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闘病期間振り返り日誌

タイトル画像は【ハイキュー!! 42巻 第369話 飯と筋肉】よりお借りしています。

国家試験に合格して就職を機に上京したものの、転職活動及び実際に転職すること8回以上。
看護師6年目となる今年、ついにひとつの結果に行き着いた。

【診断:抑うつ状態】
最初に感じたのは安堵だった。というのも、もうここ数年は憂うつで気分が落ち込むという症状があるのが日常だったから。
精神医学で“抑うつ気分”と呼ばれる状態だったのだろう。それが緩やかに、しかし慢性的にわたしを蝕み続けた結果、抑うつ気分がネガティブに進化して“抑うつ状態”になったわけだ。うつ病の一歩手前の状態。それでもわたしはちゃんとした形でドクターに診断されたことに救われた。

しかしその後、ドクターから治療が必要なことを説明された際に、いまいちピンとこなかったのは恐ろしい。
自分が正常でないことに気付いていながら、それが日常に浸透しすぎて当たり前になっていたために、改善するすなわち治療を行うという発想にならなかったのだ。“普通じゃないこと”が普通になっていた。
実はこうなる前に何度かクリニックを受診したことはあったのだけど、“抑うつ気分”の状態ではなかなか対処の仕方がなかったのか、或いはわたし自身がただの一過性のものだと思って重く受けとめていなかったからか、まぁ今となってはその両方か。結局早期治療には結び付かなかった。

これまでマンガとアニメという素晴らしい趣味があったため、落ち込んでネガティブになり消え去りたいと思うことが度々あっても、大好きなマンガやアニメを観ている瞬間だけは、純粋に楽しみ、余計なことを頭から追い出して忘れることができていた。そのおかげで本気で人生を諦めて生きることを投げ出さずに済んできていたのだ。しかし、徐々に休日に観る大好きなマンガやアニメにさえも何も感じられなくなり、かつ仕事の不安やストレスが突発的に高まって発狂してしまうような状態になった為、再びメンタルクリニックの門を叩いたわけだ。

治療を始めて一ヶ月くらいはまだまだ気分の波は激しくて、一番のストレスの元凶である看護師から離れても、今度はまた新たな悩みや苦しみのなかで溺れるような日々だった。それが一ヶ月半を過ぎた頃から、わたしの心に少しずつ変化が訪れるようになった。

今のわたしは休職し無職同然のような状態だし、看護師以外にこれといった資格もなければ「これがやりたい!」という具体的ななにかも見つからない。今後のことを考えたら不安は常にある。
だけどそれでも“今 わたしは生きている”
そもそもそれだけで十分がんばってるじゃないか。
初めて心の底からそう思えたような気がした。
そうしたら、それまでの自分を責めるような気持ちから解放されて、“今の自分”も肯定できるようになれた。

看護師をやっていることがそんなに苦しいなら、辞めたらいいじゃないかと。
転職を繰り返す度にわたしは、“わたしが看護師として働くことが好きじゃないこと”に気づいていた。それもとっくの昔に。
でも“仕事を辞める勇気”はあっても、“看護師国家資格を使わずに働く勇気”がなかった。
職場を辞める度に親から、他人から「看護師を辞めるなんてもったいない」と言われた。わたしはそう言われるのがすごくイヤでよく反発していたけど、結局はわたしも、親や他人たちと同じようにそう思っていたんだってことに今さら気づいた。

だって看護師は少なくとも普通に働くよりは給料が良いし、社会的地位や待遇も悪くない。そしてなによりも、わたしにとって地獄としか言い様のないあの専門学校時代の苦労がある。泣きながら怒りながら、文字通り身を削って必死になってやっとの思いで取ることができた、唯一で絶対の資格が看護師国家資格なのだ。そんなに易々と手放せるものなわけがない。
だけどわたしの人生のなかに“看護”という分野が入ってきて今年で11年が経つ。
11年の間に看護についてたくさん学び、数々の現場で看護師として関わり、働いてきた。しかしやっぱりどうして好きにはなれないし、看護師として一年。世間では石の上にも三年と言われるなか、わたしは一年でさえも勤続することが困難だった。
結局振り返ってみれば、正社員として一年間働くことができたのは最初に就職した病院のみだ。その事実を改めて受け入れたとき、わたしはもう“看護師”をやりきったんだと思えた。ようやく心から『仮に今、看護師を辞めたとしてももったいなくない』とも思えた。

その瞬間から、フッと肩の力が抜けて楽になったのだ。

「今まではね、きっとずっとつま先立ちで立ってたんだよ」
「いまやっと、両の足の裏が地面に着いたんじゃないかな」

そんな言葉をかけてもらってすごく納得した。

先のことを考えると正直不安は大きい。だけど今は、とりあえず今は、
“大好きなアニメやマンガがまた心から楽しめるようになった”
今はそれだけでもいいんじゃないかなって思う。

そして大好きで大好きでたまらない『ハイキュー!!』は、わたしの人生の教科書でもある。

「やめればいいんじゃね?」
「別に死なねぇ」
「やめたからってお前が身につけた強靭な筋肉は簡単には無くならない」

画像、文章の一部を【ハイキュー!! 40巻 第351話 身軽】よりお借りしています。

光来くんがいう「強靭な筋肉」は、わたしにもある。
勤続はできなくてもたくさんの現場で看護師として働いてきた経験は、わたしの人生の財産だ。もっといえば、“看護師”として働くことができたこと自体が、わたしの知識であり、経験であり、筋肉であり、宝物。

そんな風に思えるようになったこと。
まずはそれが看護師および国家資格への執着からの解放の第一歩なのではないかと。
ペーパーナースだって上等じゃないか。
看護師としてであろうとなかろうと、まずは目の前の今を丁寧に、そして自分を大切に生きていくことが全ての始まりなのだから。
だからつまり、これからもなんだってできるって話だ。

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