2020夏
私は髪型を変えた
前髪を下ろしていたのをセンターパートにした
メイク道具も一新した
だけどこの心だけはあの日のまま
もう一度もう一度だけ名前を呼んで欲しいとあんなに願っていたのにいざ呼ばれるとそうじゃなくて、そんな無機質な声色で顔で私の事を呼んで欲しくなかった
あの優しい声で笑った顔で私の名を呼んで欲しかったのだと悟ってしまった
ボロボロに、泣けてきた
チームの歓迎会があり何の因果か隣の席になった
顔を見ることも話しかけることもできなくて時間だけがすぎていって自分の無力さを感じた
そこで彼の転勤の話を聞いた
今の場所から約2時間それなりに近いけどあの家からもあの会社からもいなくなるんだ
2人で行ったとんかつ屋もパスタ屋も焼肉屋もなかったことになっちゃう
そう思ったら頭を鈍器で殴られたような衝撃だった私だけが知らなかった私だけなにも知らなかった知らされなかった
彼のルーティーンだったジムを解約したって言ってて転勤ほんとにするんだな、って思ってしまった
悟られないようにバレないように話を聞くので精一杯だった
沢山話したいことはあったのに勇気がなくて尋ねることも話を振ることも彼の方をみることも出来なかった ばかだなぁ
解散するときたまたま同じ方向の人を送る事になった 彼も同じ方向だったけど歩いて帰るとのこと 残念すぎた
そして僕の家こっからどっち方面ですっけ?って先輩に聞いてる彼を眺めながら 嘘つきだなぁって思った
その道は彼の仕事の道で2人でもなんども通ってそこから彼の家へ行ったこともなんどもあった
虚しいなぁ
彼がこの地にいる最後の時まで顔を見ようと思ってなんども練習に通った
悲しさや虚しさやどうしようもなさが襲ってきて毎回帰りに涙が出てきた
そして最初で最後となる彼のバイク姿をみたいつもは車だけど車を変えるからバイクしかないって他人に話しているのを横目で聞いていた
本当にかっこよかった それを伝えたかった
後ろに乗りたいとか乗りたくないとかじゃなくてただただかっこよかった
それを彼に直接伝えたいって思ったけど言えなかった 後ろ姿に心の中でつぶやくしかなかった
試合の日がやってきた
私も本当は行くはずだったのにコロナの影響で行けなくなった
大切な、初戦
もしかしたら今年の最初で最後になるかもしれないって思っててどうしても行きたかったけど行けなくて悔しくてずっと涙が出た
試合は勝ったけど彼は怪我をしてしまった
もし同行していたならば私がマネージャーとして彼を介抱できたのになーんて邪な考えが浮かんだ
怪我の影響で彼がこの地を離れるまで練習に来ることはなかった
来る8月彼はこの地を去った
信じられなくて信じたくなくてだけどあの場所に彼はもういない
彼の家の近くはとても栄えていて私もよく買い物に出かける場所だった
だから買い物に行くたびにあぁ彼はいないんだなぁって
全部全部全部無くなっちゃった
久しぶりに見た彼はどうやら営業になったようだ 夏の制服のポロシャツに、スラックス
ありふれた姿かもしれないがどうしようもなくかっこよかった
話しかけたいことは沢山あるのに心臓が締め付けられて喉の奥がつまって声がでてこない
だけど彼は目を見て挨拶をしてくれる
そういう、ところが好きだったよ
ちゃんと無視しないでくれるところ
何で挨拶してくれるんだろうって思ったけどなんにも思ってないからできるんだろうな
あーあ 隣に居てくれるだけでよかったんだけどなー。他愛のない話をして、笑って美味しいゴハンを食べて、色んなところに行って
それだけで良かったんだけどな
貴方が望むならなんだって叶えて上げるのになー
束縛だってしないし、浮気もしないし、一途だし、料理もそれなりにできるんだけど?
戻ってきてくれるなら1発で許しちゃうんだけどなー
なんて私じゃダメなんだろうなー
あーーーやっぱり好きだなぁって思っちゃうよ
失恋で人は死ねる
引きずって引きずってこの想いが削れてなくなる日がくるんかね?
あと何回心が傷つけば終わるんかね?
好きな人の好きな人になりたいだけなんだけどなー
それが1番難しいなー