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書くって楽しい!活字の権威とChatGPT時代の表現力

ChatGPTを使いはじめて約2週間。

ヤツが得意なこと、苦手なことはなにか?
活字の重み・権威そのものが低下し、上手に文章を書いてくれる計算機がもてはやされている今、人間が文章を書く意味とはなんなのか?
などなど、現時点でわかったこと、考えたことを書いていきます。

最初は敬老の日のメッセージカードの文面を考えてもらって、その素晴らしい出来栄えに驚きました。
詳細はこちらから
     ↓ ↓ ↓ ↓ ↓


その後は、
・歴史上の出来事について質問
・note投稿のタイトル案を出してもらう
・治療薬のスマートデバイスについて質問
・秘密結社について質問
・あなた(ChatGPT)に名前をつけるとしたら
・ビジネスメールの文面を直してもらう
・適切な比喩を考える
などなど、毎日ではないけれど思いついたら使ってみていました。今のところ、ヤツ(ChatGPT)についてわかったことは…

正解がだいたい決まっていることはとても上手。この中ではメッセージ作成とかメールの文面チェックとかですね。
やはり、聞き手側があまり知らないことには使えないし(正確性の判断がつかないから)、医療情報とかもたぶん苦手なのかなという印象。もちろん、専門性を持たせたAIなら違ってくると思います。

コイツ、よぉ喋るなあ…と思うこと多し。とくにあまり知らないのかなという内容のときのほうが、口数が多いかも。油紙に火がついたようにペラペラペラペラ…もはや可愛らしいまである。

タイトル案や名前の案は、数をたくさん出せるし、気が合えばすごくいいのが出る。けど、イマイチだといくらやってもダメかも。修正かけようとして追加指示を出してもどんどんズレていったり。
そして、比喩はちょっと苦手みたいですね。思考の飛躍が無理なんだと思う。計算機が飛躍したらダメだし、それは仕方ないかな。

なんにせよ、これだけ書くのが上手な計算機さんが現れたら、プロの書き手以外は淘汰されてしまうのかな…?

でも、〈書く楽しみ〉ってすごくあるので、趣味としての作文はなくならないと思う。たとえば料理でも、出来合いを買ってきたりレトルト食品を利用してもじゅうぶん食事はできるけど、自分で作る楽しみはある。もちろん、プロの方が作るものをいただくのも嬉しいし、逆に素人の、友だちが作った料理も楽しめる。
同様に、楽しく書いて、楽しく読む、このnoteみたいな仕組みも続いていくのではないかな。

書く、ということは、自分との対話にもなり、書きながら考えを整理することができる。文章にすることで、わたしってこんなこと考えてたんだ!と気付くこと、ありますよね。自分で書くことのパワーは手放せないことでしょう。

ここで、まだヤツ(ChatGPT)が苦手な分野について。
〈比喩〉は、なかなか身につけられないと思いますよ。ヤツも、ありきたりなものはいくらでも出してくるけれど、聞いたことないような斬新な、でも芯を食った例えは、まだ人のほうが得意。
そもそも計算機さんは、知ってることのなかから繋げて言葉を出してくるものだし、対する人間は最初から推論(飛躍)を使って言葉を習得しているので、適切な抽象化のレベルが全然違うんだろうな。と素人ながら推察する次第。

ここで、最近読んだ面白い比喩をご紹介。

あなたはたぶん糸杉を描くことができるだろう。だが、絵をかいてもらうため金を出した者の注文が、難破船から彼が必死になって泳いで逃げる図であるなら、糸杉がいったいなんの役に立つだろうか。
壺(アムポラ)をつくる仕事を始めたのに、轆轤(ろくろ)をまわしているうちに瓶(ウルケウス)が出来上がるのはどういうわけか。
要するに、何を始めるにせよ、それは少なくとも単一で、統一のあるものでなければならない。

ホラーティウス『詩論』

これ、意味わからなすぎてめちゃくちゃ頭に残りませんか?詩人が詩をつくるときに気を付けるべきこと、について書かれた文章なのですが…。訳注を2回くらい読み直して理解して、それからジワジワ笑えてきてホラーティウス大好きになった一節。
(長くなるので種明かしは文末に。)

この古代ギリシアの詩人の文章には、もう一箇所ぜひ読んでほしいところがあります。

わたしは、ありふれたものから詩をつくりたい―それを見て誰もが、同じことが自分にもできると楽観し、実際に試してみて大汗を流し、無駄な努力を費やす羽目となる、そのような詩を狙いたい。

ホラーティウス『詩論』

これこそがプロの矜持ですよね。カッコよ。
素人は材料も調理方法もありきたりな文章しか書けませんが、それでも楽しく書き続けていければいいなと。ChatGPTさん、またタイトル案のアイデア出しではお世話になると思います。よろしくね。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。



※補足情報※
ホラーティウス『詩論』の、糸杉がどうのこうのについて。
以下、訳注より引用。

海で難破して助かった者が、画家に自分の難破の図を描いてもらい、その絵を感謝の印として神殿に奉納したことはよく知られている。ホラーティウスが取りあげる話は、糸杉しか描くことができないある下手な画家が、こうした絵を注文した船乗りに、「糸杉もつけ加えましょうか」と尋ねたという逸話にもとづく。糸杉は死者への哀悼の意をあらわす樹木とみなされたから、九死に一生をえた注文主の奉納物としてはおよそふさわしくないつけ足しになる。

…訳注がないと分かるわけがない(笑)
あと、壺と瓶の違いも、イラスト入りで無駄に詳細な解説があってなかなかに楽しい本。
興味ある方はぜひ岩波文庫の『アリストテレース 詩学/ホラーティウス 詩論』をどうぞ!


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