弁護士が教える悩み相談の受け方(入門編)
みなさんこんにちは。
「最近はnoteを更新してないからnote芸人は辞めたの?」と嫁に言われたばかりのかんねこです。
今日は久しぶりにnoteを更新します。
テーマは悩み相談への対処法について。
相談と私
私は弁護士として10年以上人の相談にのってきました。
その仕事の前にも、受験生の相談にのったり、友人の相談にのったりする機会に恵まれました。
このような「相談を受ける」人生において、数多い人から「相談しやすい」と言われてきたのです。
「相談されやすい」は性格かスキルか
では、私は「相談されやすい」性格なのでしょうか。
その表現は不正確だと思います。
「相談されやすい」状態になるために、性格はあまり関係ありません。
相談されやすい状態になるために必要なのはスキルです。
一定のスキルが備わっていれば、今のところ「人に相談されてもどうすればいいかわからない」というあなたも「相談しやすい」と思ってもらうことができます。
このnoteで書くこと
このnoteでは、
・私の10年以上の弁護士経験
・社会福祉士の専門学校での学び
・コミュニケーション講座で学んだこと
・恋愛婚活講座を開催したときの経験
をもとに、相談を受けるうえで大切にすべき「人の心理」とこれを踏まえた技術を書いてみます。
◇◇◇
相談をする人の心理について
まず最初に、相談をする人はどういう心理をもっているかを考えてみましょう。
・悩み事を解決したい ⑴
パッとイメージできるのは「相談する人は、悩み事を解決したい」と思っているのではないかということですよね。
でも、ちょっと待ってください。
相談者は、それ以外の感情も持っています。
・誰かに気持ちをわかってもらいたい ⑵
・多くの場合、自信がなくなっている ⑶
さらに、根本的に、人はこういう感情を持っています。
・自分の人生のことは自分でコントロールしたい ⑷
相談を持ちかけられるとつい「解決策」を提示してしまいがちになります。たしかに、⑴の感情のみであれば、それでもいいでしょう。
しかし、人は、
・弱っている場合には「解決策」の提示が耳に入らない
という傾向を持っています。
皆さんにも経験がないでしょうか。心が弱っている場合には、人のアドバイスを聞きたくならないことが多いのです。
また、皆さんが聴きたくなるのは「信頼できる人」からのアドバイスではないでしょうか。
したがって、相談を受けた場合には、
・誰かに気持ちをわかってもらいたい ⑵
・多くの場合、自信がなくなっている ⑶
という問題に対処して、相手の気持ちを十分に回復させたうえで、「聞いてもらえた」と思ってもらうことで信頼を得て、最後に解決策を提示するのがセオリーになると思われます。
そして、解決策を提示する場面においても、その解決策を相手が「押し付けられた」と感じるようではいけません。
なぜなら、人は、
・自分の人生のことは自分でコントロールしたい ⑷
という欲求を持っているからです。
相談者のなかには、すでに「答え」を持っている人もたくさんいます。
その場合には、相談者のニーズは⑵や⑶が中心となりますし、「答え」を持っていなくても、やはり、ニーズ⑷からして、最後の解決策は相談者が選ぶようにすべきでしょう。
・気持ちをわかってもらえたと感じさせる技術
以上のとおり、まずは、相談者には、気持ちをわかってもらえたと思ってもらう必要があると思います。
そのためのマインドは「聴く」です。
相談を受けて失敗する原因の多くは「喋りすぎ」です。
相談を受けた人がたくさん喋ってしまうため、相手が十分に話すことができず、相談の満足感を得られなくなるのです。
大雑把に言えば、相談を受ける人の話すと聴くの割合は、話す:聴く=3:7あるいは2:8だと思っておきましょう。基本的には相手が話すというイメージです。
では、どう「聴く」のでしょうか。
まずは、相手が言葉を発するのを「待つ」ことにしましょう。
相談したいと相談者は言っているのですから、言葉は出てくるのが普通です。
相談者のメンタルは沈んでいるのが一般的ですから、言葉を急かさずにおきましょう。
