Δ43 上階のお婆さん
おばあさんの声は、なんなの?
私の中のどんな思いがあの声をこの世に生み出しているの?
やっぱりうるさいから何とかしたいんだけど、どうすればいい?
うるさいのはどうしてでしょう。
夜中にうめき続けられると目が覚めるし、不愉快
どの辺が不愉快なのでしょう
どういう時に感じるのでしょう
犬や子供の声でも夜中に長いこと聞かされたら不愉快なのと同じ
おばあさんの声は昼間に聞いても不愉快ですね。
理由がないからだと思う。
なんらかの理由があって仕方なくやってるならまだしも、
暇だからやってるように思える。
声のトーンからしても、誰かに何かを言ってるとかじゃなくて
ただ、声を出している感じ
生きてるだけ
エネルギーを向ける先がないから、そうする事で活動してる感じ
わかったでしょうか?
あれがおばあさんの生きてる証っていうのはわかるけど、だからなんなの
あなたはどうして生きている人を不快に感じるのでしょう
夜中に延々とそれを創造するほどの思いとは、どんなものでしょう
何にも役に立たないことをしているように見えるのが、悪いことだって思ってるってこと?
あの声が聞こえなくなったら、どうしますか
ほっとする
そして、何を思いますか
ああ、死んじゃったんだなって思う
そして忘れちゃうと思う
一体何を言わせたいの?
どうしてほっとするのでしょう
行くべきところへ行ったんだな、安らかになれたなって思う
お婆さんがああなった時のことを覚えていますか
うん
(私が住んでいる国でロックダウンが始まった数日後のことです。
上の階のおばあさんは突然大声で叫び出し、最後に複数回「もう無理!!」と叫び、それ以降ボケ老人になってしまいました。
私は一人で暮らしていた彼女の、最後の正気の叫び声を聞いた唯一の人間なの
です。)
あの時手放された彼女の精神の一部と、残された彼女を取り巻く環境の変化を見てください
空っぽになってしまったように見える彼女が作り出した、彼女の世界はどんなものでしょう
今彼女は一人ではありませんね
何がもう無理だったのでしょう
彼女はあの時、何を切に願ったのでしょう
今残されているのは、彼女の心の声のこだまの部分です
そのこだまは、あなたにどんな印象を与えますか?
「一人は嫌だ、家族に囲まれていたい」って感じた
あなたの心の声はどこでしょう
彼女が手放した一切の自己、そうしてようやく手に入れた望み
そこに残されたのは、うめき声を出すことでしか自己表現できない体です
もしあなたが全ての自己を失ってしまったら、何が残るでしょう
沢山の物をクリエイトできる器用さ、頭の良さ、豊かなイマジネーション
これまでの記憶、経験、それらのものが奪われてしまったあなたには
一体何が残るでしょう
柔かな、赤ん坊の時の、あの状態に戻ってしまったあなたは
何を心地よいと感じているでしょう
どんな感覚でいる時に機嫌よく笑っていられるでしょう
周りから愛情が注がれた時
あの感覚が私を反応させると思う
あなたが欲しいのはそれです
その感覚を、まずは自分自身に
そして周囲に向けてみてください
それこそがあなたの望むところなのです
まずはその基礎となる、自分への愛情でのコンタクト
そして周囲への愛情を込めたコンタクト
それができるようになったら、やりたい事が次々とあなたに降りてくるでしょう
ちなみにお婆さんの面倒を見る気がない息子は、彼女の家にアジア系の一家を迎え入れ
おそらく家賃と幾らかのお金と引き換えに、彼女の面倒を見させています。
お婆さんはあれ以来うめくことしかしません。
何度か夜中に文句を言いに行ったことがあるのですが、お婆さんは病気なのだと言われるだけで
特に改善することはありませんでした。
もう数年無視していますが、ふとした拍子にうるさいから引っ越そうかなと考えることがあります。
今回はそのふとした拍子から、このメッセージのやり取りにつながりました。