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ジョブ理論(JTBD)の良い例と悪い例
こんにちは!セールスフォースでPMをしています、ハヤカワです。
前回、プロダクトを定義するために便利なジョブ理論(JTBD, Jobs to Be Done)の実践的なモデルについて書きました。
ここでは原理原則を定義し、少し座学的な形でJTBDを見直してみましたが、今回は具体的な例を上げて、JTBDの書き方を考えていきたいと思います。
今回参考とした記事は以下です。
著者のBrian Rheaはアーリーステージのスタートアップを主に支援しているデベロッパーで、JTBDについていくつか記事を書いています。今回その中でも、JTBDの書き方の良い例と悪い例を取り上げていたので、日本語で解説したいと思います。
JTBDのおさらい
さて、JTBDとは何かを、「JTBDの実践的なモデルについて」から引用すると、
ジョブ理論は、プロダクト開発において、顧客のニーズを定義するのに適した理論です。JTBDでは、ユーザーがプロダクトを利用するときに、必ず「成し遂げたい目的」があるとして、その目的を「ジョブ」と位置付けて、ニーズを探ります。
「顧客はどのようなモノやサービスを欲しているのか」「顧客のニーズに応えるために、自社のサービスやプロダクトをどのようにアップグレードすればいいのか」など、特に初期のスタートアップにおいてプロダクトを考えるのにとても重要なヒントを探し出せます。
ここで大事になのはJTBD自体は、どんな製品やソリューションがあるかどうかは知らないということです。あくまでも、ユーザーの課題解決をするために、何を欲しているのか、何に苦労しているのかを見極めるためのフレームワークです。
そういう意味で、以下の3つのことが言えます。
JTBDとは...
1. ソリューション依存しない
2. 達成した時に進歩(progress)がある
3. 時間経過に影響しない一貫したものである
これらのことを前提に、JTBDの悪い例と良い例を交互に見ていきたいと思います!
悪い例① 毎朝、歯磨きを楽にしてくれる
上記の文は適切なJTBDではないです。一見、顧客は歯をもっと楽に磨けたら嬉しいですし、何か新しいアイデアが出そうですが、原則に反している点があります。
というのも、既存のソリューションである「歯ブラシ」に引っ張られており、原則①の「ソリューション依存しない」に反しているからです。
これは、例えば伝統的な歯ブラシの会社が短期的に顧客満足度を向上するために、持続的なイノベーションをデザインするためには有効なアプローチです。これによって、「電動歯ブラシ」というアイデアが浮かぶことになると思います。
一方で、JTBDで見つけるべきは破壊的なイノベーションです。既存のソリューションに紐付いていると、破壊的な新製品やサービスには繋がりません。
より、破壊的なイノベーションに繋がる課題を見つけるのであれば、歯を磨いている時のJobs to Be Done, つまり「為すべき仕事」を説明する必要があります。
良い例① 常に歯を健康に保つ
これは、より良いJTBDの説明になります。既存ソリューションには引っ張られておらず、人々が本当に必要としているものに直結しているからです。
そしてこれは数百年前から現在に至るまで人々が直面している課題であり、原則③の「時間経過に影響しない一貫したものである」にも一致しています。
つまり、歯ブラシよりも効果的で、お金のかからない、時間のかからない方法で、歯を健康に保つのに役立つ方法を見つけることができれば、破壊的なイノベーションを考えることができます。
悪い例② 掃除機をかける時にできるだけ部屋を綺麗にしたい
この例でも、確かに人々はこのようなニーズがあり、市場が確立されており、その結果、多くの人が「ダイソン」を持っています。
掃除機に焦点を当てて、より良い効果的な掃除機を考えることには有効ですが、人々は掃除機をかけることが目的ではなく、あくまでも部屋を綺麗にしたいはずです。
良い例② 部屋を綺麗に保つ
非常にシンプルですが、良い例としてはこのように書けます。このようなJTBDによって、掃除機をかけることなく、部屋を綺麗に保つことができる、「ルンバ」を考えることができます。
悪い例③ 写真を編集する時にプロみたいなフィルターを簡単に使いたい
これは、PhotoshopやInstagramが実際にユーザーを満足させることができる一文です。しかし、InstagramがこのJTBDを解決することを目指して開発を続けたら、製品のロードマップはどうなるでしょうか?
おそらくフィルターや写真加工の改善に留まってしまうでしょう。
良い例③ 綺麗な写真を共有したい
Instagramが実際にやっているジョブはこちらの例です。よく言うように「人々はドリルが欲しいのではなく、穴が必要である」のと同じように、ユーザーはフィルターが欲しいのではなく、綺麗な写真を共有したい、これがJobs to Be Done, つまり為すべき仕事にあたります。
悪い例④ タグやラベル付けをして、メールをフォルダ分けすることで、並べ替えを容易にしたい
顧客インタビューを始めたり、潜在的な顧客を見つけたり、自分が最初の顧客としてサービスを始める時に、当面のニーズを満たすためにプロダクトの仕様を考えるのは非常に簡単ではあるものの、ニーズの全体像を捉えるのを見落としてしまいがちです。
JTBDを考える時に、製品アイデアやソリューションを入れ込むことに、抵抗してみてください。潜在的に思いついている解決策や、一瞬のヒラメキに囚われて、ついJTBDの中にソリューションを入れてしまいがちです。
もしソリューションがうまく行かない場合は、ひたすら掘り下げてみてください。より深いニーズがあり、ほんとうの意味でのJTBDを見つけることができます。
さいごに
悪い例④の良い例のバージョンはあえて外してみました。原文には乗っていますが、これを最後まで読んでいただいた方であれば、考えることができると思います。
もし考えてみた方は以下の私のツイートの返信にでも書いていただけると嬉しいです!TwitterのDMでもOKです!それ以外にも、プロダクト開発のご相談や、PMに関するご相談などボランティアでお受けしているので、そういった内容でもTwitterのDMでお気軽にご連絡ください!
note書きました!ジョブ理論って頭では分かっていても書き方って難しいですよね。書き方の参考として、良い例と悪い例をまとめてみました!ぜひご参考に!
— Kazuki Hayakawa | PM (@kzkHykw1991) September 22, 2020
最後にクイズも用意しているのでぜひ😆
ジョブ理論(JTBD)の良い例と悪い例|ハヤカワカズキ @kzkHykw1991 #note https://t.co/CcHYvkBL25