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春を待つガーベラ

 昨春引っ越したマンションの新しい部屋は8階。ベランダから、毎朝、昇る朝陽と空を見つめ、大きく息を吸う。真っ白いカーテンを開くと、新鮮な一日が始まる。

 テレビをつけると、日々、コロナのニュース。コメンテーターのやり取りと、数字の上下、その変化に心揺れる人びと。今、必要な情報は何なのか。通り過ぎてゆくことばの端を耳で追いかけながら、天気のマークが優しく揺れ、自然の彩りと風を思う。

 先日、春を思わせる暖かい日、店で黄色いガーベラを買った。明るく清々しいイエローに心魅かれたからだ。

 会計での短いやりとりのあと、

「かわいいですね。春が待ち遠しいですね。」

と、あたたかいことばが帰ってきた。ふいに、まだ見ぬ春の香りが漂い、思わず、ほほえみがこぼれた。

 日々のニュースのざわめくことばよりも、日常に寄り添うこんな一言が、愛おしい。めぐる季節の確かな足取りに、心を寄せていたい。

 今、世界中の人々が、あたたかい春を待っている。

 自転車をこぐ、二つのペダルが、いつもより軽やかに思えた。

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