言葉があまり出てこなければ、開かれた質問(答えが決まっていない質問)で言葉を促します。便利な言葉が「今日はどうしたの?/今日はどうしましたか?」です。
相手から言葉が出てきた言葉について、私たちは無言ではいけません。
「聞いていますよ」「理解していますよ」と伝える必要があります。
そのための技法が「おうむ返し」や「反射」と呼ばれるものです。
相手の言っている言葉をそのまま、あるいは言い換えて繰り返します。
(事実について)「ーーーーーということがあったんだね」
(相手の思考について)「ーーーーとあなたは思ったんだね」
特に、相手の感情を言い当てる手法は有効です。
「それは辛かったね」
「それはとても怖かったね」
「それは悔しいねぇ」
そうやって理解をしていることを示しましょう。
このときは、表情や声のトーンも相手に合わせることが大切です。
そうすることで、ますます「気持ちに寄り添われている」と感じてもらえます。
あるいは、相手が感情表現をしたら、もっとそれを語ってもいいよというメッセージを「質問」を使って伝えることができます。
その感情に焦点をあてて
「どの部分が一番辛いの?」
「どの部分が一番悲しいの?」
と聞いてあげるのです。
そうすると、相手は質問されているので安心して語ることができるのです。
また、相手の言っていることを「要約」することも意味があります。
要約が得意な方は、相手の言わんとしていることを要約して「理解しているよ」というメッセージを伝えていきましょう。
より高度な技術は、相手の感情を正確に言い当てるというものです。
「〜〜という状況でこうしたということは、あなたはこう感じたのかもしれないね」
正確に感情をいい当てれば、相手からの信頼度はかなり増すことになります。
以上のような技術を使って、相手の「気持ちをわかってもらいたい」というニーズを満たしていきます。
・自信のない相手を受容する技術
次に、相談者は自信を失っていることが多いので、自信を少しでも回復させましょう。
方法は単純です。
「褒める」
人は誰でも認められたい、承認されたいという欲求を持っています。
それを満たすことで、ますますあなたは信頼を得られるでしょう。
ここで、「どう褒めればいいかわからない」という方のために、褒めの極意をお伝えします。
褒め方がわからない場合には、とりあえず「プロセス」を褒めます。
相談者が疲れている背後には、必ず「頑張ってきた」というプロセスがあります。
そこで、相談者がひととおり語ったら、
「よく頑張ってると思うよ。私ならそこまで頑張れたかわからない。
それが、◯◯さんの強さだし、魅力だと思うよ」
と褒めましょう。
もちろん、他に褒めるポイントがあれば、そちらを褒めても大丈夫です。
ただ、一般論としては、人は結果よりも頑張った「プロセス」を認めてもらいたいものなので、プロセスを褒めるのは有効だと思います。
プロセス褒めの肝要な点は、相手が頑張ったプロセスを具体的に言葉に出すことです。
例えば、ブラック企業に勤めていて苦しいという人がいたとしましょう。この場合,次のように褒めます。
「そんな酷い上司がいて、環境もよくなくて大変だったろうに、それでもお客さんためを思って今まで辞めずに頑張ってきたんだね。よく頑張ってると思うよ。私ならそこまで頑張れたかわからない。それが、◯◯さんの強さだし、魅力だと思うよ」
このように、どのプロセスを褒めているのかを具体的に明示するのです。
そうすることで、相手は「理解された」と感じます。
プロセス褒め以外に便利な言葉が「素敵」という言葉です。
「素敵」というのは多様な意味合いが含まれていて、ぼんやりと相手の魅力を賞賛するニュアンスが込められています。
「素敵」と言われて「その褒め方ピントがずれているな」と思われることはありませんし、言われて嫌だと思う人もいません。
どう褒めればいいかわからない人は、ぜひ積極的に使ってみてください。
ただし、こちらについても、どの部分が「素敵」なのかを明示しましょう。
例えば、ライターになりたいという希望の人がいた場合、
