わたしたちへ
「カネコアヤノ」と口にしてみる
母音の余韻の最後まで好きな響きの名前
新しく出た曲の、ジャケット写真を見つめる
彼女が白いワンピースを見に纏う姿はとても綺麗だ
思えば生活の節々で彼女の音楽に縋っていた
それは大抵どうしようもない気持ちから抜け出せない時だった
途方もない回数であり、その度に彼女の毎回違う曲の違う詞と音楽に落ち着いていた
先日あるDJイベントの会場でカネコアヤノの音楽が流れたワンシーンがあった
若い世代の多いお茶の間の会場で、一体となって、それぞれ思うように、歌詞を口にしていた
そこにいた人は「カネコ 最高〜」だとか口にしながら、彼女の音楽に体を揺らしていた
どんな人が口ずさんでいるカネコアヤノも素敵だった
この場所でこの瞬間を過ごすために 今日まで生きてきたのかと思うくらいの幸せを感じた
いつも一人でイヤホンで聴いている音楽を、あの場で、あの空気感の中で共有できた事がとつもなく嬉しかった
まるで私の孤独は私だけのものじゃないと 言われたようだった
その瞬間は、そこに居た人達と
カネコアヤノの音楽にそっと背中を押してもらいながら進んでいた
彼女がここに居なくても、彼女の音楽がこの世界にあるその存在自体とても偉大だと感じた
初めて会った人と同じ音楽と過ごしていた事を知ることはとても嬉しいけれど
それがカネコアヤノだと更に、こんなにも愛おしい
彼女の昭和チックな音楽と、繊細で正直な歌詞、丁寧な歌声に惹かれている同世代が沢山いる事
その事実が優しく私に寄り添い、言葉よりも深く伝わってきた時間だった
私はもっとカネコアヤノが好きになった
この文章は、カネコアヤノの曲をカバーで歌っているわけでもなければ、歌詞カードのように詞を並べているわけでもない
つまり、彼女の作品の分かりやすい部分は含んでいないけれど
こういう形で私の過ごしてきた「カネコアヤノ」という日々が誰かに届くことがあったら嬉しい
もしあなたが 恋しく思っているのに会えない人を思っていても立っても居られないのなら、
小さな事が積み重なってどうしようもないくらい息苦しい夜の中にいるのなら、
彼女の音楽に頼るといい
彼女の歌の歌詞を、無心で目で追うのもいい
そんな時にこそ、どうしても捨てられない、お守りの絆創膏みたいな音楽が
この世にはあること
思い出してね
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?