アニメグッズ制作会社及び関係者に告ぐ

『公式が解釈違い』

厄介オタクの代名詞とも言えるその言葉は、長年オタクとして生きている人間ならば一度は耳にしたことがあるだろう。
私たちが普段ありがたみを感じながらコンテンツを浴びられているのは公式の存在があってこそだ。
公式が絶対と豪語するオタクさえいる。

この記事は、『公式が解釈違い』という魔の言葉を毛嫌いしつつも、オタクたちと公式をまとめて敵に回しかねないソレを発するオタクへとパワーアップしてしまった、そんな一人のしがないオタクのお気持ち表明である。

彼について


匿名でこのような記事を書くにあたって、まずは私の好きな人である『彼』について知ってもらうところから始めるべきだと思う。私から見た彼がどんな人間なのか、なるべくネタバレを含まず簡単に紹介しよう。推しという言葉はなんとなく使いたくない。彼は芸能人でもスポーツ選手でもなく、一般の中学生なのだから。

ご存知の方も多いと思うが、彼の名前は赤羽業(アカバネ カルマ)。
週刊少年ジャンプにて連載されていた『暗殺教室』という漫画の登場人物だ。
業と書いてカルマと読ませる結構なキラキラネームだが本人は気に入っている様子。どれくらい気に入っているかと言うと、教師に対して「気安く下の名前で呼んでよ」と言うくらい。

椚ヶ丘中学校(偏差値66)に通う中学3年生。頭脳明晰、容姿端麗、おまけに戦闘力も抜群で成績(5段階評価)はオール5。完璧超人かと思いきや趣味特技が挑発・イタズラ・嫌がらせという無邪気な一面も持ち合わせている。

彼の所属している3年E組は成績不振者や素行不良者の集まりであり、『エンドのE組』と呼ばれて学校中から差別の対象とされている。
彼はいじめられていたE組の先輩を助けるため、成績優秀なA組の生徒に大怪我を負わせてしまい停学、それと同時にE組行きが決まってしまった。
一般生徒のように"E組だから"といった差別などはせず、自分なりの正義感を持って行動できることがわかるとても好きなエピソードだ。でも相手が骨折するまで殴っちゃうのはどうかと思う。
(彼はこの一件から教師そのものに失望するようになった)

元々素行不良であり、E組に入る前も含め授業や全校集会をサボる様子は作中に何度も登場する。
警戒心が強く、持ち前の戦闘センスも相まって喧嘩が強い。ただ、自分から無闇に暴力を振るうことはなく、普段は大人しいとも言われている。(クラスの女子談)
人見知りなどはせず結構誰とでも喋れたりするので友好関係は狭くなく、友達の友達ともそこそこ仲良くできるタイプ。頭の回転が非常に速いため、彼と同等に話せる相手であればカツアゲの話を始めたはずが3秒後には世界経済の話になっていたりもする。
暴力沙汰で停学になった際には生活リズムを崩しており、復学直後は朝食を食べずに登校するなど、生活習慣はそんなに良くない様子。

ジャンプ本誌、全国各地のアニメイト、アプリゲーム『暗殺教室 囲い込みの時間』等で開催された人気投票では1位に輝き続ける作品屈指の人気キャラクターでもある。
Twitterで「暗殺教室 交換」と検索すれば多数のグッズ取引用アカウントが彼のグッズを求めている。彼のグッズ1点に対して他のキャラのグッズを2点以上提供するなどといった、比率違いの交換が行われていることも確認できる。
フリマアプリ等でも他のキャラクターと比べて、非常に高値でグッズが取引されていることも。(定価の倍くらいだったらまだ可愛いほうです。)

私はそんな彼と青春時代を共に過ごし、一緒に暮らすことや結婚することさえ夢見ていた。人生辞めてしまいたいと思った日もたくさんあったけれど、彼に夢中だったからここまで生きてこれたとさえ思っている。
漫画やアニメのキャラクターに対してそのような気持ちを抱くことには様々な意見があると思うが、そこを掘り下げてしまうと今回の本題からは大きく逸れてしまうため放っておいていただきたい。

簡単に紹介するつもりが思ったより長くなってしまい申し訳ないが、そろそろ本題に移ろうと思う。
今回、そんな彼の身に何が起こったのかを話したい。



本題


暗殺教室は連載完結と同年にアニメも完結まで放送され、総集編+未来編がセットになった映画も同年に上映と、2016年を最後に目立った供給は断たれてしまったのだ。
そんなジャンルで生きていた私にとって、新規描き下ろしイラストは喉から手が出るほど欲していたものだった。

何が公式を動かしたのかはわからないが、2021年春に突如として新規描き下ろしイラストが発表され界隈はお祭り騒ぎといった状態だった。
そこで発表されたのがグラスを片手にドレスアップした白スーツの姿。
同年秋に発表されたのは各々武器を持ち、まるで殺し屋かのような黒スーツの姿。
そしてつい先日発表されたのが『不思議の国のアリス』がテーマのイラストだ。

