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水平線

泣くだけでは足りない悲しみは
叩きつける拳で誤魔化せた。
痛みを見つけて溢れた涙は
真夏の汗にまみれてようやく留まる。

重く熱い風が吹く。
生き抜く為に溜息を吐き、
泣き叫んで息を吸う。

握る拳が爪を破る。
滲む血を見つけて、 
さらに滴るのは血ではなく涙。

赤ん坊が泣かない夏。
老人が力尽きる夏。
息を殺して涙だけを数え、
満月を待つ私だけが超える水平線。

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