近未来の管理会社を考える(その7)
今回のシリーズでは、「DX」により大きく変革を遂げるであろうと思われる「近未来の管理会社」「近未来の委託管理」の姿を「AI」・「ブロックチェーン」・「メタバース」といった技術を題材に考えたいと思います。
今後の(通信を含めた)技術革新が進めば、近い将来に私たちの日常に入ってくる可能性が高いのでは?と思います。
これらの技術が管理委託の中に取り入れられると・・・どんなマンションライフになっていくのか?考えて行きましょう!
「NFT」や「ブロックチェーン」の技術をマンション管理運営に生かすとどうなるのか?マンション管理運営に活用できないか?(もしかしたら、それって夢想?)みたいなことになるかもしれませんが・・・お話したいと思います。
「ブロックチェーン」を応用すると・・・
例えば・・・デジタル化された「総会議事録」「管理規約」「細則」「会計帳票類」等が「NFT」で紐づけされたら、不正な書き替え(記載内容変更や日付変更等の改ざん)は、(データを監視する全員の了解が必要なので)事実上できなくなります。
また「議決権行使書」や「当日出席者による賛否」等のデジタルデータ、場合によっては総会当日の音声データや映像データも「総会議事録」にドッキングさせ紐づけすることもできます。
まあ・・・そんなことすると「総会で自由な発言ができなくなるわ~」等、様々な意見があると思いますが、技術的には可能かな?と思います。
「NFT」の手数料
何かを作ったり流通させたり動かせたりする土台(場所?環境?)を「プラットフォーム」と呼ぶ時があります。
そうです! 駅のプラットフォーム(=乗客の乗り降りに必要な場所)と同じです。
「NFT」を作成する場合に最も利用されているプラットフォームが、「イーサリアム(Ethereum)」です。
「イーサリアム」は、分散型アプリケーションの一種で・・・世界中のインターネットに繋がれたパソコン等が、分担(分散化)してプログラムを動かし計算(処理)を行い・・・「NFT」による暗号化された紐づけ作業を行ったり、承認作業を行ったりしています。この作業は、超複雑で超重い(=コンピューターへの負荷が大きい)ようです。
そして、これらの超重いデータ処理を行なう作業を「マイニング」と言います。なお「マイニング」を行った人には報酬が「イーサ(Ether)」で支払われます。(「イーサ(Ether)」はビットコイン等と交換できる仮想通貨で、「イーサリアム」や「NFTアート」が流通している市場「OpenSea」で流通しています。※ 2022年1月7日時点:1Ether=366,824.99円)
得意の雑談(笑)
「NFTアート」として、最も有名なのが「クリプトパンクス(CryptoPunks)」です。わずか縦24ドットx横24ドット四角形(=576分割された四角形)にAIが自動作成した(描いた)10,000個限定の人や動物の顔の絵の作品です。
なお、「Crypto」の意味は、「暗号」で・・・「Punks」は、1970年代半ばから後半にかけて発生した(私ら世代にはお馴染みの)パンクロックのパンクのことです。
これがアーリーアダプターの間で超人気で・・・1作品1千万円以上で売買されています。(2021年8月にVISAが1700万円で購入なんてのがニュースになってました)
私の庶民感覚では全く理解できない世界ですが・・・「クリプトパンクス」を作成した会社(Meebits社)のホームページをリンクしておきます。(現在・・・「メタバース」等で使える「3Dのアバター」を販売中みたいです)
「ガス代」高いです
超重いデータ処理を行ない続ける「マイニング」作業中は、高性能なパソコンがフルパワーでずっと稼働し続けるので、「マイニング マシン」を設置した部屋は、冬の暖房が要らない・・・なんて言われています。(電気代、すごいことになるんでしょうね)
つまり「マイニング」の報酬が、設備投資(イニシャルコスト)や電気代(ランニングコスト)を賄えないとなると、誰も「マイニング」をしなくなります。
もちろん、この報酬は、「NFT」を依頼した人が支払った手数料(この世界では「ガス代」と言います)から拠出されます。
ですから・・・「イーサリアム」で「NFT」による紐づけ手数料(=「ガス代」)は、「イーサリアム」のプラットフォーム(システム)の問題も相まって結構高いみたいですね。
ちなみにイーサリアム」のプラットフォーム(システム)の問題を電車の駅を例に説明すると・・・
乗降客1日1万人想定したプラットフォームにいきなり10万人押し寄せて、入場できない人が溢れ入場券が高値売買される・・・みたいな感じかな?
「NFT」のデータ処理が集中すると1,000円位だった「ガス代」が、いきなり4,000円位に高騰・・・みたいなことは日常茶飯事のようです。(加えて、取引される仮想通貨の「Ether」も乱高下が激しいです)
でもマンションの場合は・・・
マンション管理組合が保管すべき電磁データは・・・(議事録等が)作成された時のデータ(内容)が、何も変わっていない(改ざんされていない)ことを証明するだけです。
なので一度、紐づけが済めば・・・その後は、基本的に「ガス代」は発生しはいはずです。
また、「イーサリアム」はオープンソースなので・・・マンション管理運営に特化した「イーサリアム」のプログラム(世界規模の分散システムではなくて、マンション規模の分散システム?)ができたら、自身のマンションの組合員の自宅パソコンを使って・・・会計や総会等のデータを「NFT」で紐づけを行えるかも知れません。(「マイニング」の報酬は、管理費から減額されるとか・・・)
メリットが大きいかも?
「NFT」によって偽造や改ざんができなくなるので、重要度に関わらず・・・紙ベースの書類保管は不要になるでしょうし、極端な話・・・マンション管理組合の保管データを各戸のパソコンやスマホで分散保管していても問題ないように思います。(常識的には、管理組合にサーバー設置したり、クラウドサービスを利用したりになると思いますが・・・)
個人情報等の秘匿しておきたい情報は、公開前提でモザイク処理やパスワード処理しておけばよいだけです。
いずれにしても、「NFT」を利用して管理組合が保管データを管理すると・・・データを保管している意味、というか利用価値や使い勝手が今よりも飛躍的に良くなるように思います。
まずは・・・「NFT」でなくても
本シリーズでは、近未来のテクノロジーを取り上げて話していますが・・・現在普及しているテクノロジーによる保管方法でも、「守り(受動的)」ではなくて「攻め(能動的)」な理事会運営に役立つ方法はあります。
私がやっている月次報告や各種点検報告書のアーカイブ化だけでも、先に手を打つため、大変有効なツールになります。(例:給排水設備やエレベーターや機械式駐車場設備等の経年劣化の推移確認、消防点検や排水管清掃未実施住戸への事前対応、滞納者の推移確認等々)
「NFT」による紐づけが必要になるような管理組合資料は(これまでどおり)紙ベースでの保管継続で良いので・・・まずは、管理員室に眠っている管理組合資料をPDF化(自炊)して、理事会で使えるように整理する・・・みたいな所から始めても良いのでは?と思います。
そうやって保管資料のデジタルアーカイブ化による恩恵を実感できて初めて、「もっと有効で使える方法は無いかな?」といった検討が始まり・・・その先に「NFT」があるかもしれない・・・なんてことを思たりします。
今日は、ここまでです。次回は、マンション管理組合が、「空想先行(笑)の夢物語のNFT」を導入した時の問題点を考えてみたいと思います。 (つづく)