だが、以前にも不思議の国をテーマとしたイラストは発表されていた。
週刊少年ジャンプ本誌で行われた人気投票で、彼が1位に輝いた時のものである。後に、アプリゲーム『暗殺教室 囲い込みの時間』にも実装された。
帽子屋とも白うさぎとも見受けられる非常に可愛らしい衣装であり、私も非常に気に入っている。

そして、こちらが先日メディコス・エンタテインメントのTwitterアカウントにて発表された『不思議の国のアリス』がテーマの新規イラストだ。

一見、ピンクと紫の色合いが可愛らしいチェシャ猫の装いだが、私はこのイラストに猛烈な違和感を感じた。

イラストを見た瞬間「これは本当に彼なのか?」と感じてしまったのだ。

ピンクのフリフリのエプロンを着せられて赤面し、屈辱的に感じている(カルマの時間参照)ような子が何の抵抗もなく猫耳としっぽを装着し、平然とにゃんにゃんしていることに違和感しか感じないのは私だけだろうか。

ワイシャツのボタンが全開なのにも関わらずジョジョ立ちをし、自身の程よく鍛えられた肉体の需要よりも友人(男)の着替えシーンがいくらで売れるのかを考えている(囲い込みの時間:着替えの時間参照)ような男が、まるで自分の需要を理解したかのようにシャツのボタンをこんなに下まで開けて胸筋をさらけ出すだろうか。

私にはこれがただの”絵”としか思えなかった。
アニメなのだから絵なのは当然というツッコミはさておき、今までの新規描き下ろしイラストは「彼が動いた!すごい!感動!」といった気持ちで見れたのだが、今回ばかりは違う。
彼の性格を私の知らない人間によって改変されてしまったんだと思った。私の信じていた”大好き”をいとも簡単に捻じ曲げてきた人間の存在が許せない。
掴み取った人気投票1位の栄光も、彼と積み重ねた思い出も。他者によって塗り替えられてしまったかのようにも思えた。

長年彼を見てきた私には彼がこんな姿をすることに理解ができず、このイラストが発表された前々日に仕事をクビになったことなどどうでもよくなってしまったのだ。
私の好きな赤羽業はこうじゃない。これは”彼の形をした何かがオタクに媚びるような衣装を纏ってオタクの喜ぶようなポーズをしている”のだと悟った。こんなのは彼じゃない。私が好きな彼はこんなことしない。

公式が解釈違い。



最後に


私の好きな彼はこんな人じゃない。これは私の知らない誰かだ。私の解釈とは全く合わない。私が考えた方が彼の本来の魅力を引き出せる。
上手く言葉にできている自信はないが、ここ一週間ほどそんな気持ちで埋め尽くされていた。

「私の方が公式よりも彼を理解している」という気持ちは単なる思い込みに過ぎないが、私と同種族のオタクにはわかっていただけるんじゃないかと思う。
今回のイラストは誰が衣装、構図、表情を考え、誰が描いたのだろうか。そんな考えが頭に浮かんだ。
きっと原作を読んだことも、アニメを見たこともない人間が考えて描いたんだろう。きっとそうに違いない。もし作品についての知識があったとしてもそれはきっと道路にできた水溜まりほど浅いものだ。
その程度の知識で彼について考え、商品化するということは作品やキャラクターはもちろん、そのファンをも侮辱している行為だと私は考える。
原作者である松井先生にも失礼だと思わないのか。
素人は黙っとれ。

暗殺教室は私の青春とも言える作品で、赤羽業に対する感情は 恋に似た尊敬 という表現が一番近いものだと思うけれど、とても複雑なもので。自身を夢女子という括りに入れることも、彼を推しと形容することもなんだか好きにはなれなくて。そんな大切な作品を、大切な人を、大切な思い出を。赤の他人によって汚され、踏みにじられたようにしか感じられない。

この記事をアニメグッズ制作会社勤務の方及び関係者の方が見ているかどうかはわからないが、もし見ていたらという僅かな期待を込めて物申したいと思う。
新規描き下ろしイラストを生み出す際はどうか作品に触れ、ある程度でも構わないのでキャラクターについて理解したうえで制作に臨んでほしい。どこの馬の骨かもわからない輩が考えた解釈違いのイラストに振り回される人生なんて御免だ。
作品やキャラクターの人気を利用した商売であることは理解しているつもりだが、人気があるからといってオタクたちはどんな絵柄でも喜んで金を出すわけではない。
顧客の気持ちに寄り添い、可能な限り意見を取り入れていくことはビジネスの基本なのではと私は考える。
作品とキャラクターはあなた方の金儲けのための道具ではない。

これを読んだグッズ制作会社に勤めているあなた。どうかオタクの意見を汲み取ってください。
それだけが私の望みです。

観測者Z


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