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確率的経営

こんにちは。Algomatic Global カンパニーCEOの原田(@1230yuji)です。Algomatic GlobalはDMM 動画翻訳DMM GAME翻訳を運営しており、先日はにじボイスをリリースしました。

今日はAlgomatic Globalで実践している確率的経営について書いていきたいと思います。

念の為に補足しますが、Algomaticはカンパニー別に方針を持って動いています。
このことでお互いに示し合わす必要なく意思決定スピードを上げています。
この話はあくまでAlgomatic Globalの話であり、すべてのカンパニーが同様の思想であるとは限りません。


すべての事業は顧客から始まる

新規事業を考える時、ChatGPTに聞いてみる、みたいなことやったことがある人も多いのではないでしょうか?
あるいは、同僚とあーでもない、こーでもないとブレストをしたりなどです。

僕の考えではこんなやり方で新しい事業が生まれることはないと思っています。

なぜならそこに顧客がいないからです。

世界にはたくさんの課題があって顧客と会話していればいくらでも課題を聞くことができます。

ですから、新たな事業を生み出す王道のやり方は「受託」です。

自分が課題ではないと思っていても顧客が課題といえば課題だし、自分が課題だと思っていても顧客が課題ではないといえば課題ではないのです。

ですから、全ての事業は顧客から始まります

顧客がいない場で生み出したアイデアに価値はありません。

言い換えると顧客と向き合うことをやめなければ無限に事業は生まれ続けます。

新規事業が生まれないことに悩んでいるとき、顧客との会話量が圧倒的に少ないことが原因です。

これも一つの考え方ですが、初期はスケールしない方法、つまり、受託的なやり方で顧客と向き合う時間に充てたほうがいいですし、最初はプロダクトを作るより受託プロセスの効率化や仕組み化にフォーカスを充てたほうが良いと思っています。

そう考えると最初の半年に作るものなんて大したものではないですし、受託的なやり方で進めた事業で売り上げがでないはずがないのです。

稼ごうと思ったら稼げる。
たまに聞く言葉ですが本当かよ、と思います。
それを実際に稼いで証明してから、その事業にさらに投資して伸ばす、という方が確実です。

理論上稼げることと、実際に稼げることには天と地の差があります。

生成AI領域で黒字化できない事業は可能性が低い

根本的に生成AIの領域で事業を運営するのにそれほどお金がかかるとは思いません。
残念ながらともいえますが、所詮ビッグテックに頼った事業をして、彼らが異次元の投資をする中で実現したLLMをほぼタダのようなコストで使った事業をやっていて、赤字が出ているのは本質的に間違っている可能性が高いです。
ですので、半年を目安にある程度の売り上げが出ないような事業は可能性が低いと考えています。

ちなみにAlgomatic Globalでは、儲かるなら独自モデル開発もするという方針であり、ある領域においては独自に学習データを積んで自社開発もしています。

事業の成功確率を高めるための考え方

基本的に儲かることをやるという方針を持っていれば事業の失敗確率を下げることは可能です。

起業家は「こんな世界を作りたい!」と夢を掲げて事業を立ち上げますが、だれも望んでない「ありがた迷惑な世界」を描いて失敗します。

こんな世界になるべきである、何故ならば〜〜と理路整然と説明できることには何の意味もありません。

お客様が欲しいと言ったら商売になるし、要らないものは作っても意味がありません。

不健康な食べ物ではなく、健康な食べ物を食べるべき、だから、あなたはこれを買うべき、みたいな起業家の謎の正義感を振りかざすような事業はだいたい失敗します

確率的経営とはたった一回の大勝ちが全ての失敗を癒やす経営

さて、本題からズレましたが、確率的経営とは何かを書きます。

儲かることをやる、と決めていても一定の確率で事業は失敗します。
正確に言うと「儲かることをやる」と決めても事業はほとんど立ち上がりません。
「儲かることをやる」の意識付けは、ほぼ全敗する状態からそこそこ失敗する状態に変える程度の影響しかなく、結局のところほぼ事業は失敗します。

その状態で大事なことは失敗しても死なない経営です。

確率的経営とは、100トライして99の失敗があっても1の成功が全てを癒す経営です。

VCのビジネスモデルと近いかもしれません。

100万円ずつ100社に合計1億円投資したとします。
99社失敗したら9900万円の損失です。
一方で1社がヒットして2億稼げばトータルで見たら約1億円の利益です。
1億円投資して99回失敗しても2億円になる。
これがスタートアップの世界です。

