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ゆびは 花咲く


2021年、新しい年が始まった。

毎朝、窓の向こうにオレンジ色に輝く朝陽がのぼる。

日々、わけへだてなく世界を照らす、その光に手のひらを合わせる。

そっと、自分の手のひら、一本一本のゆびをみつめていると、ゆっくりとある詩のことばたちが思い浮かんだ。


 ひざの うえに

 てを ひろげてみるたびに

 むねが つまる


   ちいさな ゆびたちが

 わたしに さいた

 わたしの はなの

 はなびらででも あるかのように

 いきを しているのだ


 ほこらしそうに

 しあわせそうに

 からだを よせあって


──『まど・みちお詩集』(ハルキ文庫)「ゆび」より一部引用


一日に何度となく手を洗っている、今現在の、わたしたちの日常。鋭い痛みを感じながら、ハンドクリームを塗りながら。

でも、そっと膝の上にひろげてみれば、手は、指は、自分に向って、誇らし気に花ひらく。

今日も確かに「生きているよ」と、花ひらく。

ひろげてみよう。手のひらを。思いきりゆびをひろげて。

その手に受け取るもの、まだみえないけれど、確かにやってくる未知の光を信じて。

私たちの愛おしい「ゆびたち」は、今も、これからも、

「いきを している」


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