆の声を〕無視した結果なのです。この暴力の背景にあるのは、「ゴミ箱を燃やせば、聞く耳を持ってくれるのか?」という怒りなのです。
その後、黄色いベスト運動と同様に、「暴力行為が運動を失墜させる」という構図が繰り返されます。「破壊活動をするごく一部の集団」に焦点が当てられ、運動全体の信用が損なわれています。しかし、破壊活動に参加しない多くのデモ参加者はそうした行動を理解し、さらには支持していることに私は気づきました。
また同時に、社会運動が犯罪化される事態が進行しています。人々が即決裁判(comparution immédiate)にかけられ、中には実刑判決を受ける人もいます。他にも警棒で殴られ、目を失明させられたりする人もいます。それなのに、BRAV-M(治安維持部隊)は一切の責任を追求されることはありません。挙句、政治家や大臣たちは「エコテロリズム」などと揶揄するのです!そんな中でも活動家たちは公共の利益、つまりは水資源のために戦っているのです。
Q: 「エコテロリズム」「極左」「イスラム左派」……言葉は少なくとも、攻撃手段として利用されてしまっています。
49.3条を行使して以降、エマニュエル・マクロンが「改革は民主的な道を歩んでいる」と語るとき、その口から発せられる「民主的」とは一体どういう意味なのかと疑問に思わざるを得ません。彼のように法治国家や共和国を語る人々が、言葉の意味を失わせているのです。
しかも、「代替案が全く提案されていない」という彼の主張は嘘です。例えば、ある経済学者が「男女の賃金平等を実現すれば、年金のための拠出金が増加し、55億ユーロの追加財源を確保できる」と説明しているのを聞いたことがあります。
一方で、最富裕層がパンデミック以降に生み出された富の63%を独占し、銀行による巨額の不正行為が明るみに出ている中で、政府は「年金財政の赤字のためにより長く働かなければ」「インフレのために食べる量を減らさなければ」などと国民に押し付けています。スーパーマーケットでの食料品の窃盗が増加していることをご存知ですか?人々はもうとっくに限界を迎えているのです。
Q: 言葉や表象の領域でどう闘うべきなのでしょうか
それは、まさに言葉という領域で自分自身の武器を磨き上げる努力をすることです。私は自分の欠点を常に自覚しています。だからこそ読書をして自分自身を教育しています。良き市民であることは多大な努力を要します。人はその状況に立たされれば、行動を起こし、提案をするのです。気候市民会議(Convention citoyenne pour le climat)の際もそうでした。たとえ政府がその提案を無視するか、単に形式的にしか取り合わなかったとしてもです。
マクロンには、人々を「彼に反対する」という点で一致させる才能があります。
黄色いベスト運動の際にも、憲法についての議論がありました。ちなみに私個人としては、「第6共和政(sixième république)」に移行すべきという立場です。こうした〔憲法についての議論の〕動きは、政治意識の高まり、特に若い世代の間での気運の高まりを示す段階です。私の弟や妹を見てもそう感じています。彼らは私よりずっと若いですが、今まさに政治意識を持ち始めています。この点に関しては、少なくともマクロンを評価すべきでしょう。彼には「人々を彼に反対する」という一点で団結させ、社会の根幹に関わる問題に関心を持たせる才能があります!
[本文おわり]
参考:
① 同氏の左派集会での演説スピーチの翻訳はこちら