もっと不思議なことが起こるのは、同じく100万円ずつ1000社に合計10億円投資したとします。
同じく990社失敗して9.9億円の損失です。
同じく9社がヒットして18億円を稼ぐのですが、1000のトライからは1社がメガヒットして100億円稼ぐ、という状態が起こってトータル110億円の利益が出たりします。

上に書いた数字は適当な数字ですが、スタートアップではこのように限りなく引き当てることのないメガヒットがたまに生まれ、それが他のすべての失敗を潤すことがあります。

この不確実性の高い経営において大事なことは試行回数を増やすことです。

期待値として勝てるゲームだとしても引き当てる確率が1%だとするとそれを引き当てるだけの試行回数が出せなくて結局失敗することが多いです。

期待値がプラスのゲームは勝負すべきという人がいます。
しかし、たとえ期待値がプラスでも引き当てる確率が低すぎるゲームは試行回数が出せない人にとっては限りなく負けるゲームです

これに対して会社としてやるべき事は、

  • たくさんの資金源を持つ

  • 事業責任者をたくさん集める

  • たくさん事業を立ち上げる

  • たくさん事業を撤退する

です。

これをやりきれば勝てます。

このように不確実性の高いスタートアップで、試行回数をとにかく増やし、確率的に勝てる経営を仕掛けることがここでいう確率的経営です。

大事なことは撤退

確率的経営における最重要事項は撤退判断です。

1回の失敗の傷を小さくするから99回の失敗ができ、1回の大勝ちを生み出せます。

失敗の傷を大きくする最大の要因は撤退すべき時に撤退しないことです。

個人的には、会社経営という視点よりもそこに関わる起業家の才能と時間を無駄にしないために撤退判断は大事になります

起業家の才能は希少価値の高い地球の大事な資源です。

この資源の無駄遣いをすることこそが大罪です。

起業家は常に可能性を模索し続ける生き物なので自らの判断で事業撤退を意思決定することは根本的に困難です。

だから、誰かが撤退判断し、適切に殺してあげる必要があります

撤退すればその人はまた新しい挑戦を始めます。

それが起業家という生き物です。

起業家の苦悩

正直わかってる人にとっては当たり前のことを書いてきました。
VCや事業会社のやってきたことを書いてるに過ぎません。

ここからはあまり語られることの少ない起業家の苦悩について書きます。

会社としては、事業の創造と破壊のサイクルを高速化することで確率的に勝つゲームを仕掛けられますが、レースを走る馬である起業家や事業責任者の苦悩について考えているでしょうか。

先ほど記載した通り、会社側からするとポートフォリオを組んでたとえ1%であっても負けない戦いを仕掛けているので問題ないのですが、限りなく99%の失敗側に入ってしまう起業家や事業責任者の苦悩をどうマネージするのでしょうか。

99回失敗する戦場に送り出すというのは、もはや会社のために死んでくれ、と言ってるようなものです

この戦いに参戦できるのは、心臓を捧げる覚悟を持った人間か、まだ確率的経営を知らない若者しかいなくなってしまいます。

よって、この起業家の苦悩を解決することこそが確率的経営を成功させる鍵になります。

解決の鍵は、成功者が全てを持っていく勝者総取りの世界ではなく、成功したら誰かを癒し、失敗したら誰かに助けてもらえる起業家が起業家を支える仕組みのようなものが大切になると思っています

まず考え方として成功したら良い、失敗したら悪いという価値観をなくす必要があります。

1人が成功するゲームは99人の屍を積み上げるゲームとも言えます。

99人側の失敗者の果たした役割は、1人の成功者を生み出すための屍になったことです

屍の上に立つことでしか成功者は生まれないので、屍になった事自体に価値があり、屍報酬を受け取る権利があります。

その屍報酬がどこから払われるかというと、成功者が生み出した富から分配されます。

このように成功した起業家が失敗した多くの起業家を癒す経営が確率的経営を成功させるポイントになります。

大事なことはこの取り決めをゲームがスタートする前に取り決める必要があります。

もし成功したら全員に分配しよう。
失敗したら誰かに助けてもらおう。

です。

だれもが億万長者になりたいので、成功した人から奪いとることは限りなく難しいことです。
限りなく死ぬ戦いの中でまともに生きていたら引き当てることのなかったくじを引いた人にあなたが成功したのはたまたまなので分配してください、と後から言っても無理でしょう。

ですから、最初に決めます。

成功しても失敗しても取り分は一緒です。

起業家のモチベーション

では、この世界における起業家のモチベーションは何でしょうか?

