すぎたに
ひと月の間に詠んだ短歌をまとめたものをまとめたものです
寒いから抱っこをせがんだ甥っ子は小さな手のひら脇に差し込む
ふらふらと地をはう蜘蛛を眺めてる蜘蛛の1分は私の一瞬
秋付いたイチョウは道を染め上げて人の都合で枝を刈られる
風に乗り匂いが先にたどり着き金木犀の姿を探す
先を行くお隣さんをはばかって反対側の歩道を歩く
張り替えた弦は硬くギラついて知らないEがお腹に響く
この場から私が消えた夢を見て申し訳なくなることないのに
六日後の雨でようやく思い出す大切にしようと決めていた日
夕暮れに隣の犬がワンと吠えムクドリたちは散り散りに飛ぶ
半袖に風がひんやり吹いていく夏が過ぎても二輪にまたがる
朝に見た事故の瞬間焼きついて忘れられぬまま家路につく
焼きたてのパンが目の前並んだら思わず取ってトングかちかち
抽選を受けなければ当たらない 言葉を吐かないと届かない
カラカラの土は愛を欲しがって余分なものは底から流して
根腐れを引き起こすかもと知ってても溢れるほどの愛を注ぎます
すれ違い懐かしの顔が振り返る姿が写る窓を見ていた