「パラソル&アンブレラ」⑤
第五話「青春の輝き」
そんなわけで、一家の大黒柱古透子は、せっせとバイト生活に精を出していた。バイトが終わった帰り道、どれどれとイヤホンをバッグの中から探し出し、古透子はサブスクで井上陽水の「海へ来なさい」を聴き始めるのが習慣になっていた。日差しはごく強く、古透子はバイト代で買ったちょっとしたフリルが可愛い日傘をさして、それを日にかざしてくるくると回して踊らせた。陽水の「♫幸せに〜、なりなさい〜」という歌詞をつぶやきながら。そうして、幸せを感じ入るのが古透子の流儀であった。