「クロスロード」と「エンゼル・ハート」
「クロスロード」、ライ・クーダーを5000人いる心の師匠とあがめるオイラにとっては、ライ・クーダーのブルース演奏がサントラで、なおかつロバート・ジョンソンが題材というよだれの出るような映画、しかも!!!この映画の主人公ギタリストの名前がユージンなのだ。映画自体は、「カラテキッド」の主役でもあるラルフ・マッチオ演ずる主人公のギター少年が、ブルースのソウルを習得しようとしてさまよい、習得できたようなできないような状態で、まんまギタリスト役で出てくるスティーヴ・ヴァイとソウルフルなギターバトル。そして勢いでボロ負けしそうになるんだけどいきなり昔とった杵柄でパガニーニのカプリース24番をクラシックギターで演奏して勝つというかなりお気楽なB級映画なのだ。ところがこの映画、メフィストフェレス伝説を視点の中心にすえるとなかなか味わいのある映画。ロバート・ジョンソンが技術と名声を得るためにアメリカの荒野の真ん中で悪魔と魂の取り引きをおこなう場面がこの映画の重要な通奏低音になっている。この悪魔と魂の取り引きをして現生の栄光を得る、というお話しはご存じドイツを中心としたメフィストフェレス伝説。16世紀の、実在した錬金術師ゲオルク・ファウストがそのようなことを実際おこなった!?という伝説みたいなのがドイツで大ブレイク。類似ストーリーがたくさんある中頂点的にメジャーなのが19世紀のゲーテの「ファウスト」。そのような中、超絶技巧で知られたヴァイオリニスト、パガニーニもメフィストフェレスに魂を売ったのでは?とまことしやかにささやかれたりもした。このメフィストフェレス伝説、よほど人間の集合的無意識を刺激するらしく映画の時代になっても上記「クロスロード」他リメイクものが多い。その中でも特にすごいのがミッキー・ロークが魂を売る方、ロバート・デ・ニーロが悪魔役の「エンゼル・ハート」監督はアラン・パーカーだ。ミッキー・ロークはしがない探偵。そこにロバート・デ・ニーロが探し人の依頼をしてくる。ちょっとした輪廻転生譚のようなところもあるストーリーで、要約すると人気と名声を得るために魂を売った歌手がいたのだが、その歌手は悪魔から逃げるため(なのかな?)白人の探偵(ミッキー・ローク)の体に入る。しかも入った後はその前の記憶はなくなっている。ミッキー・ロークは自分の足跡を追って、昼はただの探偵、夜は前の人?となってどんどん前時代的な生贄の儀式を歌手時代の周辺の人間におこなっていく。これだけ書くとさっぱり意味がわからないが、映画をしっかり見てもハッキリとは意味がわからないようなつくりになっている。ブードゥー教の教義や儀式も入りかなりドロドロなのだが、映像美がすごくて最後まで観てしまう。最初はポワンとした展開だが、途中から観ている方もオチがわかっているからドンドン怖くなってくる映画だ。とにかく怖くてキモイけど観る価値のある映画、そしてハッキリとは意味がわからないけど、映像が美しいという映画。というのを「クロスロード」つながりで思い出したのだった。