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知ってるカタチにしか反応しない

ロゴの仕事をしていると時々言われる「〜のロゴに似てますね」

昔は「は?どこがだよ??」「全然違うだろ」とブチギレていたけれど、今は「はい、きた!足りないボキャブラリーで考えた結果それしか出てこなかったんだよね!分かる!」となってきた。

そうなったのは僕の妹が服飾の学生をしていて、そのファッションショーへ行ったとき、「あ!これはノワールケイニノミヤをリファレンスしたんじゃね?」みたいな見方を少なからず自分もしていたからだ。
そのときに「知らないカタチだったとしても、なんとなく知ってるカタチを重ね合わせて人は捉えるんじゃね?」って気付いた。

もちろんコンセプトを考えて、それをどうやって表現するのかって学生の葛藤や挑戦に、とても共感して「うわー!!めっちゃ分かる!!」って作品もあったのだけど。

あとはロゴでは無いことだけど、こんな素材でこんなもの作ってやったぜ!みたいな作品を見て「いいなぁ!」って思ったと同時に、ロゴのような"質量のないデータ"は、コンセプトにしっかり集中することが出来る楽しさと、難しさがあるんだとも気付いたような。

妹だからって贔屓するわけでもなく、妹の作品が一番良かったなぁなんてショーの帰りにぼんやり思っていたら、その夜、妹が「グランプリ取ったぜ!」って帰ってきた。審査は入場者がするのではなく、その学校の教師がしていたみたい。
あんまりファッションには詳しくないけれど、僕の審美眼は日々のモノづくりを通してそこそこ鍛わっているみたいだ。

で、話を戻すと「〜のロゴに似てますね」って反応は別にそのカタチを貶すためのものなんじゃなくて、むしろそうした反応が一般的なことであって、むしろそうした「引き金」を利用して、頭に入り込みやすいカタチを作ってやればいいのではないかと思うようになってきた。
似てるからどうなのかって話をしたい。

「〜のロゴに似てますね」としか言えないあなたがいるように、この世界にはそうしたモノの捉え方をする方ばかりのようです。
なら、むしろ似ているカタチに反応してもらい、記憶するトリガーにしてしまえば、あなたのような人間にも覚えられるのでは無いですか??と言った攻め方しかその人にはないような気がしてくる。面白がるベクトルの意見が飛んでこないのだから。クソ真面目な面してよぉ。

実際の事例を考えてみる。
例えばiPhone
これって手元で操作できるコンピュータだけど、名前は電話になっているじゃない。新しいやろ!?どや!?って発表にはおそらく人は反応できない。
けれど電話って文脈を踏まえて、そこに音楽聞けるで!ネット見れるで!SNSもできるじゃん!と知っているものをベースに伝えていく。これでスマホって市場が開拓されたような。
そんな感じじゃないかしら。
知っているモノで定規が出来上がる。

もう一個アプローチはあるかなと思っていて、それは「見たことがないけれど見たことがあるようなカタチを探すこと」
要はデジャブを探るってことかなと。
ロゴって2次元で表現するものでそんなものあるのか??って感じもするけれど、そういった切り口も面白いとは思う。

ロゴを作る人としてそんなことを考えているときに、「マルサンカクシカク」でシルバーリングを作ってくれないか??ってお題をもらった。
僕は趣味でシルバーリングを作っていて、それを友人がえらく気に入ってくれて、作ってくんね??って話が来たわけだ。

「マルサンカクシカク」ってのは禅の思想にルーツがあるとかないとか。
僕も京都の建仁寺に行ったときにそんな掛け軸やお庭を見た。

意味は分からないけれど、対峙していると命って漢字に見えてくるのが僕としては面白いなぁって思っていて、記号にそうした生命や宇宙を見出す感覚は非常に勉強になる。「見立て」ってやつかしら。

どうやってこれをリングにしようかって考えていて、最初は立方体の6面にマルサンカクシカクの3つを裏表に配して、削り取るとどんな形になるのかなと言ったアプローチで攻めてみたんだけど、なんだか微妙やなって直感したからやめた。

そこからマルサンカクシカクは全てXY平面で描くのだけど、Z軸方向に高さを変えてそれぞれの図形を繋いでいったらいいのではないかと考えた。それで出来たのがこれ。

なんかヌメヌメしたカタチが出来てきて、「おお!」って作った僕が一番びっくりした。
一番上が四角っぽい形になっているのは見て取れるはず。
もう少しわかりやすいのはこっちの画像かしら。

一番右の図で断面がマルサンカクシカクが連なっているのが分かるはず。

断面方向の切り口を連続的に繋げた動画も一応作ってみたから共有すると、心臓のようにドクドクと動くカタチが見えてきたり、移り変わる季節のような連続性が見えてきたり、なんだかずっと見ていられるものができてきた。昔の人はあの掛け軸がこうやって見えていたんじゃないかって作ってみて思ったのね。楽しいね!!
昔の人の想像力が羨ましい。

マルサンカクシカクという誰もが知っているカタチだけで、なんだか未知のカタチを作れるんじゃないかって実感した最近の面白い発見がこのプロジェクト?だったからしぇあしてみた。

「〜のロゴに似てますね」から、いろんな切り口で「実際に物を作ること」で、道(未知)が開けてくるみたいだぞって自分の中での発見がとても面白かった。

知ってるカタチに反応する性質を上手く使って、定着を狙う。
違った視点で見たら案外知っているようで知らない匂いや味、カタチが眠っている。

それを「〜のロゴに似てますね」と切り捨てるのか、
「こうやって見ると、こんな気持ちもしてくるような……」と面白がるのか。

どっちが楽しいか。ね??
遊び心足りてる??

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