月の形
8月の空が遠く落ちて行く。
閃光が音を置き去りにした。
逃げ場所がない蝉が地面で焦げている。
先走りの雨に打たれた鳥の群れが
道路の真ん中で震えていた。
海に雨が降る事を知らなかった。
あからさまに打ち上げる花火が、
真昼の夜と重なっていた。
眩んだのは雷でも花火でもなく
誰のせいにも出来ない台無しの暗雨。
希望に夢を見る程
何も知らないわけではない。
絶望を与えて生き抜いて来たからには
素通りしなくてはならない。
真昼の夜と重ねたのは
暗雨に溶けた月の果て。
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