この仕組みは、人生における価値観として収入よりも相対的に「自分の才能を試したい」に重きを置く人にとっては大きなメリットがあります。

この経営における横並びの起業家は利害関係を同じくする大切な仲間です。

横に並ぶ起業家が増えれば増えるほど勝率が上がります。

誰もがみんなを救うために、自分の腕を試すために、事業を立ち上げます。

理論上は期待値がプラスなので、参加者は安心して失敗できます。

経営において大事なことはこのように安心して失敗できることなのだと思います。

適切な報酬を払う

スタートアップにおいて成果報酬の名のもとに安い報酬を提示するのは事実上の詐欺であると言えます。

ここまで書いた通り99人失敗するゲームにおいて、成功した場合に払う成果報酬はほぼ払わないと言ってるに等しいことになります。

しかも、成功したときの取り分はかなり小さいものになります。

起業して100億円の会社を作ったら20%で20億円受け取る、とかになりますが、会社の中で100億の会社を作っても適当ですが2億円です。

99%成果報酬が受け取れず、1%の確率を引き当てても自分で起業する1割の報酬しか受け取れない。

というほぼ詐欺になります。

今どき可能性のある会社に投資したいVCは腐る程ありますし、国も声高にスタートアップ支援と言って資金提供する世の中で起業家は資金的なリスクを取る必要もないのにわざわざ適切な報酬を払わない会社で働く意味はありません。

今の時代、成果報酬で安い報酬で事業を立ち上げるなら自分で起業したほうが圧倒的に有利であることは間違いありません。

確率的経営における報酬の考え方としては、成果に関わらず起業家に最高水準の報酬を払い、勝っても負けても報酬は大きく変わらない、挑戦し続ける環境を提供することにコミットする

これが確率的経営の報酬の考え方です。

Algomatic Globalの挑戦

DMM動画翻訳を最初に立ち上げました。

VODを中心に海外から動画コンテンツを仕入れてビジネスをする事業者の大量ロットの動画を翻訳するBPO事業です。
また、YouTuberのようなクリエイターさんが世界進出しやすくするためのプロダクトもリリースしました。

僕らは、ただの機械翻訳ではなく、世界観を崩さない翻訳に強みを置いていたのでゲームの翻訳ってできませんか?という相談も頂くようになりました。

そこでゲームの海外進出を支援するGAME翻訳を立ち上げました。
ゲームの翻訳はスプレッドシート行数でいうと1本のゲームで20万行を超えるような膨大な作業があり、英語に翻訳するだけでも半年かかるようなプロジェクトでした。

この世界に革命を起こし僕らは最速1営業日で翻訳データを納品する事業を作りました。

また、動画翻訳をしていると「字幕だけでなく音声吹き替えもできませんか?」というご相談を頂くようになり、そこから音声合成技術の検証をスタートしました。

そして、先日リリースしたのがにじボイスです。
AIを使った感情豊かな声を簡単に動画やゲームに付与することができるようになります。

この他にも水面下で可能性ある事業を3事業走らせています。

Algomatic Globalは生成AIでグローバルで成功する事業を立ち上げることを目標に立ち上げました。

1兆円クラスの事業は適切なプロセスで勝負している限りはもはや当たるかどうかは確率の問題となります。

僕の中でDMM動画翻訳、DMM GAME翻訳、にじボイス、その他3事業もどれも成功確率5%と見込んでおり、理論上すべて失敗すると思っています。(小さい規模の成功は失敗としてます)

化け物クラスの事業を引き当てるために、少なくとも残り1年以内に20事業は立ち上げたいと思っています。

ですから、いまの最重要事項は事業責任者をたくさん採用することです。とにかくたくさんの事業を検証しないと1兆円クラスの事業は作れません。

最後に


Algomatic Globalではこれからも大量にサービスリリースを予定しています。

いま事業責任者を絶賛募集中です。

いまほど面白いタイミングはないと思います。

ご興味あれば原田( https://x.com/1230yuji )までお声がけいただけると大変嬉しいです。

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