「まず、ライターになりたいという夢を持てていることが素敵だし、そのためにちゃんと行動して毎日ブログを書いていることがとっても素敵。誰にでもできることではないよ。
あなたの文章はかなり読みやすいし、心にすっと響くものがあるから、素敵なブログだと思うよ。夢、叶うといいね」
といったように、具体的に「素敵」ポイントを列挙していきます。
「頑張ったね」
「素敵だね」
これを「具体的なエピソード」とともに使いこなせたら、相手を承認する技術はマスターしたと言えるでしょう。
・信頼をうしなうNG表現
ここまでの技術を使って「共感」と「承認」を示しても、不適切な発言をすると信頼を失ってしまいます。
不適切な発言の代表例をあげておきます。
・「頑張ってね」
これは言ってはいけない例とされています。
多くの場合、相談者は十分に頑張っているからで、頑張っているのに結果が出なかったり苦しかったりするから悩むのです。
その状況で「頑張ってね」と言うのは「追い打ち」にしかなりません。
もし言うなら、
「少し休んでね」か、
「一緒に頑張ろう」
が適切だと思います。
一緒に頑張ろうという言葉は、相談者に「1人じゃない」という感覚を与え、勇気付けることができます。
・「駄目でしょ」
相談者が仮にこれまでの行動で失敗していてもそれを責めるニュアンスの発言は控えたほうがいいと思います。
相談者は非難されるために相談をしているのではありません。
もし、相談者の行動に不適切な点があれば、
「これがだめ」
ではなく、
「こうすればうまくいくかもしれないね」
という言い方をすると伝わりやすいだろうと思います。
・解決策の提示について
相手の気持ちに寄り添って受容をしっかりしたなら、相手の気持ちも落ち着いて、さらにあなたへの信頼も増しているのではないでしょうか。
実は、解決策の提示は(とりわけプライベートの)相談では必須ではありません。
共感と受容をすれば相手が満足した、というオチはかなりあります。
かなりの人間は、心が安定すれば自分で解決策を考える知恵を持っているからです。
その場合には無理に解決策を提示せず、「うまくいくといいね」と伝えて相談を終わらせましょう。
もし、解決策が必要な場合にはどうすればいいでしょうか。
その場合には、まず、相談者がどうしたいのかをしっかりと探りましょう。
よくある失敗が、自分の価値観で「解決策」を提示してしまうことです。
例えば、夫婦関係がうまくいっていなくて「旦那がひどい」と相談してくる女性に対して「そんなだんな別れちゃえよ」と言ったりする場合です。
しかし、一番大切なのは、相談者がどうしたいかです。
相談者が「旦那といたい」と思っているのに「別れる」という選択肢をいきなり提示しても仕方ありません。
解決策はこちらから提示するというよりも、相談者が自分で解決策を考えるためのヒントを与える、くらいのマインドでいたほうが、相談で満足感を得てもらいやすいのです。
相談者がどうしたいかを探ったうえで、最後に、特定の解決策を押し付けずに、解決策の選択肢を提示する方法は有効です。
私は、弁護士としておすすめできる方針があるときも、あくまで「選択肢」を提示して、「わたしはこちらがいいと思いますけど、あなたはどう思いますか」と伝えて選んでもらいます。大抵の場合には、私がおススメした選択肢が選ばれますけどね。
ただ、「こうしなさい」と特定の選択肢を伝えられるよりも、いくつかの選択肢を提示されて最後は相談者が選ぶようにしたほうが、相談者の「自分の人生は自分で選びたい」というニーズに沿うように思います。
◇◇◇
大筋としては、私は以上のような点に気をつけて相談に乗るようにしています。相談を受けるときに試してみてはいかがでしょうか。
少しは相手の反応が違ってくるように思います。
相談されるということは,少しは相手があなたのことを信頼してくれているということです。それは,さらに信頼を深めあい,より仲良くなるためのチャンスです。
よりよい人間関係を築くために,今回の技法が少しでも参考になれば幸いです。
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